第72話、俺たちとリヴァイアサンと記憶
これから俺はーーー
魔物として生きて行こうーーー
………ッ!?なんだ今のは!?
誰の記憶だ……?まさか……リヴァイアサン!?
「トカゲ野郎の動きが止まったぞ!!!コアはあと二つだ!!!」
「今がチャンスよ!畳みかけましょう!!!」
エレオノールさんとフィーの号令によって、皆がリヴァイアサンに近づいて行く。
その声に俺もハッと我に帰る。
「ガアアアアァァァァ!!!!」
リヴァイアサンは大きく身体を動かし、近づけまいと威嚇する。
近づいて来た身体を、フィー、ビリーさんが受け止める。
「今よ!!!」
エレオノールさんとセバスさんが飛び掛かる。
リヴァイアサンは空中に無数の水の刃を作り出す。それを一斉に二人目掛けて飛ばす。
「エレオノール様。私にお任せを」
「あぁ、頼むぞ、じぃ」
セバスさんの拳が魔力に包まれる。
次の瞬間、水の刃とセバスさんの拳が触れる。
魔法によって強化されたその拳は、刃を全て打ち壊す。
そして一瞬の隙を突いてセバスさんの背後からエレオノールさんが飛び出す。
「4つ目、貰っていくぞ!!!」
エレオノールさんの拳が、リヴァイアサンの左目にあるコアを砕く。
それと同時に、またリヴァイアサンの記憶が流れ出してくる。
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「うっし、あとはこいつの記憶をコアに封じるだけ……っと!!!よーし4つ目終わり!ちょっと休憩するか」
ダレダ………コイツハ………
「ククク…!それにしても魔王様には感謝だな〜!こーんな面白いオモチャを好きにしていいだなんてよー」
謎の男は、新しいオモチャを買ってもらった子どものようにはしゃぐ。
「……ウ…あ……」
なんとか力を振り絞り、声を出す。
「え!?おいおいおいおい!!ハッハッハー!お前すげぇなまだ意識あんのかよ!?」
そいつは今までで一番のキラキラした瞳でこちらを覗く。
「いやーそれにしてもよ、お前も馬鹿なやつだよな〜?魔物が人類殺さないでどうするつもりだったの??あのガキと旅出来るなんて本当に思ってたの?」
男が俺の顔を覗き込む。
「魔王様がいくら言っても聞かないお前に愛想尽かせて殺されそうになった時、お前、『運良く逃れた』、『運良く優しい人間がいる海岸に流れ着いた』とでも思ってたんだろ?」
何の話だ………
「ダーバッハー!!!魔王様から逃れるわけねぇだろ?生かされたのも、あのガキに会ったのも、ゼーンブ魔王様の作戦なんだよ!!!」
その男は腹を抑えて下品な声で嗤う。
「意識取り戻した努力に免じて、良いこと教えてやるよ」
そう言うと男は、俺の前に座る。
「その1、お前とあのガキをくっつける。
その2、いい感じのタイミングで村人にガキを殺させる。
そうするとあら不思議、人間に恨みを持つアホな魔物の完成〜!!!」
男は指を使って説明する。
「あの村は俺が何かに使えそうだから前から目をつけてたんだよ。悪かったな。なんつっても、魔物に対して優しい人間なんて激レアだからな」
「オマ……エ…ハ……ダレダ……」
「俺?俺は魔王様の側近の一人、ーーーだよ!つっても?どうせ?最後のコアにこの記憶も封じ込めるから意味ねぇけどな!ハッハッハー!!!」
男はコアを取り出し、リヴァイアサンの右目にチラつかせる。
「ほーらこれだよ。これをお前の目ん玉にぶち込めば、お前は記憶ゼーンブ無くして、人類を殺しまくる殺戮マシーンの完成だ〜!」
「ユル……サナ…イ」
「許さない?………クックックッ………フフフ………ハーハッハッ!!!あぁそうかよ!お前がこの記憶を思い出す頃にはボロッボロの身体で4つ目のコアを失ってんだよ!」
男はわざとらしく思い出したかのようなジェスチャーをする。
「あ、4つ目のコアが壊されたら身体が動かなくなる呪いかけておいたから。4つ目のコアが砕かれた時点で、お前が俺の事を思い出して、どれ程憎もうが、何も出来ずに、最後のコアを人間共に砕かれる。どうだ?最高のシナリオだろ???」
男は目の前でヒラヒラと踊る。
「よーし、じゃああばよ。アホな化け物さん」
コアが近づいてくる。目に触れ、次の瞬間、意識がなくなる。
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記憶はそこで途切れていた。が、しかし。今全てを思い出した。
トリトンは俺を魔物にする為に利用され、殺された。
あの男の名前だけはモヤがかかったように思い出せない。だか、魔王が関係していることに間違いはない。
それにしても、あの男の言うことは本当らしい。身体が動かない。
「ハァ…ハァ……おいトカゲ野郎。これで終わりだ」
エレオノールさんはリヴァイアサンの側で拳を握り込む。
そして、振り下ろす。
「待って下さい!!!!」
俺は声を上げる。
その瞬間、ピタッとエレオノールさんの動きが止まる。
「どうした、リン」
「待って下さい。リヴァイアサンと話したいことがあります」
「話す?魔物と?何を言っているんだリン」
「1分だけ、確認したいことがあります」
「良い。だか、リヴァイアサンが不審な行動をしたらすぐに殺す」
エレオノールさんに許可を貰い、リヴァイアサンの目の前に立つ。
「リヴァイアサン。答えて下さい。『トリトン』と言う名前に聞き覚えは?」
その名前を聞いた瞬間、リヴァイアサンは残った右目を大きく見開く。
「やっぱりそうなんですね。私に流れ込んできた記憶は、貴方の記憶。貴方は、魔王たちに騙されたんですね」
〈だとしたら、何だと言うのだ〉
「待て、リン。どう言うことだ」
俺はこれまでの事をみんなに説明する。
「なるほどな。何故こいつの記憶がリンに流れ込んだから知らないが、概ね理解した。だがしかし、こいつが俺の村を襲い、多くの人類を殺したことに変わりはない」
〈その男の言う通りだ。殺せ〉
「あぁ。そうするさ。皆、異論は無いな?」
アビィちゃんとマリアさんは迷っているようだ。
「仕方ないわ。放置するわけにもいかないもの」
フィーが諭す。
「リヴァイアサン。貴方は被害者でもあり、加害者でもあります。貴方のやったことは許されることではありません。ですが、貴方をこんな風にした人たちは必ず私たちが倒します」
〈ハハハ…面白い人間だな〉
リヴァイアサンは弱々しく笑う。
〈人類を殺した事を詫びるつもりはない。俺は魔物だからな〉
「そうか」
〈だが、最期に、俺をこんな風にした魔王に、一矢報いたい〉
「それは、どうやって?」
〈魔王の力についての情報だ。お前達に託す〉
「なッ!?それは有難いですが…」
〈構わん。その代わり、確実に魔王を殺せ〉
「……約束します」
〈よし。魔王の能力は〉




