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前編
静寂に包まれた室内。控えめなパラパラという音があちこちから聞こえる。それは本の呼吸のように思えた。
ここは図書館。私は分厚く古い書籍をへいげいしていた。中身が頭に入ってこない。なんともどかしいことか……。
今日中にこのレポートを仕上げないと教授の怒声が濁流のように迫ってくるだろう。唇を噛む。
誰かにアドバイスを求めたい気分だ。しかし、唯一の友人は資格試験で忙しく邪魔するのも悪い。
第一、論文が多すぎるのだ。何度も何度も。つい鼻の穴を膨らませてしまった。そして荒い息をおもいっきり吐く。
司書が貸し出しのバーコードを読み取るピーという音が耳障りだ。しかし、こんなに閑静で冷風が心地よくさせてくれる場所は他にはない。
自室はボロく汚くサウナのようなのだ。窓を開ければセミたちの大合唱。いや、嫌いではないのだが集中したいときはやはり……。
壁の時計を一瞥する。もう、ここへ来て一時間経過している。休憩にするかな。私はそっと椅子を引き、おもむろに立ち上がった。リノリウムの床に全体重をのせる。




