第118話 祠の呪い
「リーリエさん、目の前にいますよ」
「え!どこに居るのですか」
私はあたりを見渡すが誰もいない。
「リーリエさん、祠の下を見てください」
私はローゼが指さす方を見た。するとミミズほどの大きさの蛇がいた。
「え!これが虹蛇なの」
たしかにミミズは不気味な虹色をしていた。
「普段の虹蛇様はこのような姿をしているのです」
「そうですよ!あたいが虹蛇よ」
「えぇ~~~~~~~。虹蛇が喋ったぁ~」
私は驚いて腰を抜かすが、よくよく考えるとゲームでも虹蛇は会話をしていた。
「ロベリッチ、この子たちは誰なのかしら」
虹蛇は親しげにロベリアへ問いかける。
「この方たちは私と共に終焉の魔女を退治しに行く仲間です」
ロベリアは真実を述べる。
「そうなのね。で?どうして、終焉の魔女を退治するのにここへ訪れたのかしら」
「それは私にはわかりません。リーリエさん、お答えできるのでしょうか」
ロベリアと虹蛇は私を見る。
「私は光の宝玉を探しているのです」
私は包み隠さず話す。
「……」
虹蛇は小さな目をギョロリとさせるとみるみると体が大きくなる。気付くと空を覆い隠すほどの大きな大蛇へと変貌した。
「あたいを殺しに来たのだな」
先ほどまでの可愛らしい虹蛇の声がだみ声に変わり、赤く充血した大きな目で私を睨みつける。
「私は光の宝玉が欲しいだけなのです。決して虹蛇様を殺しに来たのではありません」
ゲームでは虹蛇を倒さないと光の宝玉は手に入らない。しかし、戦わずに入手することができるならそれにこしたことはない。
「光の宝玉とはあたいの左の目のことよ。戦わずにどうやって手にするつもりなのかしら」
虹蛇の左の目が金色に輝きだした。虹蛇の左目が光の宝玉で間違いないだろう。
「リーリエさん、大丈夫ですか」
私は虹蛇の光り輝く目を見て恐怖で腰を抜かした。
「だ……大丈夫よ」
ローゼは私に手を差し出してくれた。私はその手を握って立ち上がる。
「虹蛇様、光の宝玉は諦め……」
空を覆い隠すほどの巨大な大蛇である虹蛇と戦うなど無謀である。私は光の宝玉を手に入れることを諦めると虹蛇へ告げようとした時にローゼが声を発した。
「ちょっと待って下さいリーリエさん」
ローゼは私の言葉を遮る。
「虹蛇様、私たちに力をお貸しください」
ローゼは力強い目をして虹蛇に問う。
「あたいに目のよこせと言うのかい」
「違います。一緒に来て欲しいのです」
ローゼの作戦は的を射ている。虹蛇を一緒に連れて行けば光の宝玉の役割を担ってくれるかもしれない。
「そうよ。それだわ!虹蛇様、私と一緒に終焉の魔女を倒しましょう」
「おもしろいことを言うのね。でも、それはできないわ。だってあたいはこの祠から離れることができないのよ」
ゲームでは光の宝玉の番人である虹蛇と終焉の魔女の関係性は明らかにされていない。
「それはどういうことなのでしょうか?」
私は虹蛇に問う。
「あたいはこの祠に閉じ込められているのよ。だからここから出ることはできないのよ」
「リーリエさん、私に封印を解かせてもらえないでしょうか」
ローゼは覚悟を決めた真剣な顔で答える。
「ローゼ、任せるわ」
光魔法を使うローゼなら闇魔法の呪いを解除できる可能性は高いだろう。
「見事に封印を解くことができれば一緒に終焉の魔女を退治することを誓うわ」
虹蛇は大きな体を収縮させてミミズの大きさに戻る。
「ローゼ、頑張ってね」
「任せてください」
ローゼは私に頼られて嬉しそうに笑みを浮かべ祠を隅々まで調べ出す。ローゼが祠を調べて2時間ほどが経過した。
「まだ時間がかかるようね」
「そのようです。本当に封印を解くことができるのでしょうか?」
ロベリアと虹蛇は仲良さそうに話をしている。一方私は不安でずっとローゼの背中を見ていた。
「ローゼ、私に手伝えることはあるかしら」
私は何度も声をかけた。
「大丈夫です。私は図書館で呪いの勉強をしたので問題ありません」
ローゼは優等生である。授業はもちろんのこと時間があると図書館で勉強をしていた。もちろん、私も聖騎士を目指すため剣の鍛錬を忘れたことはない。ローゼは虹蛇の呪いを解くのは自分の役割と判断して1人で解呪に向き合っているのであった。