第20話、俺たちと貴族と街の噂
前回のあらすじ!
新兵!兵長!クエスト!
「でもさ、クエストって言っても具体的に何するわけ?」
ティナさんが首を傾げる。
「現在、司令塔らしき魔物の存在は確認しているが、敵の本拠地、規模などは分かっていない。それ故、調査を依頼する」
ハルベルトさんが答える。
「要は何も分かってないってわけじゃない」
ティナさんが口を尖らせる。
「さっきも言った通り、防戦一方だ。調査に回せる兵士は居ない。他の冒険者にも依頼しているが、この街は良くない噂も多く、依頼を受けた冒険者はお前たちだけだ」
「あら、それじゃあまずは街の人に聞き込みしてみるのはどう?どの道、宿は探さないといけないし」
「そうですね!宿探しのついでに聞いてみましょう!」
俺たちは街の中へと入っていく。
街の人たちは少し元気が無さそうだった。戦争中だからだろうか。
宿に着き、荷物を降ろす。店主と話している時、外を見るとティエスとは明らかに違う光景が広がっていた。
貴族と思わしき男が半獣人の子ども相手に怒鳴っている。
「おい貴様!!!何をしている!!この絵が一体いくらすると思っているッ!!!この無能がッ!!!」
罵声を浴びせた後、男は大きく振りかぶる。
男が拳を振り下ろす瞬間
「『スピードアップ』!」
「フンッ!」
速度上昇魔法をフィーにかけ、フィーは素早く近づき、拳を受け止める。
「街がこんな状況だってのに、貴方はその絵の方が大事なの?」
「ぐっ!!なんだ貴様ッ!!!」
男は空いている手で懐から拳銃のような物を取り出す
「死ねッ!!!」
男が引き金に指をかける。
次の瞬間、風を割く音と共に一本の矢が通り抜ける。
その矢は拳銃のトリガーガードを射抜く。
矢の勢いに負け、拳銃は男の指を離れ、矢と共に後ろの馬車に突き刺さる。
「指に直接当てた方が良かったかしら?」
ティナさんが2本目の矢を構えながら言う。
「貴様ァ!!この私が誰か分かっているのか!?この街の偉大なる領主である『リーゼベルン二世』であるぞッ!!!!!」
「この街で私に対しての無礼は『死刑』だ!」
「そんなこと知りません。私たちティエスから来た冒険者です。この街の、それもそんな身勝手な法には縛られません!」
「ぐ……!ハルベルト!ハルベルトはいるか!?こいつらを処刑しろ!今すぐだ!!!」
男が叫ぶと、兵長ハルベルトが駆けつける。
「お呼びでしょうか」
「遅い!!!こいつらを処刑しろ!!」
「お言葉ですが、彼女らはこの街を救うべく参上した他の街の冒険者であります故、裁くことはティエスへの敵対行為となり……」
「ええい!!構わぬ!やれ!!!」
「今はこの街を救うのが最優先事項です。彼女らの裁きは戦争が終わった後の方がよろしいかと」
「クソッ!!!もう良い!!!」
男は粗暴な態度で馬車に乗り込む。
「あ、ありがとう…ご、ございます……」
半獣人の子どもはペコリと頭を下げる
俺たちは優しく微笑む。
「何してる!早く乗れ無能ッ!!」
男に怒鳴られ、子どもは急いで乗り込む。
男が去った後、一連の騒ぎを見ていた住民たちが近寄ってくる。
「な、な、何でしょう…?」
住民たちは俺やフィー、ティナさんに握手をする。そして
「ありがとう」
と小さな声で言う。住民たちはそう告げた者から去っていく。
「な、何だったの…アレ」
「お礼……言われちゃいましたね…?」
「直ぐに戻って行っちゃったわね」
3人でボーッとしているとハルベルトさんが口を開く。
「私の口から詳しくは言えないが、この街の人々は噂のような悪い者たちではないということだ」
「それはどういう……あっ!でも庇ってくれてありがとうございました!」
「礼を言うのはこちらだ。この街に来た冒険者がお前たち……いや君たちで良かった。私は戻る」
そう言うとハルベルトさんは足早にその場を去ってしまう。口数の少ない不思議な人だ。
そして俺たちは街の人々に聞き込みを始めるのだった。




