第117話 農業ギルドからの相談
俺が渡した伝説ではない【癒楽草】、それを見てプルプル震えだしたゼン爺。この反応はヤバいか? ゼン爺、わかってるよな?
「コレは《《癒楽草なんてものではありませんけど》》、畑の肥料に使ってください」
「あ、は、はい。癒楽草…ではないですが、さ、早速」
ゼン爺がおぼつかない足取りで農屋を出て行った。多分焼いて肥料にするんだろう。でもあれだな。あの感じだとゼン爺、【十全栽培】以外にも知識系か植物鑑定系のスキル持ってるよな。これからはネギ坊はあんまり見せないでおくか。ネギ坊が隠してくれてはいるけど装備ヤバいしな。ここはネギ丸の【月影霊草】までということで。
でももし癒楽草の事が広まっちゃったらどうなるんだ? もしかして愛弟子クエストなかったことになるのか?
あ、ってか今、肩書ってどうなってるんだろ。マジョリカさんの記憶が戻ったったんだから…お、あった。これはありがたい。ってことは職業も…あー、こっちは無しか。肩書の条件だった【創薬】がないのに肩書が消えないってことは、つまり一度肩書を貰ったら条件を満たさなくなっても肩書は消えない。そういう事か。じゃあ、癒楽草のことが万が一ばれても肩書には影響しないかもしれない。
「ま、でも秘密がバレたら街中歩けなくなるって言ってたし。秘密は秘密にしとくか」
よし、なんかドタバタしたけど、とりあえず農業ギルドに行ってこようかな。俺に用があるらしいし。
「ああ、スプラ様やっとお会いできました」
「あれ、アイザックさん? なんでここに?」
農業ギルドに向かおうと畑を出たら農業ギルドのギルドマスター、アイザックさんとばったり出くわした。今日はストライプスーツではなく、初めて会った時の田舎のおじさん風だ。でも口調はだのうだのうではなく、ビジネス調。違和感がすごい。
「いえ、それがちょっとご相談したいことがございまして」
「あ、すみません、今から伺うところだったんです」
どうやら待ちきれずに来てしまったという事らしい。ネギ丸の件で時間取り過ぎちゃったかな。
「なんのご用件でしたか?」
「はい、実は、かの豊穣の三宝具を制作されたスプラ様にぜひご相談させていただきたいことがありまして…」
ああ、もしかして農具関係か。でも、もう【リサイクル武具】も【農具知識EX】もないんだよな。お役に立てることはないと思うが。
「あの、アイザックさん、申し訳ないんですけど、俺、実はスキル失ってしまったんですよ。だからもうこの前みたいな農具作ったりできないんです」
「あ、いえ、今回は別に農具を作ってほしいということではないのです。ちょっとギルドで問題が発生しておりましてそのご相談と…」
あのやり手感半端ないアイザックさんがなんだかすごく困っている様子。これは放ってはおけないな。なんだかんだでいろいろとお世話になりまくってる人だしな。
「わかりました。俺でできることなら協力します」
「ほ、本当ですか。それは助かります」
俺の返答にアイザックさんが直角お辞儀。いや、まだ協力できるかどうかも分からんのだが。
ピンポーン
『<農業ギルドマスターアイザックの相談>を受けました』
……
……
「あのう、アイザックさん、これ一体なんでしょうか?」
「はい、実は…」
アイザックさんに連れられて農業ギルドに着くと、そこには入り口から外に伸びる長蛇の列。なんかずっと向こうまで続いてる。
「と、とりあえず、ここではなんですので中へどうぞ」
行列に並んでいる住人からの視線を受けて狼狽えるアイザックさん。そそくさと俺をギルド内に案内していく。で、案内されたのは前にも来たことのあるギルドマスター室。机の上に野菜の鉢植えが置いてあるあの部屋だ。ソファーに座って秘書さんが持ってきてくれたお茶と茶菓子をいただきながらアイザックさんの愚痴混じりのちょっと長い相談事を聞いた。
…
…
「なるほど、明日からまた異人が大量にやってくるため、物資不足を懸念した住人の方々が食料を確保するために定期購入を希望されていると」
「はい、今回の物資不足で多くの住人が外からの仕入れに頼ることの危険性を身に染みて理解したようでして。そこにきて明日からまた異人の皆様が大勢いらっしゃるとのこと。再び物資不足になる事を恐れた街中の食料関連店舗からの大量定期購入と、住人個人からも定期購入の申し込みが殺到した結果があの行列なのです。もちろんギルドとしては定期購入希望にはすべてお応えしたい気持ちはあるのですが、なにぶん現在の食料の供給では希望の半分にも達していないのです」
「で、それがなんで農具を作っただけの僕に相談を?」
「はい、あのような画期的な発明をされるスプラ様の思考ならもしかしたら思いもよらない良い考えがいただけるのではないかと」
