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海指  作者: タケノコ
1/3

前編

 静寂に包まれた室内。控えめなパラパラという音があちこちから聞こえる。それは本の呼吸のように思えた。


 ここは図書館。私は分厚く古い書籍をへいげいしていた。中身が頭に入ってこない。なんともどかしいことか……。


 今日中にこのレポートを仕上げないと教授の怒声が濁流のように迫ってくるだろう。唇を噛む。


 誰かにアドバイスを求めたい気分だ。しかし、唯一の友人は資格試験で忙しく邪魔するのも悪い。


 第一、論文が多すぎるのだ。何度も何度も。つい鼻の穴を膨らませてしまった。そして荒い息をおもいっきり吐く。


 司書が貸し出しのバーコードを読み取るピーという音が耳障りだ。しかし、こんなに閑静で冷風が心地よくさせてくれる場所は他にはない。


 自室はボロく汚くサウナのようなのだ。窓を開ければセミたちの大合唱。いや、嫌いではないのだが集中したいときはやはり……。


 壁の時計を一瞥する。もう、ここへ来て一時間経過している。休憩にするかな。私はそっと椅子を引き、おもむろに立ち上がった。リノリウムの床に全体重をのせる。


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