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海指  作者: タケノコ
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中編

 その時、潮騒の音がした。打ち寄せては引く……あの音色だ。


 キョロキョロ辺りを見回した。しかし音源は見当たらない。気のせいかな? ちょっとした不思議に対する期待が打ち消され肩を落とす。


 まあ、当然だろう。図書館で波の音が聞けるはずがない。ボーッとしていたのでそばを通った人にぶつかりそうになり「ちっ!」と舌打ちされた。


 手とうをきる。しかしまた……。今度ははっきり聞こえる。私は目を輝かせた。笑い声をあげそうになるのをこらえる。


 そして私は音の発生源を見つけた。右手の人差し指だった。それを耳元に近づけると颯爽とした波の奏でる歌が……。


 五分ほどそれを聞いていた。何人かの利用者に怪訝な目で見られたが気にならない。集中していたのだ。


 なんとなくその指を口に入れてみた。なんと塩辛い。いや、決して塩などまぶしてはいない。


 指が海の一部のようになったようだ。胸が騒いだ。どくどくする。口角が上がってしまった。


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