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第79話 金城鉄壁

新年あけましておめでとうございます。今年もこの作品の応援をよろしくお願いします!

 監視塔の地下へ降る階段は折り返し階段となっていてとても長く続いていた。おおよそ地下5階ほど降りて行くと50畳程の部屋に辿り着く。その部屋はがらんどうで奥には木製の大きな扉があり、扉の前には立ち入り禁止の札が掲げられていた。



 「この扉の先に秘密の地下通路があるのかもしれません」



 逆を言えば、この扉の先に秘密の地下通路がなければ私の作戦は失敗に終わる。



 「俺が扉を開けるわ」



 シェーンが扉を開けると言ったのには理由がある。それはシェーンのスキル金城鉄壁(きんじょうてっぺき)は、もしも扉に罠など仕掛けられていた時に、罠のダメージを大幅に減らす効果を有しているからである。例えば扉が爆発した場合、その爆発のダメージは全てシェーンが引き受けることになる。普通の人間なら爆発に巻き込まれたら死ぬこともあるだろうがシェーンは違う。スキルの効果のおかげで大幅にダメージを減少することができる。



 「シェーンさん、お任せします」



 私たちはそれぞれに得意分野がある。それに応じて行動するのはゲームもリアルでも同じことなので、イーリスは遠慮なくシェーンに譲る。



 「俺が全てのダメージを受け取るわ。でも、念のために少し離れてくれるかしら」



 私たちは扉からできるだけ遠くに離れる。一方、シェーンは立ち入り禁止の札の奥へ入り大きな扉の前で立ち止まった。



 「開けるわよ」

 「お願いします」

 


 イーリスの言葉を聞いたシェーンは大きな扉を開けようとする。



 『ガガガガガガ……』



 シェーンが大きな扉に手を当てると同時に天井から地鳴りが聞こえた。



 「天井を見てください」



 イーリスが天井を指さす。私たちが天井を見ると、天井には大きなヒビが入り今にも崩れ落ちそうだ。



 『ガガガガガガガガガ……』



 先ほどよりも大きな地鳴りが響くと同時に天井が崩れ落ちた。



 「シェ~~~~~ン」



 私は思わず大声を上げる。シェーンのスキル金城鉄壁(きんじょうてっぺき)が発動して、全ての天井の瓦礫が吸い込まれるようにシェーンの頭の上に降り注ぐ。



 「リーリエ、シェーンのスキルを信じなさい」



 メーヴェは落ち着いた顔で取り乱した私へ声をかける。ゲームとリアルは違う。私は目の前でシェーンの頭上に瓦礫が落ちて行く様を見て平常心が保てなかった。



 『ガガガガガガガガガ……ガガガガガガ……ガガガガガガガガガ……』



 実際は10秒程だったのかもしれない。しかし、天井が崩れて瓦礫がシェーンの頭上に落ちて行き、シェーンが瓦礫の山の下敷きになっていく姿を見ている時間はとても長く感じた。



 「シェーン……」



 シェーンのスキルを信じていないわけではない。でも、私は顔面蒼白になり体の震えが止まらなかった。

 



 「うぉ~~~~」



 シェーンの雄たけびが部屋の中に響くと同時に瓦礫の山が吹き飛んだ。そして、瓦礫の山から出てきたシェーンの顔や体からは血が滴り落ちていた。



 「イーリスさん、すぐに治療してください」



 私は大声で叫ぶ。



 「わかりました」



 イーリスが治癒魔法を施すとシェーンの傷は跡形もなく消え去った。



 「シェーン、大丈夫」

 「問題ないわ。もともと俺の体は頑丈だからね」



 シェーンは防御力に特化したキャラである。それはスキルだけではなくステイタスも防御力に極ぶりしている。シェーンの金城鉄壁きんじょうてっぺきのスキルと極ぶりした防御力が、瓦礫の下敷きになったシェーンへのダメージを軽減したのだ。外見的にはかなりのダメージを負ったように見えたけれど、実際はさほどダメージを受けていなかった。



 「リーリエ、心配し過ぎよ。シェーンの金城鉄壁きんじょうてっぺきのスキルは、多少の擦り傷は出来るけれど、内面的なダメージはほとんどないのよ」

 「ハハハハハハ、目の前で瓦礫の下敷きになれば心配するのは当然よ」



 シェーンの屈託のない優しい笑みを見てやっと私の動揺は消え去った。目の前で人間が瓦礫に埋もれる姿を見るのは体には良くないものだ。



 「シェーンのスキルのことは聞いていたけれど心臓に悪いわね」

 「そうですね。私も同感です。スキルのことは聞いていましたが、実際に目の当りにすると心配してしまいますね」



 イーリスは平然を装っていたが内心は心配していたようだ。



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