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僕の死ねない理由

017

すごく逃げたい。これほど思ったことは人生初めてだろう。

僕が今何してるかって?。

youtubeであらゆる格闘技の動画を閲覧している。

これはルシフェロさんから言われたからだ。

「キミの眼は今、見たものあらゆる情報を脳と肉体にトレースできる。つまりキミは今あらゆる格闘技,技術をマスターできるんだよ」

ゴッドアームの力。眼に全神経を集中させてみることでその技をコピーできる。

僕は世界中の格闘技を今習得しようとしている。知っている情報の限りで。

ルシフェロさんは携帯を操作しながら、レミエルについて説明してくれた。

「レミエル。第9番階級執行者天使、性格は残虐で容赦が無い。容赦が無い、これは執行者全員に言えることだろうけど・・・。彼は特殊な力を使えるよ。異次元空間を操作できるんだ。テレポート、瞬間移動と言っていいだろうね。全身だったり、体の一部だったり好きなように時空の裂け目を操って切り離すことができる、まぁ体験してみたほうが早いね。あとアイツは・・・いや執行者全員は武器を使う、神具だ。あいつの武器は両拳銃。リボルバーのね。その弾丸の威力は下界のものとは桁が違うよ。まともに喰らえば痛いだろうね。今のキミの肉体でも」

とレミエルの情報を知っている限り教えてくれた。

あいもかわらず僕はパソコンに向かって全神経を集中しているけど。

「神具の名前はなんて言うんですか?」

と僕は興味本位でルシフェロさんに聞いてみた。

「神具の名前?そんなことを聞いてどうするんだい?」

と笑ってレミエルの神具の名前を教えてくれた。

「『神銃・ケルベロス』だよ」

思った以上に恰好良かった。


ピロリピロリ。

僕の携帯が鳴った。

堂島さんからの着信だった。

「今何してるの?」

「格闘技の動画の閲覧中です」

「本当に普段から格闘技の研究をしているようね」

「堂島さん聞きたいことがあるんだけど」

僕はパソコンのモニターを凝視しながら質問した。

「何よ記者に質問するなんて。いいわよ、答えれる範囲ならね」

僕の質問はこうだ。

「銃を持つ相手に有効な格闘技って何かないかな?」

「・・・あなた空手で撃退しなかったかしら強盗団を」

「いやもっと実戦的なやつを知りたくてね」

「・・・」

少しの沈黙の後、堂島さんは教えてくれた。

「シラット」

「シラット?」

「対武器においては他にないってくらいな武術よ」

「ほうシラットね」

「そんなこと調べてどうするのよ。また強盗でも倒すの?」

「ま、そんなところかな?」

「そう、また来週学校で取材させてもらうわ」

「ありがとう」

「え?」

「いい情報をありがとう」

と言って僕は携帯を切った。

シラットか・・・動画あるかな。


シラット 東南アジアで行われる伝統的な武術。

拳法、武器術を含む武術であり、型や組手を通じて稽古を行う。

だそうだ。


ボクシング、空手、柔道などの動画を見終わった後、

僕はシラットの動画を探した。

思った以上に動画は豊富であり、実戦向きであった。

これならいけると僕は動画に食いついた。

「お兄ちゃーん。ご飯だよー」

空気読め。


018

今日は珍しく両親と共に食事を取ることができた。

本当に久しぶりである。

両親とは強盗団を撃退したことや最近の学業、近状を話した。

もちろん決闘のことは言えるはずもなく。

今日の食事のメニューは至ってシンプルで、

カツ丼と味噌汁だった。

葵曰く。

「新人大会の優勝を祈願してゲン担ぎだよ」

ということらしい。

僕も決闘にカツということで気合をいれて食べた。

僕は食事を済ませて自分の部屋へと向かった。

もしレミエルとの決闘に負けてしまったら家族とご飯を食べることもなくなるのかなと思うと、少し寂しい気分にはなるけど。

僕は勝つつもりだ。

いや勝たねばなるまい。死にたくはないのだ。まぁ当たり前か。

僕に残された最後の6時間を有効に使うために、

あらゆる動画の動きを、技術を脳と体にトレースする必要があったからだ。

「家族との食事はどうだった?」

「えぇ普通に楽しかったですよ」

「ならいい、続けて動画で研究したまえ」

僕は自室のパソコンで動画の続きを閲覧する。

シラットは対銃に置いても有効で、接近する際にもうまく利用できそうだった。

「レミエルはね」

とルシフェロさんが言って来た。

「接近戦にはとことん弱いんだよ、遠距離戦で奴の右に出るものはいないけどね」

「接近戦になったら、僕にも勝機があるということですか?」

「そのとおりだ」

勝てる要素がある、それだけでも心が強くなる気がした。

一通り動画を閲覧したあと、僕は上半身の服を脱ぎ、

今まで見て来た格闘技、技術、武術を演舞のように再現してみた。

やはりゴッドアームの特殊能力は凄まじく、

本当に動画と同じ動きが再現できた。

残り5時間。僕はシャドーボクシングのように、

パンチやキックを部屋の中で繰り返した。

絶対勝つ、勝って未来を掴むと僕は別人のように打撃の練習を続けた。

ガチャリと僕の部屋の扉が開いた。

「お兄ちゃーんって、裸で何やってるの?」

シャドーボクシングの姿を葵に見られてしまった。

「今度、部活の助っ人に呼ばれてね、練習してたんだよ」

と僕はリアリティのある嘘をついた。

「へーお兄ちゃん今じゃ学校のスターだもんね、引っ張りだこだもんね」

「そんなことをいいながら、僕の体をジロジロ見るな!」

「だって凄い筋肉だもん。見ないほうが損ってもんだよ」

妹は筋肉フェチだったらしい。

僕はシャドーボクシングを続けた。

「お兄ちゃん、明日の土曜日のことなんだけどね」

「なんだ葵。新人大会のことか」

「うん。あのね見に来て欲しいんだけど・・・」

「あぁいいよ。明日は暇だからね」

「本当!?よかった。用はそれだけバイバーイ」

「じゃあな葵」

と妹を部屋から送り出した。

死ねない理由が1つ増えた。

僕は思い立ったように、真白さんに電話をかけた。

「こんばんは桐原くんどうしたの?」

「ごめんねこんな時間に」

「ううん別に大丈夫だよ」

「明日なんだけどさ」

「明日?」

「告白の返事を言うよ」

「本当?・・・緊張しちゃうな~」

「だから待っててよ」

「うん!!」

「じゃあまた明日」

「うんまた明日ね。期待してるから。お休みー♡」

と言われてから僕は携帯の電源を切った。

死ねない理由が2つになった。

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