始まり
ほぼ小説初心者ですので、アドバイスありましたら是非ともお願いします。
俺の名前は上河 隼人、今年で15歳になるはずだったのだが
どうやら交通事故か何かで死んでしまったらしい。
最後に見た景色は…そうだ、たくさんのスマートフォンが俺に向けられていたんだ。最後の最後で有名人になった気分を味わえたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。
だがなぜだ、痛みは気づけば引いていた。
あれだけ冷たいコンクリートの地面がとても柔らかく心地よく感じるのは、何の雑音もなくただたださわやかな風の音だけが耳をとおして俺をリラックスさせているのは。
ゆっくりと瞼を開くと、最初に見えたのは生い茂る木々と隙間から差し込む日の光だった。
両腕はある。足も折れてない。
俺はその心地よさからもうひと眠りしたいという衝動に駆られたが、我慢して立ち上がる。
あたりはほとんど草木に囲まれていて、すぐ後ろには少し大きな池があるだけだ。
これは間違いなく異世界転生だ。
さて、スキルを見よう。
「ステータス!……」
あれ?掛け声が違うのか?
まあそれはおいおいやっていくか。
さて、まずは町でも探さないと、ここにいても何も始まらない。
とはいえこの森の中、どこへ進めばいいのだろう。
だんだんと不安になってきた。このまま何のあてもなく森を彷徨い飢え死になんてことも…
ガサ…
ん?今森の中で何か動いた音が…
警戒してすぐにしゃがみ込むがさがさとまた音を立てて俺のいる方向に近づいている。
しかし俺は焦らなかった。たとえ森の中といえども
近づいてくるその子が木々の隙間から見えて、なんなのかがわかっていたからだ。
彼女が俺の目の前まで来ると、彼女と完全に目が合った。
人間だということはわかっていたが、まさかこんな小さな女の子だとは。
大体13歳くらいだろうか?彼女はきれいな赤髪をしていて、真ん丸な紫の瞳で俺を見つめていた。
相手も俺の身なりを観察しているようで、全く動かない。
「…ああ、神ガヌル。」
彼女はそうつぶやいたと思いきや、地面にひざまずき、まるで俺に土下座しているような体制になる。
「おい、大丈夫か?どうしたんだ一体」
正直ジャージ一丁でみしらぬ森の奥にいる俺のほうが心配されるべきなのだが、彼女はそのままひざまずいて動かなくなってしまった。
「私にはもったいないお役目、必ず果たして見せます」
「お、おい泣いてるのか?」
上ずったようにそういう彼女の肩に手をやる。
「いえ」
そういって顔を上げた彼女は俺の顔をまたじっと見つめる。
「私は、アルミア、アルミア・フォン・ジーカといいます。」
「ああ、俺は上河 隼人っていうんだけど、」
ちょっと道に迷った、はダメか、この子の恰好からしてやっぱ中世っぽいし、この世界の人間じゃないとばれたらさっき言ってた宗教団体に惨殺とかされかねない。ん、そもそも日本じゃないのになぜ日本語なのだろうか。
「大丈夫ですよ。」
俺が発言を躊躇しているとジーカはさっきとは違う落ち着いた声でそう言った。
背の低さとあどけない顔とは裏腹に、受け答えは知的で発する言葉も博識さを感じる。
「ハヤト様は神の使いとしてこの地に参られたのですよね。説明なさらずとも、わたしはガヌルに使える身。当然の常識です。」
神の使い?ハヤト様?俺は神の使いなのか?
そういえば転生する際、未知との遭遇や神様や女神と話しすらなかったな、忘れているだけなのだろうか?
「よくわかんないけど、君の住んでるところまでついていってもいいかな?何が何だかわからなくて、とりあえず安全な所に行きたいんだ。」
「そうですね。ここはブラックベアの縄張りですから、急いで町まで戻りましょう」
「えぇ!そんな危ないところで一体何を…」
バシャ!!
唐突に木がものすごい音を立てて倒れるような音が鳴った。
すごく近くだ。
「走ってください!」
音に気を取られていた俺はジーカの声でハッとなる。
すぐに走り出すが、どんどんとその音が近づいてくるのがわかる。
まずいまずいっ!
一瞬振り返った木の隙間から見えちゃったよ!!!
!!!
「熊だああああああああああ!!!!」
森を走り抜けるジーカを必死で追いかける。
しかし熊から逃げ切れるはずはなく、もうすぐそこまで迫っていた。
「私が囮になります。その隙に逃げて下さい!」
走っていたジーカは急に立ち止まって枯葉を舞わせたかと思うと、今度は熊に向かって走り出した。
「ダメだ!!」とは言ったが足がすくんで追いかけることができない。
迫っている熊がとうとう追いつき、走っていたジーカを襲おうと立ちあがる。
立ちあがると、さっきの倍以上に大きく見える。
ジーカに何か力があるとは思えない。
俺はそう思ったとき、自然に足は動き出していた。
気づけば俺はジーカと熊の間に入り、熊の一撃をまともにくらっていた。
くらっているはずだった。
しかし、吹き飛んでおらず全く痛くもない。
グッと堪えた目をゆっくり開ける、そこにはまだ熊がいた。しかし、熊は驚いているのか硬直しており、
何故か俺の肩には熊の手が置かれていた。
「えっと、あの」
困ってジーカの方を見るが、ジーカも目を見開き驚いているので、誰もこの状況が理解できていないらしい。
突然
熊が俺の肩から前足を下ろし、何事もなかったかのように森の奥へ入って行ってしまう。
ポツンと取り残された俺は緊張が解けてその場にへたり込む。
怖すぎだ。一体何なんだ。
膝をついた俺にジーカが急いで駆け寄る。
「ありがとうございます!私めのようなものを守るために力を使ってくださって、この御恩は一生忘れません」
「馬鹿!何が御恩だ。君に命を守ってもらうほど、俺に価値はない。だから2度とあんな真似しないでくれ。」
膝をつきながら言ったのでかっこよさもクソもないが、これだけは言っておきたかった。
走り出した時、俺の頭には正義感と同時に苛立ちもあった。
こんな幼気な女の子が、俺なんかのために命を捨てる必要は絶対にないはずだからだ。
しかし、反省するでもなくジーカは俺を崇拝するような目で見つめ、今また跪いて泣き出していた。
やれやれ、この先どうなることやら