第67話 新たな仲間との出会いパート2
「あら、シェーン残念だったわね。あなたがどうしてもとお願いするから今日のリーリエたちの行動予定を教えてあげたのに」
「メーヴェ、俺は諦めの悪い女だとしっているよね。それに、あの女が邪魔さえしなければ上手くいっていたかもしれないわ」
私とシェーンが出会ったのは偶然ではなく計画的であった。
「その事も忠告してあげたわよ。あなたのような男勝りの性格よりも乙女のような性格のローゼのがリーリエのタイプかもしれないとね」
「そうだったとしても俺は負けない。絶対にリーリエさんを手にいれてみせるわよ」
「あの女のどこが良いのよ。神から3属性を授かったのに怠慢な行動をしている堕落令嬢よ。料理の才能は認めるけれど、料理では世界を救えないわ」
「そうかしら?ここのビスケットというスイーツはリーリエさんが考案したモノをオマージュしたものよ。しかも、この店だけではないわ。今王都で人気のあるカフェはリーリエさんが考案したスイーツをオマージュして人気を得たと聞いているわ」
「それがどうしたのよ」
「メーヴェはここのクッキーを食してどう感じたかしら」
「私も料理研究部の一員よ。まだまだリーリエが作るビスケットには劣るけど美味しいことは間違いないわ」
「人は美味しい物を食べると幸せな気分になるわ」
「たしかにその通りよ」
「あなたの言う通り料理で魔獣を倒すことはできない。けれど人を幸せにする力を持っているの。それは世界を救うことと同じことだと思わないかしら」
「それは詭弁ね」
「受け取り方は千差万別だけど、素直に受け入れる勇気も必要よ。それにリーリエさんは呪いによって魔法が使えないって話よね」
「真実かどうかは定かではないわ」
「俺はもっとリーリエさんのことを知りたい。あの美しい容姿に天賦の才能そして謎めいた過去、俺の子宮が疼いてくるわ」
「好きにすると良いわ。そのかわり私の恋路も手伝ってね」
「もちろんよ」
シェーンとメーヴェは2人とも第1剣術探求部の部員なので繋がっているのは当然だった。
一方私たちは……。
「リーリエさん、あの黒い屋根の建物がガトーになります」
真っ黒の長方形の屋根に赤色の四角い外壁の2階建ての建物がガトーである。テラス席はないが建物はビスキュイの2倍ほどの大きさなので、集客できる人数はビスキュイの1,5倍とイーリスのメモに書いてあった。
「シックで落ち着いた高級感のある外観が素敵ね」
ビスキュイが可愛くオシャレな若者向けの店としたら、ガトーは落ち着いた雰囲気の大人向けの店だと言えるだろう。
「そうですね。お値段もビスキュイに比べると倍以上になるとメモに書いてあります」
ビスキュイの予算は日本円で1人2,000円程度だが、ガトーは1人5,000円を超えるらしい。
「席が空いていると良いわね」
「はい」
ガトーの扉は魔法扉になっていて、人間の体温を感知すると自動に開く。
「いらっしゃいませ。今日は大変込み合っていますので整理券を配布しています。現在30組がお待ちになっていますので、3時間後にお越しください」
「ローゼ、やっぱりここも後回しね」
「はい」
満席で整理券を渡されるのはイーリスのメモに記されているので驚くことはない。2時間後にビスキュイへ行ってその1時間後にガトーへ行けば良いのだ。
「ローゼ、次の場所はどこかしら」
「次はプディングになります。ここから800m離れた所にあります」
プディングは最近プリンを販売するようになって有名店の仲間入りしたお店である。プリンはレーヴァンツァーン領内で1年前に販売を開始したが、最近になって王都に広まったようだ。
「君はもしかしてリーリエ嬢なのか」
「……」
私たちが店を出ると入れ違いに入ってきた男性が声をかけてきた。
「やはりあなたがリーリエさんですね」
私が足を止めたことで、男性の隣に居た女性が私をリーリエだと判断した。
「リーリエさん、この方たちは誰なのでしょうか」
私がすぐに返答できなかったのは理由がある。それはこんなにも早くこの2人に出会うとは想定していなかったからだ。2人の名は男性がソレイユで女性はリュンヌである。ストロフィナッチョ辺境伯のご子息であり、ゲームでは私が2年生の時に国王からの命により王都へ来ることになる。ソレイユはローゼ、リュンヌは私のハーレムパーティーに加入する心強い仲間だ。2人は一卵性の双子なので、容姿は髪型以外そっくりであり、ソレイユはサラサラの艶のある金髪のセンター分け、リュンヌは金髪の巻き巻きツインヘアーだ。瞳は光沢のある琥珀色で、まさに少女漫画に出てくる王子様とお姫様を体現した容姿である。
「……知らない人よ」
ゲームの知識では知っているが、実際に会うのは初めてだ。
「急に呼び止めて申し訳ない。俺はソレイユ・ストロフィナッチョで、隣の女性は妹のリュンヌだ。以後お見知りおきを」
「あなた方があの有名なストロフィナッチョ辺境伯の戦闘狂兄妹なのでしょうか」
ローゼは顔をこわばらせて少し緊張した面持ちで尋ねる。ゲームのキャラ紹介で2人のことを戦闘狂兄妹と記されていたので、ローゼの問いは間違いではない。
「ハハハハハハ、そんな風に俺たちは呼ばれているのか、実に面白い。ところで、君がローゼ嬢で間違いないか?」
「はい、そうです」
「兄様、こんな所で立ち話もなんですから相席をしてもらうのはどうでしょうか」
「それは良い考えだ。リーリエ嬢、ローゼ嬢、よかったら俺たちが予約している席で一緒にスイーツを堪能しようではないか」
「リーリエさん、どう致しましょうか」
「……そうね、せっかくのお誘いを断るのも失礼なので、喜んで受けることにしましょう」
私はなぜこの時期に、この兄妹が王都に居るのか確認する必要があると感じたのでお誘いを受けることにした。




