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第41話 ロベリア対策

 

 ドナーはなぜ1人で占い館【フルーフ】に向かうつもりだったのか?ドナーは1人でも問題ないと判断したからだろうか、いや私は違うと思う。その理由はとても簡単だ。それはゲームの調整力であろう。ゲームでは、ドナーは1人でエンデデアヴェルトへ潜入捜査をして命を落とすことになる。それに対してリアルでは1人で占い館【フルーフ】へ潜入捜査をして命を落とすことになる調整力が働いたと思われる。このゲームの調整力を止めることができるのは私だけだ。リアルの歴史を変えたのは私であり、リアルの歴史を変えることができるのも私である。私は必ずドナーの命を救ってみせる。


 私は思い重責を背負いながら、2年前に訪れた占い館【フルーフ】に訪れた。



 「ここが、占い館【フルーフ】です」



 私の目の前には、2年前に訪れた黒のレンガで作られた怪しい二等辺三角形の建物が立っている。2年前と違うのはベニヤ板が扉に打ち付けられていて、中へ入ることができなくなっていることくらいであった。



 「リーリエの言った通り閉店しているようだな」

 「間違いない……」



 手掛かりを無くしたドナーは思いつめた表情で俯いていた。しかし、店が潰れていることは既に私が確認済みだ。これで捜査が終了になるとは思えない。



 「ドナーさん、少し聞き込みをしてみませんか?何かしら情報を得ることができるかもしれません。それに、この建物には違和感を感じるのです」



 落胆したドナーとは違いローゼは冷静に建物を観察していた。



 「ローゼ、どういうことかしら」

 「閉店した店にしては建物が綺麗に感じます。本当に閉店しているのか聞き込みをした方が良いと思ったのです」



 たしかにローゼの指摘通りである。ベニヤ板が打ち付けられた扉には埃や汚れもない。それは建物全体にもあてはまることであった。私は一気に緊張感がほとばしる。ここはあのロベリアの住処。まだ、ロベリアがこの建物に居るとすれば、憎悪の種を集めているはずだ。残念ながら私の思いはロベリアには届かなかったのかもしれない。



 「リーリエさん、大丈夫でしょうか?少し顔色が悪いと思います」

 


 私は占い館【フルーフ】が閉店して喜んでいた。私の思いがロベリアに届いて改心してくれたと思い込んでいたからである。しかし、ロベリアがまだ占い館【フルーフ】に居るとすれば、序盤の大イベントが起こる可能性は高いと考えた方が良いだろう。そう思うと私は顔が真っ青になっていたのである。



 「大丈夫よローゼ。すこし気分が悪くなったけど問題ないわ」

 「皆さん、すこしお茶をして作戦を立て直してみませんか」



 イーリスは私とドナーの様子を見て心の休憩を提案する。



 「それは良い案だ」



 兄は私の体を気遣って一番に返答する。



 「私もその方が良いと思います」



 ローゼも賛同する。



 「そうだな」

 「わかりました」



 私とドナーも休憩を受け入れて近くのカフェに入る。



 「私が隠蔽魔法を使います」



 周りの客に話の内容が聞こえないようにイーリスが隠蔽魔法を使う。



 「これで何を話しても問題はありません」

 「よし、まずはこれからどうするかだ。俺はローゼ嬢の提案通りに聞き込みをするのが一番妥当だと思う」



 いの一番で兄が声をあげる。



 「私も賛成です。フラムの手掛かりが占い館【フルーフ】にあるのならば、徹底的に調べることが重要です」

 「……そうだな。シュバインが頻繁に出入りしていた占い館【フルーフ】にフラムの手掛かりが絶対にあるはずだ」



 ドナーは俯いた顔をあげてやる気を取り戻した。ドナーはシュバインが学院を抜け出して、頻繁に占い館【フルーフ】へ通っていたとの情報を入手していた。フラム行方不明事件にはシュバインが絡んでいる可能性は高い。ドナーはあらゆる可能性を精査して調べ上げ最後に残された場所が占い館【フルーフ】だった。だからこそ、占い館【フルーフ】が本当に閉店していたのでショックを隠せずにいた。一方私はロベリアのことを話すべきか考えていた。ロベリアは私にとっては序盤の難敵であるが、ローゼには雑魚扱いされた小物と言っても過言ではない。ゲームでローゼを戦闘で苦しめる相手などいない。それはリアルの世界でも同様かもしれない。マルスの傀儡化も簡単に解除し、シュバインの魅惑の香も容易く無効化した。この世界の主役はローゼで間違いないだろう。しかし、私の助言があってこそローゼの力を最大限に発揮できることも事実である。



「私も異論はありません。ただ占い館【フルーフ】の店主ロベリアは相手の心を読み解く不思議な力を持っていますので、そのことを肝に銘じてください」



 ロベリアの危険性は伝えるべきだと判断した。



「ほほう、その力を使って占いをしているのか」

「はい、お兄様。相手の心を読むことができるので、戦闘になれば勝ち目はありません」



 兄は私の言葉を疑うことなく素直に受け入れる。



 「それは私の光もどきの加護では防げないのでしょうか」



 イーリスは直ぐに対策を考える。



 「ローゼなら大丈夫だと思いますが、イーリスさんでは難しいと思われます」



 ゲームではロベリアとイーリスが対峙することはない。だから正解はわからないので、念のために注意した方が良いだろう。



 「わかりました。もし、ロベリアさんに出くわすことがあればローゼさんに対処してもらいましょう」

 「はい。私が責任をもって対処させていただきます」



 ローゼは気持ちよく引き受けてくれた。



 「2人共落ち着いたようだな。そろそろ聞き込みに行こう」

 


 兄は私とドナーの表情が軽くなったのに気付き、柔らかい笑みを浮かべて声をかける。



 「よし、行こう」

 「問題ありません」



 私たちはカフェでの休憩を経て聞き込み調査に出向くのであった。

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