予測できない乱入ベイベ
流れるような動きに目をとられつつ、さっきまで一般人だった筈の私は本片手に幼なじみの乃木坂を見る。
いや、うん。
こいつも一般人だった筈なんだが。
デカミコを追い詰めている。
そして、私の影焔の中に…
「乃木坂!翔べ!」
「空を舞え!?」
瞬間、立ち上る炎。
乃木坂は…よかった、回避したみたい。
「…真矢良さ」
「いやあ、よかったねぇ」
「いや、だから、まや」
「私の魔法は世界一ィィィィ」
「…」
言葉?返させませんよ。
にやりと笑って、デカミコを見やる。
とりあえず大人しくなったみたい。焦げ臭い。
…あれ、これやばくね。
考えてもみろ。
此処は昼間の公園。
「…移動しよっか」
「…同意」
変身を解いて、乃木坂が言った。
「さて、何かある?」
「これまでのミコの名前からしてルカもいるんじゃね」
「…真矢良さん?話の腰を折らない!」
「ぁぃ」
いきなり話の腰をへし折ったのはとあるカラオケ店にて。
曲を入れて数秒。
流れだす軽快な音楽にマイクを取ったのは…
私でも乃木坂でもなく、笹原かなた《ささはらかなた》。
「…いや、イレギュラーすぎる人だとは思っていたが」
「いきなりカラオケに召喚されるとは…」
「しかも『参加者』とは…」
「ふふん。かなはイレギュラーに富んだ人物なのだよ!」
胸を張る笹原かなた。
…かなたさん、なにやってんですか。
彼女のミコはミク、リンと共に積ミコになってるレン。かわええ。
「私の心に雨が降る〜」
かなたの歌声が響く。
それはそれとして…
「都合よすぎない?」
「まあ怪しいわな」
ひそひそと囁く言葉。
「仲間にすべきか否か」
「まあ…いいえだな」
「じゃあ基本それで」
「あいよ」
小さな言葉は音楽にかき消された。
かなたがマイクを置く。
次は自分の番だ…
「今日も雨ー昨日も雨ー」
自分のあまり上手くない歌を背景に、会話を聞く。
乃木坂とかなたの会話。
なんだかあまり聞いたことのない会話だ。
「…で、手を組まない?最後には戦うけど」
「ん、後衛向きの能力だとそうなるよね…」
「笹原さんはどんな感じ?」
「前も後ろもイケるから一人でやろうかと思ってた頃」
「それなら…」
「んー、いいけど、もう一人いいよね?」
「あ、強制なのね…」
…まとまったようだ。
ちょうど歌も終わり、そろそろ店を出なければならない時間。
「ねぇ、真矢良」
「ん?」
「真矢良はさ、なして参加したん?」
寄る所があるから、と言う乃木坂と別れ、かなたと道を歩く。
問い掛けには多少考えた。ミクもレンも黙って聞いている。
「ミクの声が聞きたかった、かな?他にもあるけどあんたならすぐわかるだろ?」
「こンのファンタジーオタク!」
「アハアハアッハッハー☆」
軽く笑って手を振る。
かなたの家はすぐそこだ。
「じゃ、また夏休みに」
「…ん」