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ゲゼルシャフトの足跡

我が子は空高く

数年前、探索隊が持ち帰った4つの卵は世界の在り方を緩やかに変えていた。


ゴゥ!と低い唸りが鳴り響いてくる。腹を空かしたあいつらからの催促だ。

「はいはい。すぐ持ってくよ、クソトカゲども」

ぶつ切りにした生肉をバケツに放り込み、そして荷車に運ぶ。

「ったく、俺より良いもん食いやがって。」

だいぶ重たい荷車を引いて竜舎に向かう。

俺もそろそろ年か。誰か若い奴を寄越してもらって仕事を分担するべきか。


考えごとをしながら手足は慣れた作業をこなしていく。

餌を放り込み、糞を掃除し、1頭ずつ翼と尾を触って体調を確認。

「バカトカゲ!こいつはお前のじゃねえって!」

危うく大事な記録用紙をヨダレ塗れにされる所だった。

今度からもう少し離して置くか。


竜舎の掃除をしていると、トカゲどもは急に吼えて狭い竜舎の中で翼を広げやがった。

あぁ、そろそろ時間か。

翼や尻尾、或いは角で一撃やられないように避難を終えるとちょうど騎手達が入ってきた。

「調子はどうだい?」

「見ての通りですよ、いつもいつもトカゲどもはバカみたいに元気だ。」

「そいつは結構だ。」

「そろそろお披露目飛行だからね、成否はあんたの世話にかかってんだ。よろしく頼むよ。」

「なら少しは給金を上げてくれ。」

「お披露目が終わったら本部から支援金貰えるからさ、それまで辛抱してよ。」

「へいへい」

「それじゃぁ行ってくる。」

「お気をつけて」

騎手達がそれぞれのトカゲに鞍を乗せて轡を噛ませる。

馬にやるように脇腹を軽く蹴るとトカゲどもは軽く吼えて羽ばたいた。


「だいぶ上手くなったもんだ。」

最初の頃はいつまで経っても飛び立てなかったトカゲどもだが、今では助走なしで飛び立つ事さえやってみせる。

グルグルと編隊を組んで飛んで見せる騎竜を眺めている時間はない。


竜舎の掃除に、晩の餌の用意。やる事はまだまだあるのだ。


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