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第39話、俺たちと悪魔と開戦

「そろそろ17時ね」

壁にかかった時計を見ながらフィーが言う。




「エリックさん、動きました!」

見張りをしていたアビィちゃんが伝えてくれる。



「行きましょう」

そう言うとアビィちゃんとフィーは頷く。






「エリックさん、何処に行かれるんですか?」

教会の前の開けた場所で声をかける。



「ん?おや、リンさんでしたか。私は他の仕事を……」


「いつも17時過ぎになると教会から出て行くそうですね?17時半からシスターたちの祈祷があるのに良いんですか?」


「……少し忙しくて祈祷に参加する時間が無いんですよ」



「ふ〜ん?でもポーション作製の祈祷も、神様への感謝の祈祷も参加されないなんて、まるで祈祷を避けてるみたいじゃない?」



「……いえ、そんなことは」


その時、エリックの指から一滴の血が落ちる。



「あ、指から血が出てますよ?大丈夫ですか?」



「ん?あぁ、先程珈琲を飲んでいた時にカップが割れましてね。その時に切ったみたいです」


「そのままにするのは危ないですよ。あ、丁度小瓶サイズのポーションを持っているので差し上げますよ」


「い、いえ。大丈夫ですよこのくらい」


「そこに菌が入ったら危険です。ポーションを傷口にかけてあげますので、指を見せて下さい」



「ほ、本当に大丈夫ですから」


「あら、こんな若くて可愛い子に治して貰えるなんて良いことじゃない?何でそんなに避けるのかしら?」


「リンさんのこと、嫌いですか?」


「い、いえ、そうでは……」







「じゃあ、ポーションがお嫌いですか?」





「……………」




「そうそう、ずっと聞こうと思っていたんだけど、何で先代の跡継ぎが貴方なの?」



「それは……先代が指名して下さったので…」


「何故、貴方なの?」


「それは私がこの教会に長い間勤めていたからではないでしょうか」




「いいえ、違うわ。だって貴方がこの教会に来たのは精々3ヶ月前とかでしょう?」


「な、何をおっしゃるのですか!私はもっと昔からこの教会に……!他のシスターや国民の方にも聞いてみて下さい!!」



「そのシスターが教えてくれたのよ。『エリックさんが来たのは3ヶ月くらい前で、先代が病に伏したのも3ヶ月くらい前』だってね」


「そんなバカな!!!シスターが言うはずが……ハッ!?」

エリックの表情から余裕が消える。







「『シスターや国民は全員記憶を操作したはずなのに』って言いたいのかしら?」






「!!!」

エリックは大きく目を見開く。



「貴方が呪術を使って先代から意識を奪い、国民やシスターの記憶を弄ったのは分かっているのよ」



「…………………」



「エリックさん、貴方の目的は何ですか」




「……………………」



「フフフ………ハハハ……ハァーハッハッハ!!!」

突然エリックは嗤いだす。


「気付いていたのですか。それは残念。もう少し騙して、安心したところを背後からザクッとしてあげる予定だったのですが……」



「貴方は悪魔?それとも悪魔の手先?」



「私が悪魔の手先…ですか?ハッハッハ!!ご安心下さい私は悪魔ですとも!!!」


「私の名は『ダンタリオン』と申します。『籠絡の悪魔』とも言われていますが」



「籠絡の悪魔とはよく言ったものね……」


「ありがとうございます。御察しの通り、私は人を操るのが得意でしてね」


「おっと、それで私の目的でしたか?」


「単純な事ですよ。この国を滅ぼすように命令を受けたからです」



「誰に……?」


「それは尊きお方、魔の物の王、サタン様ですとも!!!」

「おっと、話し過ぎましたね。最後に貴女達の記憶も弄らせてもらいましょう」



「そうはさせません。貴方は、ここで倒します」



「おや、怖いですね。ですが残念ながら私は戦闘は不得意でしてね……困りました。皆様に飛び掛かってこられたらひとたまりもありません」


「そうです!代わりにこれと戦って頂きましょう!」

そう言うとダンタリオンは地面の土からティナさんにそっくりの人形と、アビィちゃんにそっくりな人形を創り出す。



「皆様にそっくりな人形を創ってみました」


「見た目が同じなだけで私たちが惑わされるとでも思ってるのかしら?」



「こんなにもそっくりならもしかしたらお仲間本人かもしれませんよ?ほら、よく見てください」




するとアビィちゃんが急に震えだす。

「………わたしが…もう1人…?あれ?じゃあわたしは……?偽物……?ニセモノ……ニセモノは…イらナイ?ワたしハ…イラナイ?」


「アビィちゃん!?アビィちゃん!!どうしたんですか!?」


「リン!どいて!!!」

「アビィ!!!惑わされちゃダメよ!!貴女は貴女!私たちの大切な仲間のアビィでしょう?」


「仲間………ッ!?わたしは一体……」


「これがあいつの呪術よ。意識を強く持つのよ」


「は、はい!」




「おやおや、あと少しで自分で自分の喉元を掻っ切ってくれると思ったのですが…残念」


「『ストレングス』!!!」


「フンッ!!」

フィーが人形2体を壊す。



「所詮は三流の呪術って事ね?」


「おや?この私の呪術が『三流』ですか?面白い事を言いますね」


「だってそうでしょう?私たちが知る由も無い情報を得られたのは何故かしら?」


「それは独自のルートか何かで……」


「いいえ違うわ。シスターに教えてもらったのよ」


「あり得ないですよ。シスター達には私の呪術が確実にかかっていますからね」



「ふーん?じゃあ夕食の時に言ったシスターの愚痴も私たちの作り話だと思っているのかしら?」



「当たり前です。あの時は少し動揺しましたが、よくよく考えればあり得ない事です」



「そう?なら、貴方の呪術でシスター達を呼び出して戦わせれば?どうせ最初からそのつもりだったのでしょう?」



「まさかそちらから提案して下さるとは!!!良いでしょう良いでしょう。そちらが望むならそうしてあげましょう」


「我が従者達よ、この者たちの相手をしろ」

男は手を空に伸ばし唱える。

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