1/3
前話、或いは約束
泣かせてしまった。
二度と涙を流させないと誓ったはずなのに。
端正な顔立ちを、悲しみに塗らさない様、誓った、はず、だったのに…
笑顔だけが見たかった。
自分に向けられるその笑顔を見るだけで、頑張ろうと思えた。
愛がもっと深くなった。
でも
自分はもうその笑顔も、自信に溢れたあの綺麗な顔も、二度と見ることはない。
自覚すると涙が出てくる。
泣き叫びたくなる。
流す涙も、叫ぶ声も、もうないけれど。
もう意識も遠のきつつある。
日々の記憶が徐々に薄れて、消えて。
でも、これだけは。
彼女の記憶だけは、愛していた、愛しているという記憶だけは。
絶対に忘れたくない。
忘れるものか。
自分という存在を決定づける《魂》というものが有るのなら。
刻みつけろ。
絶対に忘れない様に。
忘れられない様に。
ああ
もう時間切れみたいだ。
もう自分が誰かも分からない。
でも、絶対に忘れないから。
ーーー君を、愛している。