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第68話 談笑

 ガトーの2階席は個室の予約席になっていて、主に貴族の中でも上位貴族のみが優先的に予約を取ることができる。ストロフィナッチョ辺境伯は5大貴族でも最大の権力を有しており、王族さえも頭が上がらないほど恐れられている。その理由はストロフィナッチョ辺境伯の従える魔法士団と騎士団は天下無敵隊と呼ばれていて、フォルモーント王国へ攻め入る他国の軍隊に1度の敗北も味わうことなく撃退しているからである。現在天下無敵隊の魔法士団の副団長がソレイユで騎士団の副団長がリュンヌになる。


 ソレイユとリュンヌの姿を見た店員は、国王陛下が訪問したかのように平伏した。



 「お待ちしておりました。すぐに2階席へご案内致します」



 店員は私とローゼには一切目を合わせることなく2人を丁寧に2階席へ案内する。



 「今日は2階席全てを貸し切りにしております。どうぞご自由にお使いください」



 ガトーの2階席は10部屋の個室席になっている。しかし、用途に合わせて様々なバリエーションで席を用意することができるので、今日の2階席はパーティーが開けるような大部屋へと様変わりしていた。

 


 「お2人とも好きな席に座ってくれ」

 「お気遣いありがとうございます。遠慮なく先に座らせて頂きます」



 部屋の中央には黒曜石を使用した大きなテーブルと座り心地の良さそうな椅子が8席用意されている。私とローゼは隣同士で椅子に座り、反対の面にソレイユとリュンヌが座った。



 「君たちの活躍は聞いているぞ。王都の危機を救ってくれてありがとう」



 おそらくヘスリッヒを倒したことを言っているのであろう。



 「お褒めの言葉ありがとうございます」



 私とローゼは頭を下げてお礼を述べる。



 「そんなに緊張しなくてもよろしいですわ。気楽にしてください」



 リュンヌは私たちの緊張を解くように優しい笑みを浮かべる。



 「ソレイユ様、リュンヌ様、私たちを……いえ、リーリエさんをお食事にご招待してくださった本当の理由をお聞かせください」



 ソレイユは王都の危機を救ったことのお礼を言いたくて私たちをお茶に誘ったわけではないだろう。ローゼは私の気持ちを察してか臆することなく真意を聞く。



 「お!そうだな。まずリーリエ嬢を食事に誘ったのは、スイーツのことを詳しく知りたかったからだ。特にリュンヌはリーリエ嬢の作るクッキーに目がなくて、王都へ来る前にレーヴァンツァーン領によって多量のスイーツを購入したくらいだ。その時シュヴェールト公爵にご挨拶をした際に、リーリエ嬢が王都の学院へ通っていると聞いたので、ぜひとも会いたいと思っていたのだ。それにキルッシュブリューテ領で誕生した聖女ローゼ嬢にも非常に興味があったのだ。偶然にも2人に出会えたことは幸運だったと言うべきだろう」



 嬉しそうに話すソレイユと顔を赤らめて照れるリュンヌの姿を見ると嘘を言っているわけではなさそうだ。また、何かトラブルに巻き込まれるのかと心配したが取り越し苦労であった。



 「兄様、そんな言い方をすれば私が食いしん坊だと思われます。兄様の方がたくさんスイーツを購入したはずですよ」

 「そうだったか?俺はクッキーとビスケットのセットをお土産用に10箱購入したけど、お前はプライベート用に5箱買ったはずだ。購入した数は俺の方が多いけれど食べる数はお前のが多いはずだ。それにカフェへも立ち寄ったけど、俺はミルクレープセットを頼んだが、お前はミルクレープセットの他にもプリンを2つ追加注文していたはずだ」


 「兄様、もう喋らないで下さい」



 リュンヌが私のスイーツの大ファンであることは間違いないだろう。



 「おっと、2人ともすまない。話が脱線してしまったようだ。それで……俺はどこまで話をしたのだろうか」

 「ソレイユ様、もう大丈夫でございます。理由は理解致しました。改めてお食事に誘って頂きありがとうございます」




 ローゼは好意を疑うような質問をした非礼を詫びる代わりにお礼の言葉を述べた。



 「突然誘われたので疑問に思うことは当然だ。気にすることはない」



 ソレイユはローゼの言いたいことをきちんと理解している。

 


 「リーリエさん、単刀直入に申し上げます。今後はどんなスイーツを発売する予定なのでしょうか」

 



 もうリュンヌには恥じらいはない。今一番聞きたいことを素直にぶつけたリュンヌの顔はとても輝いていた。



 「そうですね。今料理研究部で作っているのは……」



 ゲームでのリュンヌは、見た目はお姫様だが1度剣を構えると鬼神の形相となり剣を乱舞する狂戦士へ変わる。メーヴェが1度に2回攻撃をするのに対してリュンヌは全体攻撃になるので非常に頼もしい仲間である。リアルでは初対面のリュンヌだがゲームでは見知った仲なので、お姫様のような綺麗な笑みでスイーツのことを尋ねられると断ることなどできない。



 「リーリエさん、ちょっとお待ちください。部外者に新作の内容を漏らすのは良くないことだと思います」



 ローゼが全力で止めに入った。



 「リュンヌ、ローゼ嬢の言う通りだぞ。情報は宝だ。安易に聞き出すのは非礼に値する」

 「ごめんなさい。そんなつもりはなかったのよ。ただ、リーリエさんとスイーツの話をしたかっただけなのです。決して情報を盗もうなどとは思っていません」

 「リュンヌ様、気にしないで下さい。私もお気持ちは理解しております。新作の内容を全てお話することはできませんが、どのようなスイーツか説明したいと思います」



 ローゼの言い分は理解できるが、前世の知識を利用しているだけなので独占するつもりはない。私は簡単に新作の内容を説明してあげることにした。

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