第104話 対エンペラー戦1
ピンポーン
『称号【自然保護の魁】の効果が発動しました。ゴブリンジェネラルの狂暴化が希少種化に変化します』
ピンポンさんのアナウンスに全身から変な汗が出る…気がする。いや、リアルなら脇汗がヤバいことになってるかもしれん。
「ちょ、なにこの称号って」
「なんで称号なんて出てくるの?」
どうやら臨時パーティーを組んでる見守り団の皆さんにもアナウンスがいったらしい。
「あなたたち、称号はね、このスプラちゃんが持ってるのよ。その貴重な効果がここで発揮されたって事よ。ね? スプラちゃん?」
いや、海坊主さん、ここはドヤるところじゃないと思います。土下座で謝らないといけない場面かと…
「え、そうなんです? さっすが我らがピエロっちキャプテン!」
「すっごい、確か【自然保護の魁】って希少種を従魔にしたからですよね。ってことは希少種いるんですか?」
「いやー、すごいすごい。やっぱピエロっちすごい」
「わたしたちの見る目は間違ってなかったって事よね」
…なんか反応が思ったんと違う。いいのか、それで? メチャクチャごっついのが出てくるかもしれないんだぞ? 全員死に戻るかもしれないんだぞ?
「いいんすか? すごく危険な匂いがするんですけど」
「なに言ってんのよ。こんな美味しい場面体験しなきゃ損じゃないの」
「そうですよ。リスばっかり狩ってるのに比べたらめちゃくちゃ楽しいじゃないですか」
「そうそう、こういうのがあるから止められないよのね」
「なにが出てきてもどんとこいです。もし刃が立たなかったらみんなで楽しく特攻しましょう!」
そっか、みんな死に戻り縛りがないんだもんな。そっか。ま、それならいっか。俺も死に戻ったって初めからやればいいだけだしな。できれば死に戻りたくないけど。
「あ、始まったみたい。こんな場面絶対に見逃せないわよ。ちゃんと目ん玉ひん剥いて見てるのよ、あんたたち」
「「イエス、マム!」」
…何だこのノリ。
そんなふざけも入った俺たちの前で、氷漬けのゴブリンジェネラルに変化が起き始める。
ムニョ?
まず紫紺スライムによって放たれた銀の槍がパーンと砕け散る。そして、白い氷の向こう側にあるジェネラルの体に赤黒い血管が浮き上がった。脈動する太い血管。すると今度はジェネラルの全身を覆う氷から水蒸気が立ち上る。濛々とした水蒸気に包まれたジェネラル。その全身を覆う白い氷にヒビが入り始めるとそのヒビが一気に全身へと伸びていく。
「GUOOOOOOOO!!」
パッキーーーン
雄叫び一発。ゴブリンジェネラルを覆っていた氷が全てはじけ飛び、異常に隆起した肉体が現れる。海外のトップボディービルダーを彷彿とさせる体表を太い血管の網目で覆われた体を持つ…「ゴブリンエンペラー」が誕生した。
「あれ? なんかHPバーが全快してるんですけど」
「そうね。あ、きっと希少種化したからじゃない? 種自体が変わったっからよ、きっと」
俺が絶望しながら言ってるのに、目をキラキラさせてる海坊主さん。なんで喜べるのか全く分からん。
『なんか、パワーアップしちゃったね。この敵だと…うん、1/5ってところかな』
「えっと、なにがでしょうか?」
白馬が唐突に示してくる1/5。なんだ? 俺たちの生存確率か? それならかなり高いと思うんだが。
『このゴブリンエンペラーのHPを1/5まで減らせば、あとはママがやってくれるよ』
「あ、そういう事? ヒュペリオンが最後の仕上げをしてくれると」
「え、なあに、仕上げって?」
海坊主さんが食いついてくる。【念和】持ちじゃない海坊主さんには白馬の言葉は聞こえてないらしい。
「この白馬から聞いたんですけど、あのゴブリンエンペラーのHPを1/5まで減らせば、空にいるヒュペリオンが仕上げをしてくれるらしいです」
「ヒュペリオンって…あの銀のユニコーン? え、スプラちゃん、なんで名前知ってるの? わたしには???しか表示されてないわよ」
う、なんか話すと長くなりそうだな。どうしよ。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA」
「そんな事はどうでもいいだろう」とばかりの特大の咆哮。どうやらゴブリンエンペラーが目の前の紫紺スライムに襲いかかっていくようだ。
紫紺スライムは向かってくるエンペラーに向かい銀の嵐を起こして対抗する。しかし、凍り付いた大斧を手にしたエンペラーは再び大斧に炎を吹き出させる。しかしその炎はジェネラル時の炎とは比べ物にならないほど大きくて…真っ黒だ。光を全て吸い込みそうな漆黒の炎。そしてその炎の周辺は薄暗くボカシが入って…あれ? それ見たことあるんだけど? ってか、俺の真っ黒ダーツのやつじゃね?
