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第46話 王都に忍び寄る魔の手

 「申し訳ありません」


 ローゼは深く頭を下げる。


 

 「ローゼ、気にしなくても良いのよ。この呪いはかなり強力なの」


 

 ゲームでは、私を束縛する呪いのアイテムは2年間で効果が消えるか、もしくは、光もどき魔法で解呪できる。しかし、リアルでは光もどき魔法では解呪できず、2年経過した今でも呪いは解かれない。そこで、最後の希望が聖女の光魔法であった。



 「リーリエさんはいったいどのような呪いにかかっているのでしょうか?」



 ローゼは顔をゆがませながら悔しい気持ちを抑えながら問う。



 「実は占い館【フルーフ】へ訪れた時に恋愛が成就するリングとブレスレットをもらったの。そのリングとブレスレットを身に着けた途端、全身の力が抜け落ちて魔法まで使えなくなったのよ」



 私は理由や過程は嘘をつき、結果だけ真実を述べる。



 「光魔法と光もどき魔法は、デバフバフ効果を確認する力も備わっています。もし対象者がデバフバフ効果を使用していれば、黒いもやが体を覆いデバフバフ状態だとわかります。しかし、リーリエさんには黒いもやが発生していません。今の私の力では呪いにかかっていることさえもわからない状態です」



 私にかけられた呪いはかなり強力な呪いだと証明されたことになる。今の私は戦力でみんなに貢献することはできないが、ゲームの知識でなら貢献できるので、私は私のできることをがんばるしかない。



 「呪いにかかっている状態でも普段の生活は問題ないわ。戦力的には貢献できないけど知識の面で協力するわね」



 唯一の希望であったローゼでも私の呪いは解除できなかったが悔やんでいる場合ではない。今はフラムの行方、そしてヘスリッヒとロベリアの動向が最優先である。フラムはいったいどこへ消えたのか?ヘスリッヒは王都を占拠するまでに勢力を拡大しているのか?ロベリアは今どこにいるのか?解決しなければいけない問題は山積みである。



 「お願いします。私もできるだけの協力は致します」



 ローゼは深入りしない。いろいろと私に聞きたいこともあるだろう。しかし、それは詮索するものでなく、私自ら話したいと思った時を待つのがベストであるからと知っているからである。自分の感情や欲求を満たすために相手の心に土足で入るような野暮なことはせずに、相手を思いやる気持ちのある女性だ。



 「ローゼ、夕食を済ませましょ」



 占い館【フルーフ】に向かうまでにはまだ時間はあるので、夕食をとるために寮内の食堂へむかった。




 時刻は20時になる。



 「どうなっているのだ」



 第一声の小さな声をあげたのは兄であった。私たちが物陰に隠れて占い館【フルーフ】を監視していると、10名ほどの王都民が占い館【フルーフ】の扉の前に行列を作り出す。20時になる頃には20名ほどの王都民が並ぶこととなった。



 「いったいこれから何が始まるのだ」



 ドナーは顔を真っ青にして不吉な予感が体を襲う。



 「君たち、私の情報を信じて張り込みをしてくれたのだな」



 急に白髪交じりの老人がドナーに声をかける。



 「あなたは……夕方に会った方ですね」



 この老人はドナーに情報を提供してくれた老人であった。



 「ここ数か月でこの辺りの景色は様変わりしてしまった。全て占い館【フルーフ】が原因だと私は思っている」

 「どういうことだ」



 ドナーは興奮を抑えながら冷静を保つようにゆっくりと問いかける。



 「半年程前から心を安らかにしてくれる効果のある聖女の香が、エンデデアヴェルトから流入するようになったのだ。最初は無料で提供されていたが、怪しいアイテムなので誰も手を出さなかった。しかし、妻に先立たれた男性が悲しみを紛らわせるために使用すると効果は絶大で、一人また一人と聖女の香の虜になってしまった。今では聖女の香よりもさらに効果がある聖女の香ストロングを求めて、占い館【フルーフ】へ訪れるようになっている」

 「衛兵には通報したのか」



 予想外の出来事にドナーは興奮を抑えることができずに大声で怒鳴りつける。



 「もちろん、何度も通報はした。しかし、一度も衛兵は調査には来てくれなかった」

 「衛兵もグルなのですね」



 私は確信を突く。



 「そう感じている。王都は徐々に聖女の香によって支配されている。いずれ大きな厄災が訪れるだろう」



 ゲームでも聖女の香と呼ばれる傀儡の香が王都で蔓延して、ヘスリッヒが王都へ進行する際には、傀儡の香を服用し続けた住人が傀儡兵としてヘスリッヒの手助けをして王都は陥落する。



 「まさか、フラムの行方を追っていたらとんでもない事件に巻き込まれたな……」



 兄は事態の深刻さに顔が強張り驚愕した。


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