明らかに買いかぶり過ぎなのだが…実は話を聞いていてすでに解決方法を思いついていたりする。
「異人に畑をやってもらったらどうですか? 異人の分は異人が生産するような形にできれば問題ないかと」
「おお、なるほど。異人の皆さまに食料生産をお願いする…確かに理にかなっております。あ、ですが、現状では難しいかと。実は異人の方で畑を所持しているのはスプラ様を含めて数名に過ぎないのです。しかも面積で言えばスプラ様の畑半面分にも満たない状況でして」
え、そうなの? あ、そういえば畑エリアで畑やってるのってあんまり見ないな。どこも見事な草が生えてるし。
「なんで畑を持たないんですかね」
畑なんてリアルでやりたくてもできない人が喜んでやると思うけど。
「それが資格を満たしている異人の方々は多いのですがなぜか畑を購入しようとはなさらず…どうしたものかと」
へえ、畑購入しないんだ。なんでだろう?
「わかりました。野菜増産方法はちょっと考えてみますね」
「はい、ありがとうございます」
そっか、プレイヤーは畑を持ちたがらないのか、意外だな。野菜作りに興味ないとは思えんが。他のゲームだと人気要素でもあるしな。まあ、もしかしたらFGSは攻略思考なプレイヤーが多いのかもしれん。ポーションの材料の薬草なんてフィールド行けば採取できちゃうし。料理にしか使わん野菜を何日もかけて栽培するなんてやってられんのかもしれない。
「こりゃ、難しそうだな」
農業ギルドにずらっと並ぶ住人の行列を見ながら次の目的地一角亭に向かう。
ピンポーン
『イベントアナウンス。只今10:12をもって最後のゴブリンの群れが討伐されました。殲滅率が100%となったため、本イベントは終了となります。現在、討伐戦に参加したプレイヤー中、スキルの書を獲得したプレイヤーは67%、星獣の加護を得たプレイヤーは7%、星獣との契約に至ったプレーヤーは13%、保留中のプレイヤー13%という結果でした。また、イベントボスが達成度SSSで討伐されたことにより、現在星獣の活動が非常に活発になっています。星獣の加護を持つプレイヤーは加護星獣との遭遇率がアップしています。また、保留中のプレイヤーの皆様はこの状況下で様々な星獣との遭遇が起きるでしょう。ぜひお気に入りの星獣を探してみてください。この状況は本日24:00まで続きます。星獣は南の平原で皆様を待っています』
「「「うおおおおおお」」」
なんだなんだ、街中で悲鳴と雄叫びが同時に上がったんだが。
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
ほう、食料生産か。
ま、その辺はコリンズが担当だしな。
放って置けば…いや助けるんかい。
まあ、いいけどな。
俺も今特にやることもねえしなー。
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◇達成したこと◇
・肩書が残ってることにホッとする。
・受注:<農業ギルドマスターアイザックの相談>
・食料増産のアイデアを考えると安請け合いする
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]
肩書:なし
職業:なし
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
器用:1
知力:1
装備:なし
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv4】【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv2】
所持金:約1万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
〇進行中クエスト:
<眷属??の絆>
<農業ギルドマスターアイザックの相談>
◆星獣◆
名前:リオン
種族:星獣[★☆☆☆☆☆]
契約:小人族スプラ
Lv:1
HP:120/120
MP:160/160
筋力:12
耐久:10
敏捷:25
器用:11
知力:15
固有スキル:■■■■ ■■■■
スキル:【疾走Lv1】【足蹴Lv1】【噛み付きLv1】【運搬(極)】
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★★☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
分蘖体:ネギ丸【月影霊草】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




