第28話、俺たちと魔王の噂とアビィちゃん
前回のあらすじ!
勝利!アビィちゃん!ハルベルトさんの元へ!
「ハルベルトさーーーん!!!」
遠くで新兵の教育をしているハルベルトさんに声をかける。
すると、こちらに気付いたハルベルトさんはゆっくりと歩み寄ってきた。
「目が覚めたのだな。無事で何よりだ」
「はい!医療班の皆さんのお陰で!」
ハルベルトさんは急に頭を下げる。
「此度の騒動、君たちを巻き込んだ事、深く謝罪する。そして、協力してくれた事に感謝を」
「そ、そんな!頭をあげて下さい!困った時はお互い様です!それにリーゼベルンさんと初めて会った時に助けてくれたのはハルベルトさんですから!」
「あぁ、この街に来た冒険者が君たちで良かった」
俺たちは微笑みで返す。
「そういえばさ、アンタ、どうやって魔物の大群を退けたのよ?」
「何も大したことではない」
「そんな事ありませんよ!!!ハルベルト兵長は世界一の兵長ですよ!!」
そう言うと後ろから聞き覚えのある声がする。
「セレンさん!!無事だったんですね!」
街に入った時案内をしてくれた新兵のセレンさんがいた。
「はい!皆さんも無事で何よりですよ!」
「それより聞いてください!何でもハルベルト兵長はここ最近の領主の動きが怪しい事に誰より早く気付いて、秘密裏に街の外から来る商人と取引をしていたんです!」
「それで新しい装備を仕入れていたんです!」
セレンさんは尊敬の念を込めて言う。
「セレン、喋りすぎだ」
「す、すみません!」
そう言うとセレンさんはニコニコと笑う。
「でもそれだけじゃ無いんじゃないの?」
「君は勘が鋭いな」
「だが本当に大した事ではない。知性あるものとの戦争と言うわけではない。相手は獣同然の魔物だ」
「人数分の装備さえあれば、後は罠や陣形で戦力差はひっくり返せる」
「それを考えるのが凄いんですけどね……」
「私の話などどうでも良い。それより君たちの戦った悪魔に関して教えて欲しい」
ハルベルトさんのその一言で場所を変え、お互いに情報交換をする事になった。
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「なるほど…悪魔…か」
「はい、呪術を扱う恐ろしい相手でした」
「悪魔に呪術、やはりここ最近おかしい事が多いのは悪魔の出現によるものだろうな」
「やっぱりそうよね……」
「大昔に魔族を含め、多種族間で戦争をしていた事があるのは知っているか?」
「大体の種族は協定や同盟を結ぶ中、魔族だけは無差別に多種族を攻撃したと言う」
「そしてその魔族の王こそが『魔王』と呼ばれるものだ。詳しい事は分からないが強大な力を有していたそうだ」
「しかし、とあるパーティーが魔王とその側近たちをこの世界から消した」
「アタシもその話は少し覚えているわ。『英雄』って言われてたんでしょ?」
「その通りだ。しかし、その悪魔の口ぶりからすると、これがただのお伽話とは思えない。最悪の事態も覚悟しておくべきだろう」
「それってつまり、魔王が帰ってきて、世界を掌握しようとするってこと?」
フィーが真剣な目つきで尋ねる。
「……可能性の話だがな」
周りの空気が暗くなる。
出来ることなら平和に暮らしたいが、魔王がいたら平和に暮らすことは出来ない。
それなら魔王を倒して平和を手に入れるしか無いのか?
それに、俺がこの世界に来たタイミングと、魔王の噂のタイミング、無関係とは思えない。
それなら!
「なら、魔王が現れたら私たちで倒しましょう!!!」
その一言に周りは一瞬固まる。
しかしフィーは口に手を当て微笑む。
「ふふっ、ふふふっ。そうね、リン。私たちでやっつけちゃいましょう」
「そうよ!エルフを代表して魔王に矢ぶち込んでやるわよ!!!」
「君たちは……本当に…。フフッ、君たちを見ているのは面白いな」
ハルベルトさんは少しだけ微笑んだ。
「ならば、私たちは全力で力になろう。遠くにいても、私たちティランの力が必要ならいつでも言ってくれ。ティランのリーダーとしてここに誓おう」
「はいっ!!!」
力強く答える。
「って、リーダー?」
ティナさんが尋ねる。
「あぁ、と言っても住民の皆の指名だ。私は戦術を考える事しか出来ないと言ったのだがな……」
「あら、私はいいと思うわよ。貴方なら適任よ」
「フフッ、未来の英雄候補たちにそう言われては私も頑張らなくてはな」
などと話していると扉をノックする音が響く。
「入れ」
「失礼致します」
そう言うと一人の看護婦が入ってくる。
「皆様が気にかけておりました、アビィ様の意識が回復致しましたのでご報告をと」
「!!!」
俺たちは顔を見合わせる。
「行ってあげるといい。彼女もその方が嬉しいだろう」
ハルベルトさんに言われ直ぐに向かう。
アビィちゃんのいる部屋の扉を開ける。
「アビィちゃん!?大丈夫でしたか!?」
「へっ!?あ…あの、えと……その…」
アビィちゃんは俯く。
「リン、落ち着きなさい」
「ねぇ、アビィちゃん?具合は大丈夫?」
「は、はい…。大丈夫…です」
「良かったわ。私たちの事は覚えてる?」
「………はい。で、でも私…皆さんのことを騙して……」
そう言うとアビィちゃんは泣き出してしまう。
「なーに言ってるのよ。アンタが薬盛ってることなんて、顔見ればすぐに分かったわよ」
そう言うとティナさんはアビィちゃんの頭を撫でる。
「それにね、結果的にアンタは操られている中で、アンタ自身の決断でアタシたちを助けてくれたの。だから泣く必要なんて無いのよ」
目線を合わせ優しく微笑む。
「そうですよアビィちゃん!私たちもアビィちゃんに笑っていて欲しいです!」
「そうよ♡それに貴女は笑った方がキュートで可愛いわよ♡」
アビィちゃんは何度か鼻を啜ったあと、顔を上げ、涙を浮かべながら子どもらしく元気に笑ってくれるのであった。




