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第47話 最良のメンバー


 「そのようだな。でも安心しろメッサー、俺の伝手を頼って必ず国王陛下に連絡する」



 【judgment(正義) of() justice(審判)】は国王陛下の番犬なので、国王陛下へ直接連絡を取ることは可能であるが、それを告げることができないドナーは、遠回しな表現をするしかなかつた。



 「任せたぞドナー」



 兄は安堵の笑みを浮かべる。



 「ドナー様、占い館【フルーフ】から多量の不穏な魔力を感じ取ることができます。恐らくですが、占い館【フルーフ】にはとても危険な人物がいると思われます」



 危険な状況を察知したローゼだが、落ち着いたトーンで冷静に報告する。



 「ドナー、どうする。このまま占い館【フルーフ】へ侵入するか」



 私たちの目的はフラムの捜索である。危険を冒してまでも占い館【フルーフ】へ行く必要はない。



 「おそらく占い館【フルーフ】にはフラムはいないだろう。俺達の目的はフラムの捜索だ。終焉教に関してはお前たちには関係ない。無駄に危険地帯に侵入するのはやめた方が良いだろう」



 ドナーは私たちの安全を優先する。ゲームでも裏魔法具店へは潜入をしていないので、正しい判断なのかもしれない。虎穴に入らずんば虎子を得ずと言うが、虎穴に入るにはそれなりの理由が必要だ。私が2年前に訪れた占い館【フルーフ】は、占いをしながら憎悪の種を集めることが目的であった。しかし、私が歴史を変えてしまったので、占い館【フルーフ】は裏魔法具店に変わってしまったのである。裏魔法具店に様変わりした占い館【フルーフ】へ侵入する目的はない。あるとすれば終焉教の信者の拡大を防ぐために、聖女の香ストロングを制作している人物を倒すことだ。すなわちヘスリッヒを倒すということになる。ローゼは不穏な魔力を多量に感じると言っている。あらゆる可能性から考察すると占い館【フルーフ】にいるのはロベリアではなくヘスリッヒである可能性も見えてきた。



 「本当にこのまま見過ごしても良いのかしら……」




 私はふと呟いた。ヘスリッヒと言えば序盤の中ボスだ。私なら聖剣スーパーノヴァがないと倒せない相手であるが、ローゼなら楽勝で勝てる相手である。なぜヘスリッヒがエンデデアヴェルトにある豪華絢爛な礼拝堂ではなく、小汚い占い館【フルーフ】に居るのか謎であるが、謎だからこそ確かめる必要があるのではないかと思った。



 「リーリエさん、何か気になることがあるのでしょうか」



 私の小さなつぶやきをイーリスは聞き逃さなかった。



 「悪い種は直ぐに刈り取らないと手遅れになる可能性があります。この一度の見逃しが後で後悔を招くかもしれません」



 ゲームでは2択を間違えるとゲームオーバーになる。リアルでもその可能性は高いかもしれない。私にとっては虎穴でもローゼにとっては猫の住処である。ここは潜入した方が良いとの答えを私は導き出した。



 「リーリエ、ロベリア対策はできているのか」



 兄は私の不安点を確認する。



 「お兄様、裏魔法具店に様変わりした占い館【フルーフ】には新しい店主が居ると思います」

 「誰がいるのだ」


 「終焉教の教祖ヘスリッヒです」

 「ヘスリッヒだと……。どうしてヘスリッヒのことを知っているのだ」


 ドナーは血相を変えて叫んだ。ヘスリッヒは終焉教の教祖としてエンデデアヴェルトでは知らない者はいないかもしれない。しかし、王都では終焉教の脅威に備えて厳戒態勢で情報を封鎖して一部の者しか知らされていない。それにヘスリッヒはシュバインの父親でもある。この2つの事実を知っているのはドナーと私だけである。



 「終焉教の噂を聞いた時に教祖がヘスリッヒだと聞いていたのです」



 もちろんドナーに詮索されるのは承知の上である。



 「そ……なのか」



 ドナーは何か言いたげな表情をするがローゼやイーリスに余計な詮索をしないように言われているので口をへの字に閉じる。



 「リーリエ、どうして終焉教の教祖がこんなところにいるのだ」



 兄は私に問いかけるが、それは私も知りたいことである。



 「聖女の香はヘスリッヒが作り出す魔道具だと聞いています。ヘスリッヒはエンデデアヴェルトを支配したので、次は活動の拠点を王都に変えて最終段階に突入したと思われます。ヘスリッヒは聖女の香で傀儡した王都民たちを伝達係として使用しているかもしれません。私の憶測ですがメアリーの両親が行方をくらましたのは伝達係として使用されたと思います」



 ゲームではマリーアの父親は伝達係として王都へ派遣されて、母親は傀儡兵にされていた。リアルではメアリーの両親がどうなっているのかわからないが伝達係として利用されている可能性が高いはずだ。



 「もう終焉教の魔の手が迫っているのだな」

 「はい。ここは二手に分かれた方が良いと思います」



 これは国の一大事である。選択を間違えると王都が陥落すると言っても過言ではない。



 「メッサーさんとドナーさんで王城へ向かってください」




 イーリスは即座に判断する。国王陛下に連絡を取れるドナーが選ばれるのは当然だ。



 「ふざけるな。俺は残るぞ」



 兄は納得していない。



 「この怪しげな魔力は闇魔法です。闇魔法には光もどきもしくは光魔法しか対抗手段はありません。私とローゼさんが最適なのです」



 イーリスの判断は正しい。しかし、兄は私のことを心配しているのである。



 「お兄様、一刻を争う状況です。ここは私たちに任せてください」



 私の覚悟を決めた眼差しに兄は小さく頷いて、ドナーと一緒に王城へ向かった。



 

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