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第74話 国王からの勅令

 「リュンヌ様、私は国王陛下から直接この依頼を受けています。私も同行するのが筋だと思います」



 バランス隊長はリュンヌに嘆願する。



 「バランス隊長、リーリエ嬢は意地悪をして連れて行かないと言っているのではありません。バランス隊長には自分の役割を全うして欲しいと言っているのです」

 「どういうことでしょうか」


 「これは私だけの推測ではないと思いますが、王国側に裏切者が存在すると思われます。私はその可能性を視野に入れているからこそ、王城ではなくガトーで会議をしようと打診したのです。もし、バランス隊長がリーリエさんと一緒に秘密の地下通路を使ってエンデデアヴェルトへ潜入するとの情報が流出すれば、今回の作戦は失敗に終わります。リーリエさんの作戦を成功させるには、私たちがおとりになる必要があるのです」

 「王国側に……う・ら・ぎ・り・も・の」



 バランス隊長の顔は真っ青になり口をぽかんと開けてリュンヌの言葉を拒絶した。



 「私も王国側に裏切者が居ると思っています」



 作戦を成功させるためには、作戦の内容を秘密にする必要があった。察しの良いストロフィナッチョ兄妹は、初めから王国側に裏切者が居ることを視野にいれていた。



 「そういうことですので、リーリエさんの作戦は絶対に他言無用でお願いします」

 「……しかし、国王陛下へは連絡をしなければいけません」


 「ダメです」

 「リュンヌ様は国王陛下を疑っているのでしょうか」


 「違います。ですが王城内では誰かが盗み聞きをしている可能性もあります。あらゆる可能性を排除しなければいけません」

 「……わかりました」



 バランス隊長はリュンヌに説得されてしぶしぶ了承した。



 「実に良い会議だったな」



 ソレイユは満足げに笑っているが、バランス隊長は浮かない顔をしている。



 「リーリエさん、明後日にフォルモーント学院へお伺いする用事がありますので、用事が終わった後にリーリエさんの寮へ向かいます。その時に作戦の詳しい日程を聞かせてください」

 「わかりました。新作のスイーツを用意して待っています」


 「楽しみにしてます」

 「リュンヌ、本来の目的を忘れるなよ」


 「わかっています!」



 リュンヌは頬を膨らませて怒っている様子を示すが、瞳はとろけるような甘いスイーツが浮かんでいた。



 会議が終了して私たちはようやく解放された。



 「ローゼ、プディングに寄る時間はないけど、ビスキュイへ行くには、すこし時間があるから買い物でもしましょ」

 「はい!」



 ローゼは目を輝かせて喜んでいる。



 「リーリエさん、実はイーリスさんからおすすめの洋服屋さんを教えてもらっていたので、ご案内します」



 ローゼは私の手を握りしめて暖かい笑みを浮かべる。そんなローゼのアンニュイ姿を見ると、会議で消耗した心の疲れが吹き飛んでいった。

 結局カフェは2つしか巡ることは出来なかったが、ローゼと楽しい時間を過ごせたので、充実した課外活動を過ごすことが出来たといえよう。しかし、楽しい時間はいつまでも続かない。2日後に私は地獄に落とされるほどの事態に陥ることとなる。



 「リーリエさん、どうしたら良いでしょうか」


 

 2日後の夜、私の部屋にはローゼ、イーリス、リュンヌ、メーヴェ、シェーンが居た。そして、今にも泣きだしそうな顔のローゼが不安と戸惑いで潰されそうになっていた。



 「リュンヌ様、どうしたら良いのでしょうか」



 私はリュンヌに助けを求める。



 「断ることも出来ます。しかし、お勧めはできません」



 リュンヌは思いつめた表情で悔しそうに答える。



 「私も断ることは危険だと思います。王命に逆らうことは平民のローゼさんにとっては後ろ盾を無くすことを意味することになります」



 私たちは課外活動を終えた晩にイーリスを呼び出して、エンデデアヴェルトへ乗り込む作戦を説明した。もちろんイーリスは協力を喜んで引き受けてくれた。次の日は部室で兄に報告すると、案の定一緒に付いて来ると言い、誘ってもいないのにメーヴェも参加表明をして、5人でエンデデアヴェルトへ乗り込むことになった。だが、2日目の朝にローゼと兄宛てに、国王陛下から勅令が届いた。その内容は、王国魔法士団臨時団長ソレイユ、王国騎士団臨時団長リュンヌの元でメテオール副団長の奪還作戦に協力をするようにと書かれてあった。兄とローゼは国王からの勅令を断ることが出来ずに困っていたのであった。

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