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第90話 進軍

 少し時間は戻ります。

 私たちはプッペンシュピール礼拝堂の1階で待機していた時にロベリアからエンデデアヴェルトの現状を確認していた。



「傀儡兵以外の住人は、南門のエリアへ移動させられていますので、北門エリアには傀儡兵とプリュトン親衛隊しかいないはずです」



 ロベリアは食事を届けにくる兵士の心を読んで最低限の情報は把握していた。



「プリュトン親衛隊とはどのような組織なのですか?」

「プリュトンに忠誠を尽くしている兵士たちのことを指します。兵士の数はおおよそ100名で、その全ての兵士を自分の警護につけています」

 

「傀儡兵の数はわかるかしら」

「1万人以上いると思います」

 

「そんなにもいるのね」

「はい。ヘスリッヒが支配していた頃は、貴族や兵士たちに甘い蜜を吸わせて共存していましたが、支配者がプリュトンに変わってから組織は一変したようです。自分に対して絶対服従を誓わない者を次々と傀儡兵にしたので、傀儡兵の数は大幅に増えたのです」

 


 ゲームの知識ではエンデデアヴェルトの傀儡兵は5000人と説明されていた。しかし、この知識はヘスリッヒが支配者である時の数字になるので、支配者がプリュトンに変わったことで倍の数になったのだ。



 「リーリエ、予測より多いわね」

 「そうね。でも、ロベリアさんが味方になったので問題ないわ」



 もしも、ロベリアが味方にならなかったら、私の作戦は失敗に終わっていたかもしれない。




 一方、北門の近くにある監視塔では、プリュトンとプリュトン親衛隊が王国軍の進軍を待ち構えていた。



 「プリュトン様、定刻通りに王国魔法士団3000人と騎士団3000人の軍団が到着したようです」

 「情報通りだな。1万の傀儡兵は10万の兵をも凌駕する力を持っている。戦力差があり過ぎてつまらない戦闘になりそうだな。ガハハハハハ」


 「そうですね。戦闘は下僕達に任せて、私たちはここで高みの見物としゃれこみましょう」

 「そうだな。ガハハハハハ」




 プリュトンは勝利の笑みを浮かべて高笑いをする。



 「プリュトン様、大変です」



 1人の兵士が真っ青な顔をしてプリュトンの元へ駆け寄ってきた。



 「どうした」

 「大変です。大変です。大変です。大変です」



 兵士は動揺して本題を切り出せない。



 「何をそんなにも動揺しているのだ」



 プリュトンは怒鳴りつける。



 「こ……後方に待機していた傀儡兵が動かないのです」

 「はぁ?お前は何を言ってるのだ!」


 「プリュトン様、前方を見てください。北門に待機させている傀儡兵が案山子のように棒立ちになっています」

 「まさか……おい!ロ……ロベリアの監視は誰がしている!」


 「プリュトン様の命令通りに、食事の配膳以外はプッペンシュピール礼拝堂の地下への入り口は立ち入り禁止にして、誰も近づけないようにしています」

 「え!」


 「え!」



 プリュトンは親衛隊の顔を見て呆れ顔で呆然とする。



 「プリュトン様、どうなされましたか」

 「……お前達がバカ過ぎて呆れているのだ!俺はロベリアに近づくなと言っただけで監視をするなとは言っていない」

 

 「同じではないのでしょうか?」

 「違う!アイツに近づくと情報が全て筒抜けになるから食事を与える以外は近づかずに遠くから監視しろと告げたはずだ」


 「も……申し訳ありません」

 「クソ!こうなったら仕方あるまい。俺は秘密の地下通路を使って逃げるから、お前達は全力で俺の盾になり時間を稼ぐのだ」


 「嫌です。私たちも一緒に逃げます」



 プリュトン親衛隊は命がけでプリュトンを守るほど忠誠心は高くない。彼らは傀儡兵にされるのが嫌なので忠誠を誓った臆病者だ。自分たちが不利になると一目散に逃げ出すひ弱な部隊であった。



 ロベリアが北門の監視塔の近くに来たので、北門に集結していた傀儡兵は動きを停止して案山子となる。そして、先人を切って王国軍に特攻した約1000人ほどの傀儡兵はローゼの光魔法によって解呪されていた。




 「リュンヌ様、エンデデアヴェルト内からは傀儡兵が出てきません。リーリエさんたちのためにこのままエンデデアヴェルト内へ突入しましょう」



 ローゼは魔力回復ポーションを飲みながら、次々と傀儡兵を浄化して、北門の目の前まで進軍していた。



 「ローゼさん、無理をなさらないでください。もう少し相手の出方を見た方が良いでしょう」



 リュンヌは、ローゼがハイペースで魔法を使用している様子を見て、魔力を少しでも回復させるためにも一旦進軍を停止して、休憩を兼ねた待機を命じる。



 「いえ、様子など見ている余裕などありません。リーリエさんが私を待っているはずです」

 「ローゼ嬢、俺も君の意見に賛成だ。このまま全勢力でエンデデアヴェルトへ突入しよう」



 兄のメッサーもローゼと同意見だ。



 「お2人共落ち着いてください。傀儡兵はエンデデアヴェルトの住人です。このまま進軍すれば多くの犠牲者が出るはずです。リーリエさんのことも心配ですが、現状をしっかり把握しましょう」



 私たちの作戦はエンデデアヴェルトを制圧することではない。あくまで混乱に乗じてメテオール副団長とメッサーを救出することだ。だからこそ、リュンヌは相手の出方と私たちのアクションを待っているのだ。

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