第96話 王都の危機
「あの子が、浄化されたようです」
「そうか……。ローゼの成長が誤算だったな。早く手を打たないと俺たちまでも力を失ってしまう可能性があるぞ」
「わかっています。次はあの子にヘスリッヒの力を与えますので、より強大な力を得るはずです。ローゼが王都へ戻る前に、革命を実現させましょう」
「そうだな。しかし、ロベリアが同行していれば、同じ轍を踏むことになるぞ」
「わかっています。ロベリアは見つけ次第監禁します」
「前回は抵抗なくおとなしく俺たちの指示に従ったが、今回は同じようにはいかないはずだ。お前が直接出向いた方が良いだろう」
「わかりました。では、あの子の処理はどう致しましょうか?」
「器として失敗したアイツには利用価値はない。王都へ着くまでに殺せ」
「わかりました。では、あの子に力を与えた後に殺処分しておきましょう」
「任せたぞ。俺はレーヴェを抑えつけておく」
一方エンデデアベルトを出発したストロフィナッチョ兄妹は、プリュトンを拘束して、帆馬車の中で尋問をしていた。
「プリュトン王子殿下、創世の魔女の正体を教えてください」
私は創世の魔女の正体を知っている。しかし、私は誰にも話してはいなかった。それにはきちんとした理由がある。
「誰が話すか!それよりもすぐに拘束を解け。さもないと国家反逆罪で死刑になるぞ」
プリュトンは憎悪に満ちた顔で、激しく怒鳴りちらかす。
「拘束を解く解かないかは私たちではなく、国王陛下が決めることです」
「ここには父上はいない。それならば、時期国王である俺の判断に従え。それに俺は創世の魔女に無理やり闇の魔力を与えられて、自分の意思とは反して、強制的に支配されていたのだ。悪いのは全て創世の魔女であり、俺は何も悪くない」
「それでしたら、創世の魔女の正体を隠す必要はないでしょう」
「あ!そうだ。たしか、創世の魔女の正体をあかしたら、俺は死んでしまう呪いにかかっているのだ。だから、言いたくても言えないのだ」
ヘスリッヒは終焉の魔女のことを話そうとしたら、呪いで死んでしまった。その話はストロフィナッチョ兄妹も知っている。
「わかりました。呪われているのなら無理やりに聞き出すことは諦めましょう」
「良い判断だ。俺はものわかりの良いやつは好きだぜ。さぁ、拘束を解くのだ」
「それはできません」
「ふざけるな!そんな身勝手なことは許されないぞ」
プリュトンは怒り狂って、拘束されて動けない体を捻るようにして抵抗する。その時、ストロフィナッチョ兄妹が乗っている帆馬車が急停止した。
「ギャァ〜」
暴れていたプリュトンは顔面から床に落ちて泣き喚く。
「痛い、痛い。早く治療しろ〜」
ストロフィナッチョ兄妹は、痛みで喚いてるプリュトンよりも、急停止した理由が気になり、すぐに帆馬車から降りて現状を確認する。
「バランス隊長、何が起きたのだ」
「ソレイユ様、グリレ王妃殿下が行くてを塞ぐように、待ち構えていたのです」
「ソレイユ、この度は誠に大義であった。すぐに反乱を起こした賊を引き渡してもらいましょう」
「これはグリレ王妃殿下、わざわざこのような場所へご足労ありがとうございます。捕らえた賊は、責任を持って、私が王都まで運ばさせていただきます」
ソレイユは、わざわざ賊を引き取るために、グリレ王妃が迎えに来たとは思えない。何か裏があると判断した。
「私がわざわざ賊を引き取りに来たことを怪しんでいるのだろうが、お前の浅はかな思考はお粗末極まりない。私がこの場に来た本当の理由は、お前たちに助けを求めにきたのだ」
「……どういうことでしょうか」
「愚かにも、シュバインが反乱を起こしたのだ」
「詳しく事情をお聞かせ下さい」
「悠長に説明している時間などない。シュバインは、創世の魔女と名乗る人物から、闇の力を与えられ学生たちを傀儡兵にして、王都を混乱の極地に追い込んでいるのだ。戦力の大半はお前たちに預けたことが仇になってしまったのだ」
「申し訳ありません。すぐに王都へ向かいます」
「賊は私たちが王都まで送り届けるから、お前たちは騎馬に乗って、一刻も早く王都へ向かうのだ」
「わかりました」
ストロフィナッチョ兄妹は急いで騎馬に乗り換えて、引き連れていた王国騎士団、魔法師団を王都へ向かわせた。




