第43話 メアリーとマーリア
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私はメアリーと話をしているうちにある類似イベントを思い出した。それはドナーがエンデデアヴェルトから戻って来ない事に危機を感じた【judgment of justice】から、ドナーの捜索を依頼されたイベントである。依頼を受けた私はハーレムパーティーを引き連れて、エンデデアヴェルトへ向かうことになる。エンデデアヴェルトに到着すると住人の大半は心を持たないボットのように表情がなく、淡々と与えられた業務を遂行していた。ゲームなら当然だと思うかもしれないが、ゲームとはボットに魂を与えて、まるで生きているように表現するものである。あきらかにエンデデアヴェルトの大半の住人は無感情で淡々と業務をこなすボットとして演出されていた。
リアルのエンデデアヴェルトは、立ち入りができないほどの状況に陥っているようだが、ゲームでは立ち入りは禁止されていない。これはリアルのがゲームよりも悪化の進行が早いと判断できる。簡単にエンデデアヴェルトに潜入できた私たちはドナーが拠点として利用していた宿屋に向かう。
宿屋に到着した私たちは直ぐにドナーについて聞き取り調査をしたが誰もドナーの存在を知らない。ドナーは潜入捜査をしていたので、目立つ活動はしていないと思われるので当然なのかもしれない。すると調査に行き詰った私たちの元に1人の少女が声をかける。
「お母さんを知りませんか」
身長は110㎝ほどの6歳くらいのみすぼらしい服を着た女の子が、赤髪の綺麗な女性の写真を見せて母親を探していると声をかけてきた。
私は直ぐにはこのイベントを思いつかなかった。それはこのイベントが王都ではなくエンデデアヴェルトでのイベントだったからである。少女の名前は マリーア、母親の行方を捜していた。私たちはドナーの捜索を優先するかマリーアの母親を捜索するのか2択を迫られる。ここで、ドナーの捜索を優先すると捜査に行き詰まり、ヘスリッヒの悪行を見抜けずに王都へ戻ることとなる。その結果、エンデデアヴェルトは完全にヘスリッヒに支配されて、その後多くの傀儡兵を引き連れたヘスリッヒが王都に攻め入り王都は陥落してバットエンドを迎える。
一方マリーアの母の捜索を優先すると、終焉教の実態を知ることとなり、ドナーに関する情報やとある秘密アイテムを入手する場所を教えてもらってヘスリッヒを打ち倒すこととなる。
エンデデアヴェルトでは少女との出会いが命運を分けることになる。このゲームの結果を踏まえて、私はメアリーの言葉を信じることが、フラム捜索の糸口になると自信を持って言えるのであった。
「お兄様、メアリーが勘違いしているとは思えません」
私は揺るぎない意志で兄に断言する。
「わかった。だが、メアリーの言っていることが勘違いではないのなら、どういう意味を示しているのだ」
王都で夜中に営業している魔法具店は存在しない。それならメアリーの父親はどこへ行っていたのだろう。そもそもメアリーの父親は、なぜ頻繁に魔法具店へ出かける必要があったのか?もちろん、その答えもゲームの知識で導くことができる。
エンデデアヴェルトでのマーリアとの対話の中でも同じように父親の話になる。マーリアの父親も夜中に家を抜け出して魔法具店に出かけていた。しかし、エンデデアヴェルトの魔法具店も夜中に営業はしていない。私たちはその秘密を探るためにエンデデアヴェルトで聞き込み調査を開始して、1つだけ取るに足らない情報を得ることとなる。それは、白髪混じりのお年寄りが話してくれたのである。私が宿を取った宿屋の隣にある潰れたお店が夜中に明かりが灯っていたとう情報であった。それ以外は全く情報を得ることができなかった私たちは、すがるように老人の情報に期待を込めて、その日の夜に潰れたお店を見張ることにした。すると、そのお店には私たちが聞き込みをした人々が次々と潰れたお店に訪れていたのである。しばらくして、店から出てきた人々は両手に白い袋を持ち自宅に戻って行く。その様子を不思議そうな顔をして見ていた私たちにとある人物が声をかける。
「この町の住人はヘスリッヒがばら撒く聖女の香によって支配されている。聖女の香を吸うと不安や悩みなどが解消されて、とても気持ち良い気分になるのだが、1度吸引すると中毒性が高く、2度と手放すことができずに聖女の香を求めて裏魔法具店へ訪れることになるのだ。あの裏魔法具店で販売されている聖女の香ストロングは、聖女の香の10倍の効き目があり、あれに手を出したら一生ヘスリッヒの奴隷になるだろう」
私たちに声をかけたのは昼間に出会った白髪交じりの老人だった。
「どうして、昼間に教えてくれなかったのでしょうか」
「君たちが信じるに値する人物かたしかめたかったのだ」
私たちは老人に試されていた。
「合格で良いのですね」
「あぁ。お前たちはヘスリッヒの手の者ではなかったようだ」
老人は私たちがヘスリッヒの手の者ではないかと疑っていた。
「君たちに話したいことがある。ワシの家に来ないか」
老人は真剣な眼差しで何かを訴えるように話す。
「……わかりました」
迂闊に老人を信じるのは危険かもしれないが、真剣な老人の眼差しには嘘の気配は感じ取れず、信頼に値すると判断して、老人の家へ行くことにした。