表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/124

第86話 ゲームとの違い

 「リーリエ、せっかく手に入れたのだから試してみれば」



 メーヴェは聖剣スーパーノヴァを乱雑に私へ投げ渡す。私は慌てて聖剣スーパーノヴァをキャッチした。



 「あなたが持つと少し感じが変わったわね」



 ゲームでは私が聖剣スーパーノヴァを装備すると黒い木刀は黒い剣に変貌する。これが聖騎士の称号を手にすると黒い魔力を帯びた剣に変わり聖剣スーパーノヴァの能力を最大限に引き出せる。残念ながらリアルでは黒い木刀は木刀のままだが、わずかに先端だけが刃に変化していた。



 「木刀の先端に刃が出現しているようです。これはリーリエさんが聖剣スーパーノヴァの主だと認められた証拠なのでしょう」



 イーリスの判断は正しいのだろうか?と自分に疑問を投げかける。



 「何を浮かない顔をしているのよ。私が握った時は何も変化しなかったのよ。もっと自分に自信を持ちなさい」

 「メーヴェの言う通りよ。聖剣はリーリエさんを持ち主だと選んだのよ」

 「そうね。最低限の力だけでも引き出せることができれば希望を持てるわ。傀儡兵にどこまで通用するかわからないが頑張るわ」



 迷っている場合ではない。私はこの黒い木刀がどこまで傀儡兵やスーパー傀儡兵に通用するか試さなければならない。



 「う……うぅ……」



 隣の部屋から老婆のうめき声が聞こえた。



 「リーリエさん、ロベリアさんが目覚めたようです」

 「わかりました。すぐに向かいましょう」



 私は聖剣スーパーノヴァを握りしめたまま隣の部屋に戻る。すると、白眼の瞳を見開いたロベリアが床に手を付いて起きあがり、白眼の瞳を私の方に向けた。



 「……」



 ロベリアと目が合った私は蛇に睨まれたカエルのように固まった。



 「あなた方が私を助けてくれたのですね」



 喉が潰されたようなしゃがれた声でロベリアが私に問う。



 「……」



 私は怖くて声を発することができない。



 「あなたが先読みの魔女ロベリアさんなのでしょうか」



 蝋人形のように固まった私の代わりにイーリスがロベリアに問う。



 「私はそのように呼ばれているのですね。でも、安心してください。私はあなた方に危害を加えるつもりなどありません」

 「それはどのように解釈をすれば良いのでしょうか」


 「あなた方の敵ではないということです」

 「それは終焉の魔女を裏切ったという意味でしょうか」


 「違います」

 「では、どういう意図で私たちの敵ではないと仰っているのでしょうか」


 「私は終焉の魔女との契約を完了したので自由の身になりました」

 「契約が完了したとは、どういう意味なのか説明をしてください」


 「私は復讐を果たす為に終焉の魔女から闇の力を得ることにしました。しかし、私は他の魔女たちと違って、終焉の魔女に差し出す対価が違いました。他の魔女たちは自分自身の大切なモノを渡したうえに国王殺しの大罪を義務付けられています。でも私の対価は自分自身の大切なモノを渡すことと終焉の魔女が欲している物を探し出して渡すことです」

 「ロベリアさんは終焉の魔女が欲する物を渡したことで契約が完了して自由の身になったということでしょうか」


 「そのとおりです。私は幸運にも終焉の魔女が望む物を見つけ出し、それをお渡したので終焉の魔女からの呪いから解放されて自由の身となったのです」

 「わかりました。あなたの話を信じましょう。でも、終焉の魔女から解放されたあなたがどうしてこのような場所に監禁されているのでしょうか」


 「私には確かめたい事があったのです。しかし、その事を確認する前に創生の魔女に捕まりこの部屋で監禁されることになったのです」



 ロベリアの話す内容は私がゲームで得た知識とは異なっている。ゲームの設定では終焉の魔女に闇の力を貰う代償に自分の若さと国王殺しの大罪を犯す契約を交わす。もともとロベリアは自分を裏切った国王に復讐を誓っていたので迷うことなく条件を飲んだ。しかし、ロベリアがイーリスに話した内容は違っている。終焉の魔女が欲しい物とは何なのか?それはゲームにはない設定だ。



 「確かめたい事とはどのようなことでしょうか」



 イーリスは確信に迫る。



 「…………」



 ロベリアは何も答えない。



 『そんなに怯えないで下さい。もう私はあなたの敵ではありませんよ』



 ロベリアの声が私の頭に響く。



 『あなたと2人でお話をしたいです』



 私はロベリアの問いかけに戸惑いを感じたが、私もロベリアと話したいことがあるので了承する。



 「イーリスさん、ロベリアと2人で話しをさせてもらってもよろしいでしょうか」

 「……」



 イーリスは考え込む。



 「リーリエ、そいつと2人っきりになっても大丈夫なの」



 心配したメーヴェが私に声をかける。



 「わからないわ。でも、2人で話したいことがあるの」

 「イーリスさん、リーリエの望みを叶えてあげましょう」

 「……」



 イーリスは迷っているようだ。



 「イーリスさん、リーリエさんを信じましょう」



 シェーンも私の意見に賛同する。



 「……わかりました。でも、あとで話せることはきちんと話してください」

 「ありがとう、イーリスさん」



 イーリスたちは私とロベリアを残して一旦部屋を出た。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