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第11話 ローゼのイベント【リーリエ視点】

 私はローゼが聖女になるルートへ導かなければいけない。余計なお世話だと思われるかもしれないけれども、ゲームでのローゼはバトルではイージーモード設定になるのだが、ストーリーでは様々な分岐点が用意されていて、分岐点を間違えると破滅ルートに陥る可能性がある。私がフォルモーント王立学院でやるべきことは1つだけ、ローゼが間違ったルートを選択しないように導くことだ。

 ゲームを始めて最初に訪れる重要な分岐点、それが入学式である。14歳の時、聖女の仮認定を受けたローゼは王国中に名を轟かせることになる。しかし、平民であるローゼが聖女の仮認定を受けたことに快く思っていない貴族は多くいた。そのため、フォルモーント王立学院に入学したローゼを妬む者も多く、幾度か嫌がらせを受けることになる。このイベントはローゼの運命を決める最初の重要な分岐点である。この分岐点を間違えると、嫌がらせを越えたどぎついイジメが発生し、イジメによる心労によりローゼは聖女になるのを諦めて村に帰り、復活した魔王によって国が滅んでしまう破滅ルートになる。


 私はイベントが発生する中庭に身を潜めて、ローゼが登場するのを心を躍らせながら待っていた。私の推しはリーリエでなくローゼである。ローゼはゲームキャラの人気ランキングで、ぶっちぎりの1位を獲得するほどの完璧のビジュアルを誇っている。もちろんビジュアルだけでなく、心優しい性格と愛くるし仕草など欠点がない。それに比べてリーリエは、人気ランキング6位と主役なのに微妙な位置にいた。

 ゲームの推しであるローゼを実際に見ることが出来るなんて、こんなにも嬉しいことなどないだろう。そんな憧れの存在が目の前にいる。私は今すぐにでも飛び出したい気持ちを抑えてローゼのイベントを見守ることにした。



 フラム・グローサーベーア、彼がこのイベントの中心人物である。彼は煉獄の魔法使いと呼ばれる天才魔法士であり、ローゼのハーレムパーティーへ所属することになるヒーローの1人でもある。フラムは聖女の仮認定を受けたローゼに疑念を抱いていた。母親を癌から救った話は本当に聖女としての力なのか、それとも偶然治癒した可能性もあるし、狂言なのかもしれない。今までに私利私欲を満たすために偽聖女は何度も誕生していた。フラムはローゼが本当に聖女として()および()()があるのか、自分の目で確かめるためにある事件を起こす。

 それが、入学式に向かうローゼへの嫌がらせである。グローサーベーア家傘下の貴族を使って、ローゼに軽い嫌がらせをして、聖女としての()および()()を問うつもりでいた。フラムは傘下の貴族を使い入学式へ向かうローゼに因縁をつけて、大講堂近くの中庭に誘い出し、花壇へ突き飛ばして服を汚させる。聖女とは最優先に他者を救い、尚且つ私利私欲のために魔法を使ってはいけない。フラムはここで聖女としての力と資質を問う。もし、聖女としての力と資質があるのなら、自分の汚れた服よりも先に押しつぶされた花壇の花に光魔法を使わなければいけない。花壇の花を無視して自分の服だけを綺麗にするなど論外であり、聖女としての力を認めても資質はないと判断するつもりであった。


 フラムに命令された貴族は、感情をむき出しにして命令以上の行為をすることになる。ローゼを花壇に突き落とすだけでは負の感情を抑えきれず、花壇の土まで投げつけてローゼを土まみれにしてしまった。フラムは行き過ぎた行為をした貴族を見て、自分が愚かな策を立てたことに激しく後悔する。すぐにローゼに救いの手を差し伸べたかったが、いまさら傘下の貴族を責めることはできなかったので、事の成り行きを見守るしかなかった。

 貴族達が去った後、土まみれになったローゼのとった行動は、フラムが想像した以上に真の聖女の姿であった。聖女は私利私欲のために魔法を使ってはいけない。フラムの解釈では貴族の過剰な嫌がらせで土まみれになった服を綺麗にするのは私利私欲ではないと判断した。ローゼは真っ先に花壇の花を再生したが、土まみれの服を魔法を使って綺麗にすることはしなかった。このローゼの全ての行動に一切の迷いはなく、まさに聖女としての資質を感じざる得なかったのである。それに対して自分がした行為はあまりにも幼稚であり、悪い貴族の紋切り型であることにフラムは気付かされる。自分の愚かさに気付かされたフラムは、同時に心優しい気持ちを持つローゼに恋をする。


 フラムはフォルモーント王立学院を抜け出して体を洗いに行くローゼを全力で止めに入る。自分がした愚かな行為でローゼを退学処分にさせるわけにはいかない。そして、ローゼに懺悔の証として、姉の部屋のシャワーを貸してあげて制服をプレゼントすることにした。


 ここでローゼの分岐点が発生する。もし、フラムの申し受けをYESと選択するとローゼに過酷な運命が待ち受けている。フラム・グローサーベーアは5大貴族の1人であり、フォルモーント王立学院のイケメン四天王と呼ばれる女性に大人気の生徒である。才色兼備、大金持ち、由緒ある家名と非の打ち所がない物件なのでモテるのは当然だ。そんなモテ男から制服を貰ったローゼは、フラムファンから嫉妬の怒りをかい、ローゼが制服を盗んだと嘘の噂を吹聴される。もちろん、フラムはこの噂を否定してローゼにプレゼントをしたことを打ち明けるが、フラムファンはローゼをかばう為の嘘だと噂を流して、さらにローゼへの嫌がらせが悪化することになる。ローゼは度重なる嫌がらせに心を病んでしまい、自主退学の道を進む破滅ルートに陥るのであった。


 私はフラムが左膝を付いて頭を下げる姿を見て目が点になる。ゲームではそのようなシーンはなかったからである。このまま放置をしていれば、ローゼが制服を受け取ってしまう可能性がある。それはローゼにとって、いやこの世界にとっての破滅ルートになる。このまま話を進めるのは危険と判断した私は、イベントを強制的に終わらせるために割って入ったのであった。

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