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第59話、俺たちと騒ぎと筋肉

「セイ!ハァ!!」

ビーチにフィーの雄叫びが轟く。


俺たちは海辺で魔物と戦っている。


レベル上げという概念が存在するかは分からないが、戦闘の経験を積むのは悪い事ではないだろう。


「一回休みましょう」


フィーが素早くバックステップをして海辺から距離を取る。

ティナさんは弓を下ろし、アビィちゃんとマリアさんも魔法を解く。


「やっぱり、私1人っていうのは厳しいかもしれないわね」


「そうですね。本来フィーさんは守るよりも攻めることに長けていますからね」


「そうなのよね。誰かを守るスキルや魔法は持っていないから、今回みたいな防衛メインの戦闘だとティナの助けがあっても厳しいわ」


「やっぱりタンクが必要ですね……」

俺とフィーが2人で唸っているとティナさんが口を開く。


「いないもん探したって仕方ないでしょ。それよりジュースでも買いに行きましょ。暑くて倒れそうよ」

ティナさんは手で仰ぐ。


「そうですね。休憩しましょう」





商業施設の方へ向かう最中、フィーが何かに気付いたように立ち止まる。

「ん?何か騒ぎかしら」


フィーが見ている方向を見ると、海への立ち入りを禁じている兵士の近くに人集りが出来ている。


「行ってみましょう」



人集りに近づくにつれ、人々の声が明確になっていく。

「まだ海に行けないのかよ!!!」

「いつまで待たせんだ!!!」

「ホテル代返せよ!!!!」


どうやら、海に行けないことに不満を感じているらしい。


兵士は必死に宥めてはいるが、その効果は出ていないようだ。


「どちらにせよ、海は危険だし、説得を手伝いましょう」

フィーが人集りに近づこうとしたその時、フィーの足がピタッと止まる。


「フィーさん?どうかしましたか?」


「……………」


「フィーさん?大丈夫ですか?」


「こ、この気配………」


「!?

ティナさん!魔物の気配は!?」

急いでティナさんの方に振り返る。


「ん?いや?特に感じないけど?」

ティナさんはキョトンとした表情で答える。


「へ?」


「そんなもんじゃないわ……この気配は………」


「気配は?」


「この気配は………」


「(ごくり)」



















「筋肉の気配よ」


















「もう一度お願いします」







「筋肉の気配よ」






「あーやっぱり聞き間違いじゃないですよね」


「どんどん近付いてくるわ……!」


「ちょっとフィー!こんな時にふざけないでよ!!」


「ふざけないわ!!!私にはわかるわ。この気配、ただの筋肉じゃないわ」


なんだよただの筋肉じゃないって。筋肉は筋肉だろ。

呆れながら人集りの方を見ると、1人の男が人集りを掻い潜り、前に向かってくる。


あれがその筋肉だろうか。


男はどんどん前に近づいてくる。



えっ……



ちょっ……


これは確かにただの筋肉ではない。



最前列まできたその男は、とてつもない筋肉だった。しかしそれ以上に、その男はほぼ全裸だった。その……股間だけを隠すような下着?いや水着を着ている。

股間だけと言うのは比喩ではなく、本当にソレがあるところしか隠していない。ピッチピチのデザインだし……良くある謎の白い光が入りそうだ。



「注目」

男はそういうと人差し指を天に向け、人集りの前に立ちはだかる。



そして、


次の瞬間。












「フンッ!!!!」


ポージングを始めるのだった。


男は次々とポージングを取る。その場にいる全員が黙り、その姿を見る。


ひとしきりポージングを取った後、男は言う。


「皆、『遊びたい』、『騒ぎたい』という気持ちは痛いほど分かる。だが、今の海は危険だ。代わりと言ってはなんだが、俺の筋肉でも見て言ってくれ」


男は再びポージングを取る。







「へ、変態だー!!!」

人集りの誰かが叫ぶ。


「なんだこいつ!!やばいやつだよ!!!」

「逃げろー!!!」

「キャーー!!!」

それにつられて人々は逃げ出す。


兵士と、俺たちを除いて。


「罪な筋肉だ。俺の筋肉は………」



「(フィーさん、ポージングしないんですね?)」

フィーに小声で話しかける。


「(当たり前よ……あの圧力を前に動けなかったわ。凄まじい筋肉力〈きんにくぢから〉よ)」


なんなんだよ筋肉力〈きんにくぢから〉って。


「ん?君たち、最後まで俺の筋肉を見ていてくれたんだな。どうもありがとう。俺の筋肉も喜んでいる」

男は筋肉をプルプルさせながら言う。


「あと、そこの君。君とは同じものを感じる。バランス良く鍛えられている。それと、君はパンチをするのかい?肩と腕が特にキレている。あと、良い水着だ」

男はフィーに向かってポージングをしながら言う。



「ありがとう。貴方ほどの筋肉力を持つ人に言われるとはね。光栄よ」


「私と君など、大差ないさ。おっと、自己紹介が遅れたな。私は『ビリー』だ」



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