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詞書 とある貴公子の歌
ひさかたの 雨夜に羽振る きらめきの
きみ慕ひつる 鶴渡るかな
頭左大弁藤原宣忠
♪
『十五日、□□に会う。□□に□□の家』
その日、私は全てを失った。ほんの一瞬のうちに、何もかも失った。愛する人も、家族も、友人も、全て。
これが孤独なのだと知った。
手元に残ったのは汚れや破れで内容の読み取れない紙切れだけで、途方に暮れた私はただ、ふらふらと、亡霊のように彷徨った。
空中ブランコに逆さにぶら下がって脱力していたような私に差し伸べられた手は、細くて頼りなかった。けれど、とても温かかった。