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第57話 修練の森

 「プリュトン、王都への進行は暫く白紙に戻します」

 「どうしてでしょうか?こちらはいつでも進行の準備は整っています」


 「終焉の魔女様からヘスリッヒが死んだとの報告がありました。思ったよりもローゼの成長が著しいので、作戦を練り直す必要があります」

 「わかりました。私の主は創生の魔女様になります。今後のために傀儡兵を創生の魔女様の盾として、より強力な傀儡兵へと昇華させることを宣言します」



 数日後、王国魔法士団一行は準聖女を連れて万全の体制でエンデデアヴェルトに向かったが、統制の取れた傀儡兵によって返り討ちにあう。しかし、その事実が公表されることはなかった。




 王都にいた傀儡された者の解呪も終わり、ドナーからエンデデアヴェルトの制圧は成功したとの報告を受けて、私の不安は徒労に終わったと安堵した。これにてヘスリッヒの反乱は終了したと伝えられたが、フラムの行方は未だにわかっていない。



 「リーリエさん、今日も特訓に行かれるのでしょうか」

 「もちろんよ。魔力がなくても剣術を磨くことはできるからね」



 私はフォルモーント王立学院に入学してから1度も剣術の訓練を欠かしたことはない。魔王退治はローゼに任せて、自分はのんびりカフェを開いてスローライフをするつもりだったが、入学初日にローゼと出会い、自分の身勝手さに情けなくなったのである。もちろん、魔王を退治した後はカフェを開くつもりなので、部活で料理の研究も頑張っている。



 「リーリエさんは勤勉ですね。でも、今日は午前中で授業が終わったのでお外で魔獣を退治すると聞きました。あまり無茶をしないでください」



 入学して3か月が経過した。入学して3カ月が経過すると部活動での課外活動が認められることになる。ゲームでは第1剣術探求部に入部した私は、ハーレムパーティーを率いて魔獣を倒しながらレベル上げに専念していた。魔獣を倒すと魔石や素材が手に入るので、それを売ってお金を稼ぐこともできた。一方、ローゼの場合は自分自身のレベルを上げるのではなくて、ハーレムパーティーのレベルを上げることが主体となる。ゲームではレベル上げで強くなる私と恋愛値を上げて強くなるローゼ、2人のゲームでのコンセプトは明確に違うのである。



 「何を言っているのローゼ、今日はあなたも参加するのよ」



 リアル世界ではレベルという概念はない。しかし、それは目視で把握することができないだけで実際には存在するのだと私は思っていた。自己研鑽で強くなるとは思うが、魔獣を倒した方がより早くより強くなれると私は信じている。現に魔法研究部、剣術探求部も魔獣退治を果敢に行っていた。



 「……私も参加するのでしょうか」

 「もちろんよ」



 ローゼは私と違って自己研鑽と恋愛値向上で強くなるので、わざわざ魔獣を退治する必要はない。



 「ローゼ嬢も参加するのだな」



 タイミングよく兄が部室に入って来た。今回の魔獣退治には私と兄、イーリスとメーヴェそしてローゼの5人で行くつもりである。ローゼには恋愛値向上に専念させたいのだが、ローゼのハーレムパーティーになるはずのフラムは行方不明のままだし、マルスは失った時間を取り戻すために第1魔術研究部の部活動に専念していた。メテオールはエンデデアヴェルトを制圧した後は姿を見せない。ゲームではローゼとメテオールが出会うのは魔獣退治をするために修練の森へ行った時になる。今回の魔獣退治の真の目的は、私のレベルを上げるのではなく、ゲームどおりにメテオールとの真の出会いを演出するためであった。



 「はい、お兄様。今日は料理研究部として食材を確保する理由で課外活動の許可を取りました」

 「わかった。今回はリーリエとローゼ嬢は初めての魔獣狩りデビューだ。修練の森は弱い魔獣しかいないが気を引きしめていこう」


 ゲームでレベルを上げるために訪れる森は3種類ある。修練の森、試練の森、絶望の森だ。今回訪れるのは弱い魔獣や獣しか生息しない修練の森になる。序盤のレベル上げ専用の森なので危険は少ない。ゲームではローゼは初めて訪れた修練の森で、マルスとフラムを従えてレベル上げをすることになる。順調にレベル上げを終えた3人は修練の森を出ようとした時に、王国魔法士団の訓練で訪れていたメテオールと出会うことになる。メテオール達は修練の森のさらに奥にある試練の森で特訓をしていたが、試練の森の主であるジャイアントベアーに出くわして命からがら逃げて来たところローゼたちと出会う。ローゼは負傷した王国魔法士団員を治療してあげたことで、後日改めてお礼に訪れたメテオールがローゼに惚れてハーレムパーティーの一員となる。今回これと同じ流れになることを期待して私は修練の森へ行く算段を立てたのであった。

 




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