第98話 破滅の森
ゲームでは、プリュトンはローゼもしくは私に敗北した後、国家反逆罪として裁かれる予定だった。しかし、創世の魔女の手助けにより、王都から脱出するが、創世の魔女が用意した暗殺者によって殺される。
創世の魔女の正体はグリレ王妃だ。この事実を国王陛下へ進言しても、聞き入れてくれないどころか、最悪国家反逆罪で裁かれることになるだろう。
ゲームでのプリュトンは破滅の道しか用意されていない。しかし、私はプリュトンを助け出して、創世の魔女の正体を公の場で公表させるつもりだ。ゲームとは異なる展開になってしまうが、最悪のシナリオを避けるには、この方法が1番の最善策だと判断した。
ゲームと同じならば、プリュトンはエンデデアヴェルトの近くにある破滅の森に捨てられているはずだ。プリュトンは破滅の森へ捨てられて帰る場所がなく、野宿をしているところを暗殺者によって殺される。
国王陛下から国民への説明はこのようになされる。王都から逃亡したプリュトンを捜索していた王国騎士団の団長は、破滅の森でプリュトンを見つけて捕えようとしたが、プリュトンが激しく抵抗したために、やむを得なく殺害したと公表される。しかし実際は、グリレ王妃から指示を受けた王国騎士団の団長が、命ごいをするプリュトンを、無慈悲に首を刎ねたのである。
おそらくリアルの世界でも、王国騎士団の団長の手によってプリュトンは殺されるはずだ。エンデデアヴェルトの作戦に、王国騎士団の団長ではなく代理でリュンヌが選ばれたのは、プリュトンが敗れた際に、団長に暗殺させるためだったのだろう。
「明日、破滅の森へ向かうつもりよ」
今の私では王国騎士団の団長には勝てない。しかし、王国騎士団の団長は、最後に私のハーレムパーティに加わる仲間だ。話し合えば理解してくれると信じたい。
「リーリエ、1人で破滅の森へ向かうつもりなの」
「そのつもりよ」
「破滅の森は人を惑わす妖精が住んでいる森、1人で何しに行くつもりなの?」
破滅の森は妖精が住む森、人間が森へ入れば、幻覚を見せられて、谷底へ飛び込んでしまうという言い伝えがある。
「ちょっと気になることがあるのよ」
プリュトンを助けに行くと言えば、止められるだろう。
「王都へ急いで戻る必要もないし、あなたの暇つぶしに付き合ってあげるわよ」
メーヴェは遠回しな言い方で、私のお供をすると言う。
「事情はよくわかりませんが、俺もお供させてもらうわ」
シェーンも心配なのでついて行く。
ローゼとイーリスをエンデデアヴェルトに残して、私たち3人で破滅の森へ向かうことにした。
次の日。
「皆様方、本当にありがとうございます。これでエンデデアヴェルトも平和な町に戻るでしょう」
全ての傀儡兵が浄化されたことにより、エンデデアヴェルトは正常な町としての役割を取り戻しつつある。
ヘスリッヒに傀儡されて領主の座を奪われたカイゼル伯爵が、領主の座に返り咲き、ヘスリッヒ並びにプリュトンに協力していた役人や兵士に一定の懲罰を与え、逆に二人に対して反抗したために傀儡されていた役人や兵士は昇級させた。
カイゼルは私たちに帆馬車を用意して、破滅の森へ向かう準備をしてくれた。
「カイゼル伯爵、帆馬車まで用意して下さってありがとうございます」
私は感謝の言葉を述べる。
「私たちに出来る範囲の協力は、全力でさせて頂きます」
カイゼル伯爵は頭を下げて忠義を示す。
私たちはカイゼル伯爵が用意してくれた帆馬車に乗って破滅の森へ向かった。その頃、プリュトンは破滅の森の付近で、馬車が通り過ぎることを切に願っていた。
「俺はこんなところで死んではいけない人間だ。俺を捨てたアイツには、必ず復讐をしてやるぞ」
破滅の森で置き去りにされたプリュトンは、絶望の底へ突き落とされたが、持ち前の自己中心的な思考からすぐに立ち直る。グリレ王妃への復讐心を糧にして、壊れそうな心を正気に保たせた。もし、少しでも弱気になれば、精神が崩壊してもおかしくない。破滅の森で心の弱さをみせるのは非常に危険だ。少しでも気持ちの弱さを見せると妖精の幻影に魅了されて命を落としてしまう。グリレ王妃は、プリュトンを破滅の森へ置き去りにして、自殺に追いやるつもりでいた。しかし、もしもに備えて暗殺者も送り込んでいたのであった。




