第123話 すべては肥料で解決する
ピンポンさんが来ないことで、アイザックさんのクエストがまだ終わってないことに気づいた俺は少し突っ込んで話を聞いてみる。
「スプラ様にはかなませんな。実は畑の野菜が収穫できるまでの時間が問題なのです。現在、通常の栽培ですと、概ね5日から7日かかってしまいます。しかし定期購入者が求める頻度は4日に一度の納品。この日数のずれのせいで結局2倍近い畑が必要になるわけです」
「なるほど、そういう事ですか」
確か、ミクリさんの【栽培促進】で栽培した野菜が4日間、ゼン爺の【十全栽培】が6日間だったよな。うん、確かにゲーム的には長い気がする。早くて2日、遅くて4日くらいが楽しめる日数じゃないか? 知らんけど。
「なるほど、ってこと品種改良が必要だと?」
確かそんなスキル前世で取ってたよな。なんだったっけ。うん、忘れた。
「そうですな。品種改良ができれば最良、しかし品種改良には時間がかかりますので、手っ取り早い方法としては肥料開発と言ったところでしょうか」
「肥料?」
「はい、肥料でございます。肥料で作物の成長を促進させる、もしくは収穫量を増したりできれば現状の打開が可能かと」
そっか、肥料か。あ、そういやゼン爺が癒楽草の灰を撒いてたよな。あれって肥料だよな。そっかそっか、じゃあ、やってみる価値はあるかもな。
「わかりました。じゃあ、肥料作成やってみますね」
「本当でございますか? 肥料開発は素材費用がとても嵩みますのでお願いするのが忍びなかったのですが、もし開発できれば大変助かります。ですが、くれぐれもご無理はなさいませんように。心苦しいですがギルドからの資金提供はできませんので」
「はい、無理しないくらいでやってみますね」
癒楽草は無料だしな。あとは何が必要なんだろ?
…
…
「では、始めます。ネギ調合師、リオン助手、よろしくお願いします」
『ゆら!』
『フンスフンス♪』
農業ギルドからマジョリカ薬房に戻ってきた。薬房を選んだのは肥料って野菜用の薬扱いかもしれないとの予測からだ。もしそうなら薬房の品質アップ効果は必ず入れときたい。
ミーナのログインまでおよそ30分。ちゃちゃっとやっちゃいましょう。
まずはキーアイテムから。
「では、ネギ調合師、例の素材を」
『ゆら』
ネギ坊から癒楽草を貰う。ちなみにネギ坊の超回復一回分の癒楽草5本をすでに入手している。ネギ坊も回復済みだ。
まずは癒楽草5本を灰にするところから始める。
確か、ゴルバさんの動く草の話では、魔術師が火魔法で燃やしたと言っていたから普通に火で燃やしてみる。鮮度が高いせいかなかなか燃えなかったが、こういう時に【火加減】が役に立つ。メーターを少しずつ増やしていき、丁度燃え出す火力をスクショする。
で、できた灰はこんなものだった。
【癒楽粉肥】
癒楽草が燃えた灰。畑に撒くと非常に高い肥効ををもたらす。
灰ができたら聖水で溶きながらゴリゴリすり潰す。美容液作りの時の活性炭と同じ要領で聖水を少しづつ足しながら馴染ませる。なんとなくやってみただけだったが、実際やってみると急に素材が水色に変化した。美容液の時はピンク色だったが、肥料の場合は水色。それに聖水を少しずつ垂らしていき、聖水20本分を使ったところでできたのがこれ。
【癒楽液肥(1000倍希釈)】
生命の力が宿った不思議な液体。水やりの水に混ぜて散布すると高い肥効をもたらし作物の生命力が増す。
なかなか漠然としたFGSあるある説明文なのだが、読んだ感じ悪くないと思う。そして手を加えれば加えるほど効果が高くなる…予感がする。これはいろいろと試してみる価値はあるか。
…
…
ピンポーン
『特定行動により【創薬Lv3】のレベルがあがりました』
いろいろやってみた。
そしていろいろなものができた。
その1
【癒楽液肥】+【上級MPポーション】=【癒楽魔肥】
効果:変異率上昇効果(大)
その2
【癒楽液肥】+【HPポーション】=【癒楽活肥】
効果:収穫量上昇(中)
その3
【癒楽液肥】+【爆炎草】=【癒楽除肥】
効果:防虫効果 品質+1
その4
【癒楽液肥】+【氷華草】=【癒楽温肥】
効果:保温効果 生育日数-1
その5
【癒楽液肥】+【毒毒毒草】=【超除草剤】
効果;一瞬で枯れる
その6
【癒楽液肥】+【上級キュアポーション】=【癒楽倣肥】
効果;変異作物が発生した際に一帯の同一作物がすべて変異作物となる。
で、ここで問題です。その5を除くすべての効果を重複させるにはどうしたらいいでしょう?
