表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/75

第27話、俺たちと悪魔と決着

「これで終わりだ。『カースドヘル』」

そう言うと男は呪いの塊を握りつぶそうとする。


フィーは男の目の前まで進んでいる!あと一歩なのに!!!あと5秒!いやあと1秒あれば!!


俺は自分の無力さに苛立ちを覚えながら願う事しかできなかった。






その時、



「『ディ、ディレイ』」

小さくか細い、弱々しい声が聞こえた。



顔を上げると、目の前には手を突き出し、妨害魔法を唱えるアビィちゃんの姿があった。



「ッ!?」

その魔法を受けた男は、一瞬身体がフラつく。



「ハァァァァァァァ!!!!!!!」

その一瞬の隙を見逃す事なく、フィーが男を殴り飛ばす。

それと同時に男の呪術は消える。




「ガアアアアァァァ!!!!」

男は瓦礫に埋もれる。



「アビィちゃん……?どうして…?」


「た、助けて貰った……お礼です。私の力では一瞬怯ませるくらしか出来ませんでしたが…」


「何言ってるのよ?アンタのお陰でこっちは助かったのよ?ありがとう」

ティナさんがアビィちゃんの頭を撫でる。


「……んん…」

アビィちゃんは恥ずかしそうに下を向く。


「そーよ。貴女は私たちを、この街を救ってくれたのよ。ありがとう」

フィーも近寄り微笑む。


「は、はい……」

さっきよりも赤い顔で答える。







「貴様か……このクソガキがッ!!!!」

「あと少し…!あと少しだったんだぞ!!!」

男は激昂する。

しかし何かを思い付いたように不敵な笑みを浮かべる。



「プラン変更だ。外にいる魔物の大群をここに襲撃させよう。獣どもに蹂躙されて死ぬがいいさ!!」




「そう、それは恐ろしいプランね」


「でもその『魔物の大群』ってどこにいるの?」



「馬鹿か貴様ら!戦闘が始まってからかなり経つ。そろそろこの街は魔物で埋め尽くされる頃合いだろう?」



「なら屋敷の外を見てみなさいよ」



男はふらふらと立ち上がり外を見る。

「何だと……」


そこには魔物では無く、ボロボロの人間たちが立っていた。

「残すは敵将!総員、突入準備!!!」


先頭に立つ兵長ハルベルトの一声で住民たちは引き締まった表情に変わる。




「何故だ!!!あの量の魔物をこの街の兵士だけでどうにかできるわけがない!」

男はフラつきながら頭を抱える。



「戦っていたのは兵士だけじゃありません。人間も、獣人も、半獣人も。この街の全ての人種が協力して戦っていました」


「そうよ。貴方はこの街の戦力を兵士のみだと決めつけ、そして過小評価した。それが貴方の敗因よ」




「クソッ!クソッ!!どいつもこいつも!!役に立たない魔物どもめ!!!!」

男は壁を殴りつけながら言う。



「俺はこんなところで死ぬわけには行かない……!!!次会った時は今以上に魂と身体を定着させて嬲り殺してやろう」



「逃すわけないでしょッ!!!」

ティナさんが素早く矢を放つ。



「フンッ!!」

すると男は呪術で煙幕を焚く。



煙が晴れた時には男の姿はなく、あるのは小さくなった空間の歪みだけだった。




「逃げられちゃいましたね……」


「撃退できただけでも成果としては充分よ。それより、リン、貴女大丈夫!?背中から血が流れてるわよ!」


「だ、大丈夫です。それより、ハルベルトさんたちに伝えましょう。ティナさん、お願い出来ますか?」



「ア、アタシ!?わ、分かったわよ」

ティナさんは窓を勢いよく両手で開ける。



「スゥーーー……はぁ。よし」


「魔物たちの長は撃退したわ!!!!アタシたちの、この街の勝利よ!!!!!」



ティナさんが言い終わると街は歓声に包まれる。人間も、獣人も、半獣人も、互いに称え合い、肩を組む。



外が大盛況になっている間にハルベルトさんが部屋に入る。


「君たち、この街を救ってくれたこと、心から感謝する」


「なーに言ってるのよ。あの魔物の大群を退けたのはアンタたちでしょ」


「そうよ。それに、この街を救ったのは私たちじゃないわよ。そこにいるアビィちゃんが居なければ、私たちも街の人もきっと沢山の犠牲者が出たわ」



突然名前を呼ばれたアビィちゃんは小さく驚く。