ムニョムニョー! ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
それを見た紫紺スライムが【投擲釘(劇毒)】を連射する。俺でも一本しかなかったのに、それを連射とか。なんか悔しい。
ブオーー
「え、マジで?」
紫紺スライムが放った【投擲釘(劇毒)】にエンペラーが大斧を振る。すると飛び散った漆黒の炎、恐らくはダークマター的な炎が【投擲釘(劇毒)】を飲み込む。そして漆黒の炎が消えるとそこには初めからなんにも存在しなかったかのように【投擲釘(劇毒)】は全て消え去っていた。
ムニョムニョ? ムニョ? ムニョニョ?
目の前で起きたことが理解できないらしい紫紺スライム。上下に左右に激しく揺れている。どうやら動揺している様子。
ムニョ? ムニョニョ!
思いっきりわかりやすく動揺していた紫紺スライム。急に揺れるのを止めると、腕もどきを前に伸ばす。あ、これはもしかして銀の大槍を出そうとしているのか?
ムムムムニョニョーン!!
銀のティアラがひと際強く輝くと、さっきとは比べものにならない程の激しい銀吹雪が舞い荒れる。すでに300mは離れている俺たちのところにもチラチラと振ってくる銀色の光。俺たちの視線の先は、もう紫紺スライム本体の姿も見えん程の猛嵐となっている。
そして、その猛嵐による銀の壁をも突き抜けてくる鋭利な輝き。先の3倍はあろうかという大きさの巨大槍の姿が吹雪の中に光として浮かび上がる。
ムニョニョニョニョーン!!!
紫紺スライムのふざけたような声が湖一帯に響き渡った。この一撃に込められた紫紺スライムの気合がひしひしと伝わってくる。その気合の叫びと同時にエンペラーに向かって発射される白銀の巨大槍。周りの吹雪を渦巻き状に集約させながらすっ飛んでいき、そして…
消えた。銀の嵐ごとすべてが一瞬で跡形もなく消え去った。
ムニョニョ?
状況の理解が追い付いていない紫紺スライム。そんな「あれ?」って感じの紫紺スライムの前に迫るのは漆黒の炎。紫紺スライムは不思議そうに漆黒の炎に包まれた後、一瞬でその存在をこの世界から消した。
「GAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
数秒の静寂の後、肌を震わすほどのエンペラーの叫びが響き渡る。
ピンポーン
『ゴブリンエンペラーの固有スキル【皇帝の威光】が発動しました。通常ゴブリンのステータスが上昇します』
❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖
あ、終わった。
特大バグが超特大バグを呼び覚ましちまった。
ってか、小僧、お前があんなバグダーツ作ったからだぞ!
データごと消す攻撃なんてあってたまるかよ。
どうすんだよ、これ!
はっ、まさかバックアップデータまで…いやいや分離されてるはずだし、それはない。え、ないよな?
――――――――――――――
◇達成したこと◇
・称号の事が見守り団員にバレる。
・紫紺スライムvsゴブリンエンペラー観戦。
◆ステータス◆
名前:スプラ
種族:小人族
星獣:(仮)星獣ヒュペリオン[★★★★★★]
肩書:マジョリカの愛弟子(EX)
職業:上級薬師
属性:なし
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1(+3)
敏捷:1(+13)
器用:1
知力:1
装備:ただのネックレス
:悩める道化師のトルピード
:仙蜘蛛の道下服【耐久:+3、耐性(斬撃・刺突・熱・冷気)】
:飛蛇の道下靴【敏捷+13】
:破れシルクハット
固有スキル:【マジ本気】
スキル:【正直】【薬の基本知識EX】【配達Lv10】【勤勉】【逃走NZ】【高潔】【依頼収集】【献身】【リサイクル武具】【採取Lv10】【採取者の勘】【精密採取Lv3】【調合Lv10】【匙加減】【投擲Lv10】【狙撃Lv2】【鍛冶Lv9】【調薬Lv10】【団粒構造Lv2】【農地管理Lv4】【農具知識EX】【料理Lv1】【広範囲収集】【遠見】【工作Lv1】【釣りLv1】【木登り】【よく見る】【自動照準】【下処理】【火加減】【創薬Lv4】【念和】【騎乗】
所持金:約1045万G
称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】
従魔:ネギ坊[癒楽草]
◎進行中常設クエスト:
<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>
〇進行中クエスト:
◆契約◆
名前:ネギ坊
種族:瘉楽草[★☆☆☆☆]
属性:植物
契約:スプラ(小人族)
Lv:1
HP:10
MP:10
筋力:1
耐久:1
敏捷:0
器用:1
知力:5
装備:【毒毒毒草】
:【爆炎草】
:【氷華草】
固有スキル:【超再生】【分蘖】
スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】
《不動産》
畑(中規模)
農屋(EX)
≪雇用≫
エリゼ
ゼン
ミクリ




