ミコミコミク!
頭痛がする。
まず、彼女達は私とは合わない。
なのに、私に近付いてくる。
何故だ。
向こうも解っている筈。
私が貴女と合わないことを、解っている筈だ。
頭痛がする。
授業中は静かにする、なんて今更だ。
小学生レベルの注意を受けろというのか、高校生に。
その位も出来ないクラスメイトには心底絶望する。
勘弁してくれ。
頭痛がする。
学校ってどんなところだった?
少なくとも化粧をしたり煙草を吸ったりするところではない。
それとも、私の認識が古いのだろうか。
いや、それは無いだろう。
先生は頑張っている。
頭痛がする。
頭痛がする。
頭痛がする。
そんな私は漫画研究部。
活動の時間が癒し。
大騒ぎで、部長を弄り、絵を描き、絵を見る。
それが終わった後。
帰り道での、出来事。
その日は雨で、外も真っ暗。
聞けば、雷も鳴っていたという。
それに気付かない私はある意味凄い。
地下鉄と、バスと、徒歩。
それが私の通学手段だ。
家の前まで来て、ふと足を止める。
マンションの最上階、左側。
私の家の前に、何かが蹲っている。
それはボールにしてはやわらかそうで、兎の耳が生えている。
しかも両手におさまる程度の大きさ。
かといって、兎でもない。
奇妙な生物がそこにいた。
その兎玉は、どうやらお腹が空いているようだった。何を食べるのかわからなかったからとりあえずなんかあげよう。
そう思った私は、家の中に入れようと兎玉を抱き上げようとして…
あ、そうだった。
私動物駄目じゃん。
握り潰してしまいそうたから。
…とりあえず、撫でてみる。
すると、その兎はあっという間に元気を取り戻し、私の頭の上に乗っかった。
思えば、これが間違いだったのかもしれない。
何の、かって?
それは、この話を聞いていればわかるから。
じゃあ、続きを話そうか。
とりあえず家の中に入れて、母に事情を説明。
可愛いから問題ないらしい。
どんな家庭だ、とか思うが、これがうちのいいところだ。
さて、夕食まで時間がある。
それまでにこの兎玉と意志疎通を図らないと…
着替えた私はとりあえず某有名携帯ゲーム機を取り出し、お絵描きツールを起動させる。
兎玉にペンを持たせると、この画面で自己紹介してみて、と言った。
兎玉は一瞬考えて、画面にペンを走らせる。
意外に達筆。
それによると、兎玉の種族は「ミコ」、
固体名は「0039」というらしい。
ミコって何?
それについても説明してくれた。
なんでも、「世界の礎、大黒柱の『神子』を決める戦いにおいての参加パス兼ナビゲーター」らしい。
だからミコか。
参加者が見つかればリミッターが解除されて、喋る事が出来るのだという。
何処かで聞いたような話だな。
大黒柱イコール精霊の王、とか。ね。
私にも参加資格があるらしい。
するか否か?
答えは…
うーむ、明日から金色週間だし。
祖母の家に行く用事もある。
…夏休みまでは特に何もないから大丈夫、というミコさんの言葉で。
参加することにした。
とりあえず、兎玉はミクと呼ぶことにしよう。
さて次の日。
完全なるお休みにつきミクにいろいろと聞く。
今度はパソコンで。
ミクが高機能お絵描きソフト(5000円程度)にペンタブを走らせる。
いろんな事を知った。
その戦いの名は
「地球救済計画(コードネーム:Earth)」
参加者には一つの武器が支給されるらしい。
本人と繋がりの深いものが武器になるようだ。
武器を呼び出すコマンドは…
「Earth of Beat!」
…らしい。地球の鼓動?
で、武器を呼び出すと服も戦闘服になるみたい。
そんなのが私にもある訳だが…後で試してみよう。
で、参加者は全員がミクのような「ミコ」を持っているらしい。
ミコは高機能な連絡用ツールで、主催者からの連絡なんかはミコから入る。
ついでに、参加者は全員高校生らしい…
うわぁ、幽霊と一緒にゴミを木に変える感じ?
そんな事を書き終わって、ミクは此方を見やる。
そういえば伝えていなかった。
参加する旨を伝えると、ミクは跳ねて喜んだ。
参加手続きがあるから、とミクはペンタブを走らせる。
まず、最寄りの人気のない公園に行ってほしいとのこと。
お昼も食べたし、それなら山名公園にいこう。
山名公園は広く、遊具も豊富な公園だ。
そこに着いた途端、激しい殺気…と言うのだろうか。
威圧感みたいなモノを感じた。
でも、公園には誰もいない。
気のせいとタカをくくって、公園へ足を踏み入れた。
ミクが指し示した方向に進むとジャングルジムがあった。
その上を指し示したということは、上ればいいのだろうか。
低いジャングルジムの頂点に座って、ミクを頭の上から膝に降ろす。
頭の上が気に入ったんだろうか、目が覚めたら乗っていた。
なにやら不可解な単語を繰り返し、空から降ってきた何かを私へ差し出す。
恐らくは参加証…星型のそれは私が手を触れると神秘的なブルーに輝いた。
「これで…キミは参加者」
星は手に巻き付き、手首に蔓と星の紋様を描きだす。
鮮やかな青色のそれは輝きをなくすと共に薄くなって消えた。
よかった、学校生活に影響はない。
「…ところでキミの名前まだ聞いてないんだけど」
ミクが聞いてくる。
そういえば言ってねぇな、と思いつつ。
「私の、名前は…」
一昨日行ったカラオケのせいで少し擦れた声で、私は私の名前を紡いだ。