「君はリーゼベルンの……そうか。君が助けてくれたのだな。ありがとう」


「い、いえ。私は…何も……」


こちらからはよく見えなかったがハルベルトさんが少し微笑んだように見えた。



「それより、君たちの怪我を治療しなくてはな。リンの怪我はかなり酷いが、君たちも中々の重症だろう」

「医療班!!!」

そう叫ぶと何人かの人が入ってくる。


「どうぞ、こちらへ」

医療班らしき人たちが担架に案内する。


「私たちは歩けるわ。リンをお願い」


そう言われ、運ばれる。

安心と疲れから意識を失う。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









ベットの上で目を覚ます。

眩しい光が視界を包む。

ぼんやりと見慣れた顔が見える。


「リン、目が覚めた?」

「アンタ!!!いつまで意識失ってんのよ!!!」

「ふふっ、聞いて頂戴。ティナったら、リンが意識を失っている間、毎日毎日心配そうに貴女のベットの前でウロウロしていたのよ?」


「ちょ!?ぜ、全然心配なんてしてないんだけど!!!?アンタが起きるまで街から出れなくて暇だからなんだけど!!」




「んっ……俺は一体どのくらい寝てたんだ…」


「俺って…リン貴女どうしちゃったのよ〜!夢でイケメンなナイスガイにでもなってたの?」


!!!!

しまった意識がまだしっかりしていなくて声に出してしまった。


「あ、あはは。えっと、私はどのくらい意識を?」


「1週間くらいね。まぁ怪我もそうだし、魔力の消費も多かったからね。ま、まぁ?取り敢えず?無事で?良かったんじゃない?」


「ふふっありがとうございます、ティナさん」

ティナさんが顔を赤くしながらそっぽ向く。


「そういえばあれからどうなりました?」




「そうねぇ……」

そう言うとフィーが教えてくれる。



フィーは戦いが終わったあと、丸一日寝たら怪我もそれなりに回復したらしく、街の復興の手伝いをしていたらしい。


しかし、魔物の大半を街の外で撃退していたこともあり、復興も直ぐに終わり、今では前と同じように平和な生活に戻ったそうだ。



ただ、前までの生活とは大きく変わった点がある。

それはこの街の半獣人たちも他の人間や獣人と共に仲良く暮らしているということだ。



元々、リーゼベルンが悪魔に唆され『半獣人を迫害せよ』という法が作られて、逆らうと罰せられるので仕方なくリーゼベルンの前でのみ、半獣人に対して冷たい態度を取っていたそうだ。

だが、誰一人として迫害する事はなく、リーゼベルンの見えないところで助け合っていたようだ。


「ていうかそんな法、街の人たちで暴動でも起こせば無くせそうじゃない」


「ダメだったそうよ。リーゼベルンが悪魔によって与えられた呪術はこの街の住民限定で強力な呪術を発動させられたらしくて、反対運動をしたリーダーが見せしめに殺されたらしいわ」



「最低ね」



「ええ、そうね。でも今ではその呪術からも解放されて、みんなで協力して新しい街を作っていくそうよ」






「それとね、呪術に関して、あまり良くないお知らせよ」

「それって…アビィのこと?」

「ええ……」

ティナさんに聞かれたフィーは悲しそうに俯く。



「アビィちゃんに何かあったんですか!?」


「ええ。悪魔の男が逃げる時に使われた歪んだ空間が完全に消滅したと同時に、アビィちゃんの意識がなくなって倒れたそうよ」


「アビィちゃんのチョーカーは呪術によるものだから、呪術の源である悪魔との繋がりが完全に切れたから何らかの効果が作用したらしいわ」


「そんな……」



「でも調査してくれた人によるとね、『呪術によって記憶や感情に規制がかけられて操られていたのが急に解かれたから、一時的に気を失っているだけ』だそうよ」


「言われてみれば確かに、子どもの割には難しい言葉とからしくない口調だったもんね。あれも呪術のせいだったってわけね」



「そうなるわね。取り敢えずアビィちゃんに関しては見守ってあげる事しか出来ないわ」

「だからまず、目を覚ましたことをハルベルトさんに伝えに行きましょう?」



そう言われて俺たちはハルベルトさんの元へ向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