魔物の塔
短編集第一話です!
大きな大きな塔がそこには建っていた。
何故そんな所に塔があるのかは誰も知らない。
しかし密かにささやかれている事はある。
魔物が作ったと――
眠そうな顔でリビングに来たのは佐藤拓。
年齢は高校生なのだが高校には行っていない。
いわゆるプー太郎だ。
「あんたたまには早く起きて手伝いなさいよ~」
拓を見て呆れ顔で言ったのは拓の母親の佐藤由美だ。
女手一つで拓を育てた。
「良いじゃん別にさ~」
拓は椅子に座って頭を掻きながら言った。
すると由美は
「あんたあの塔に行って根性叩きなおしてきなさい!」
拓は口をポカンと開けてまさに開いた口が塞がらない状態になっていた。
魔物が作ったとされる塔は今まで何人もの冒険家、戦士、軍が行ったが帰ってきたものはいない。
「母ちゃんいきなり変な事言うなよ!」
拓はそう言って用意されている食パンを取ろうとしたが由美はそれを取り上げた。
「行きなさい! あんたの根性が腐ってるからそんな生活になるのよ! 待っててあげるから今から行ってきなさい!」
はぁ~!?
これが拓の内心の言葉――
ではなくて口から出た言葉だった。
「俺を殺す気かよ! 帰ってきた人いないんだぞ!」
拓はそう言って反論するが由美はリビングの奥からリュックを出してきた。
「もう荷造りは済ませてあるから行ってきなさい! ばいばい~!」
由美は笑顔で言った。
拓は再び開いた口が塞がらない。
「何なんだよ――意味分かんねぇよ」
拓はそう言いながら石を蹴り飛ばした。
目の前には塔が聳え立っている。
拓は塔を見上げると深くため息をついた。
「すみませ~ん。誰かいますか~」
拓は塔に入るとそう言ってゆっくり一歩一歩進んだ。
「そこで止まれ~! 我が名はハゲノタカケナシーだ! ここに来たからには覚悟がありゅ――」
噛んだ……
「ウォッホン! ここに来たからには覚悟があるんだろうな! お前はここが墓場となりゅ――」
再び……
「ウォッホン! お前はここが墓場となる! お前の名を名乗れ!」
拓は聞き終わると少し笑いながら
「あ~。俺は佐藤拓。よろしく~」
「何だその軽い乗りは~!!! まぁよかろう――ここから先は通さにゅ――また噛んだ~! エ~ン!」
今度は泣き始めた。
拓は呆れた顔で
「大丈夫? テイク2待ってあげるよ?」
拓がお情けをかけると
「うん。ありがとう。ウォッホン! ここから先は通さぬ! 死にたくなければこの我輩を倒せ!」
言い終えた。
拓は拍手をして頷いた。
すると拓の目線の先が光った。
「……もしかしてこの塔の主?」
拓はその姿を見て目が点になった。
リスのようなサイズで目がクリンとしていた。
「わっはっはっは~! 驚いたか! 倒してみせ――ブフォ!」
拓がリスが言い終わる前に蹴っ飛ばしてしまった。
「痛いよ~! 何で最後まで言わせてくれないの! 僕いじけちゃうもんね!」
リスはそう言って丸まった。
しかし拓はリスを掴み顔の前に持っていった。
「お前もしかして今まで来た人達全員にやられて終わったんでしょ? 来た人たちはこんな奴に勝っても嬉しくないから帰っても塔の事は言わなかったんだね――お前って可哀想だな」
「そんな事言わないでよ~! 僕強くなるもん!」
ナレーションの私も思う。
このリスは強くならない。
完
さてリスは強くなったのかな・・・