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第64話 5人の判断

 私たちがルポに戻った時にはもう日は暮れていた。しかし、定期運航の帆馬車はまだ運行中だったので、帆馬車に乗り込もうとした時バランス隊長が強引に王国魔法士団の豪華な帆馬車へ乗るようにと命じた。

 帆馬車の中ではバランス隊長による尋問のような質問を受けて、学院での出来事など洗いざらい話すことになる。私たちの話を聞いたバランス隊長は大いに興奮してとても満足げな顔をしてご満悦になっていた。



 「俺が一筆書いてやろう」



 月華隊を救出したために学院へ帰るのが遅くなったので、バランス隊長は学院長宛てに私たちへの感謝の意を表す手紙を書いてくれた。そのおかげで私たちはお咎め無く寮へ戻ることができる。



 「さて、ここからが本題だ。俺は是が非とも君たちを【judgment(正義) of() justice(審判)】のメンバーに入って欲しいと思っている。これはドナーからの提案でもある。いずれ近いうちにドナーから連絡があるだろうから、それまでじっくりと考えてくれ」

 


 ゲームでは【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入して欲しいとの打診はなかった。いや、あったと言えるかもしれない。ゲームではリーリエを主人公に選ぶとローゼたちが【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入して、ローゼを主人公に選ぶとリーリエたちが加入することになる。


 私たちは今後のことを考える必要性が出来てしまった。バランス隊長に学院まで送ってもらい、寮で食事を終えた後、兄を除いた女性たちは私の部屋に集合した。



 「まだ正式に打診があったわけではありませんが、返答を考えておく必要があります。私は【judgment(正義) of() justice(審判)】へ入るべきではないと思っています」



 ゲームでは正義の令嬢と呼ばれるイーリスとぼんくらと呼ばれる兄は【judgment(正義) of() justice(審判)】へ加入はしていないので、当然の結論なのかもしれない。



 「私はメッサー様に従いますので失礼します」



 メーヴェは自分の意見を伝えると早々に私の部屋から退出した。



 「私はイーリスさんの意見に賛成ですが、【judgment(正義) of() justice(審判)】の方々が協力を求めるならば手伝いはするべきかと思います」



 ローゼもイーリスと同意見のようだ。



 「私も2人の意見に賛成よ。【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入すれば、部活動が疎かになるはず。私も協力を惜しむつもりはないけれど、部活動も大事にしたいわ」



 【judgment(正義) of() justice(審判)】は裏生徒会とも呼ばれるが、実際は国王陛下直々の番犬である。【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入することは、国王陛下の忠実な犬になることを宣言する必要がある。それは自由を失って飼いならされた犬になることを示している。私は自由を失いたくはないし、私は私のやり方でこの世界を救う必要がある。イーリスとローゼが【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入しないことを明確に意思表示してくれたことは私にとっては非常にありがたい選択であった。



 「まさしくリーリエさんの言う通りです。しかし【judgment(正義) of() justice(審判)】は正体不明の謎の組織とも言われていますので、距離感は保っていたほうが良いでしょう」

 


 イーリスでさえ【judgment(正義) of() justice(審判)】が国王陛下の番犬だと知らない。学院内では学院長が生徒会と同等の権限を与えた特別な組織と説明をしているに過ぎないので、正体不明の謎の組織と噂がたつのは仕方がないのかもしれない。

 私たちは【judgment(正義) of() justice(審判)】に加入しないと決断して意見交換会は終了した。



 1週間後、ドナーが部室に顔を出し【judgment(正義) of() justice(審判)】への加入を求めに来た。



 「ドナー、すまない。その話は断らせてもらう。しかし、要請があればいくらでも協力はしよう」



 兄も【judgment(正義) of() justice(審判)】へ加入する意思はなかった。



 「そうか……非常に残念だ」

 


 ドナーは以外にあっけなく引き下がる。



 「しかし、その判断は正しいのかもしれない……」



 ドナーは少し遠くを見るような寂しげな目をしていたが、その場にいた誰もがその様子に気付くことはなかった。その後ドナーは消息を絶ってしまった。

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