1、全部混ぜる。
2、全部混ぜる。
3,全部混ぜる。
正解は…4
全部混ぜた上に、愛弟子印の超絶美容液も加えてブンブン振り回す。でした。なかなか混ざらないからなかなか苦労した。
完成品がこちら。
【超絶癒楽液肥(10000倍濃縮)】品質6
畑の作物の成長速度、収穫量、品質を大幅に引き上げる効果がある液肥。
変異作物があれば、その周辺の作物も同時に変異する。
使用の際は10000倍に希釈して使用すること。
さて、じゃあギルドに持っていく前にゼン爺に感想を聞いてみようかな。
…
…
「ほれ、腰が入っとらんぞい」
「はいっ」
「ほらほら鍬はその重さを利用する。力任せではすぐ疲れるぞい」
「あ、すみません」
「草は根元から刈らんとまたすぐに生えてくるぞい。やり直しじゃ」
「ええーそんなー」
「ほらほらさっさと草を運ばんか」
「…無理」
サクラさん、モモカさん、ミズキさん、モクレンさんがゼン爺にしごかれている。
なんかこうやって見てると、アイザックさんにやらされた農作業を思い出すな。結局道具に頼っちゃったから基本的なスキルは身に付かなかったんだっけな。確かいきなり上級スキルとか習得しちゃって。でもやっぱ、こうやって地道な過程が必要なんだろうな。
「ゼン爺、ちょっといいかな?」
「ほうほう、何でしょうかな」
「(やった、休憩)」
「(もうダメ、しんどい)」
「(リス狩りの次に無理)」
「(…料理志望)」
なんか四人娘が一斉にだらけてるけど、まあしょうがないか。田舎の農家に嫁入りするには60㎏の米俵を運べないと話にならんって婆ちゃん言ってたもんな。流石に今はそんなんじゃないと思うけど。
ってことで、ゼン爺にアレを見せてみる。
「これさ、今作ってみた液体肥料なんだけどどうかな? 使えそう?」
「…??」
俺が【超絶癒楽液肥(10000倍濃縮)】を見せるとゼン爺が固まる。で、やっと動いたと思ったら今度は目を擦ってはガン見を何度も繰り返している。で、また止まった。
ゼン爺どうした? 生きてるか? おーい。
「な、な、な…」
「ゼン爺、大丈…」
「なんじゃごりゃーーーーーーーーーっ!」
突然のゼン爺の叫びに俺と四人娘は一斉に仰け反り倒れたのだった。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
おーーーーーーーい。
おいおいおいおいおーーーーーい。
バグダーツの真逆版作ってんじゃねーーー!!
あ、はい、レイスっす。え? 愛弟子印? 今さっき肥料に変わりましたけど? あ、いや、だから肥料に…あ、それはわからねえっす…え、あ、すみま…あ、切られた。
クッソーーー、だからなんで俺が怒られなきゃなんねえんだよ!
小僧の行動なんて制御できるかー。で、俺は小僧の秘書じゃねー!!
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・いろいろ混ぜ散らかして【超絶癒楽液肥(10000倍濃縮)】作成。
・ゼン爺をフリーズ寸前に追い込む。
・習得:【創薬Lv4】
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:なし
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:なし
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】new!【依頼収集】
所持金:約1万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
<農業ギルドマスターアイザックの相談>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:1
HP:120/120
MP:160/160
筋力:12
耐久:10
敏捷:25
器用:11
知力:15
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv1】【足蹴Lv1】【噛み付きLv1】【運搬(極)】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




