新たなる世界
013
その夜僕は夢を見た。
大雨の中僕はある男と死闘を繰り広げていた。
両者傷だらけで血まみれだ。僕は左腕が千切れかけていた。
「ハハハハ優斗くん。もっと俺をたぎらせてくれよ」
「もう戦う理由なんてないんじゃないですか?」
「戦う理由、ゴッドアームを返してもらいたいからね」
僕が死闘を繰り広げていたのはそう、
ルシフェロさんだった。
「お兄ちゃーん朝だよ~」
葵に起こされた。まぁ毎日のことだけど・・・。
なんかいやな夢を見た気がした。
「なんかうなされてたけど大丈夫?」
「ああ、なんかいやな夢見ただけだよ」
「そっかたまにはあるよね。朝ごはんできてるよ」
そう葵は言って僕の部屋を出ていった。
「おはよう。よく眠れたかい?」
とルシフェロさんが声をかけて来た。
「おはようございます。ルシフェロさんも寝てたんですか?」
「うん。初めて寝るってのを体験したけどいいもんだね」
と伸びのポーズを取る。
僕も軽く伸びのポーズを取った。
「今日も学校だね。僕は干渉しないから安心したまえ、でも何かあったらこの番号にかけてくるんだ。いいね?」
とルシフェロさんは自分の携帯の番号を見せて来た。
僕は自分の携帯にルシフェロさんの番号をメモした。
まぁ何かあった時の保険だ。
「俺はキミの部屋を活動の拠点にするけど構わないかい?」
「はい。何も触れないのであれば別に構いませんよ」
「ありがとう。何もしないから安心したまえ」
そう会話した後、僕は自分の部屋を後にする。
シャワーを浴びて、朝ごはんを食べて、歯を磨いて、制服に着替える。
いつも通りの朝だ。
「お兄ちゃん、朝練あるから先に行くね~」
と葵は慌ただしく出ていった。
両親も朝から仕事なのでいなかった。
僕は洗い物を済ませ、玄関で靴を履き学校へ向かった。
そこで想定外の出会いがあった。
「あ、おはよう桐原くん」
「あれ真白さんなんで僕の家の前に?」
「待ってたんだ。一緒に学校行こ?」
「ああうん」
真白さんが僕の家の前で待っているなんてビックリだ。
女の子と一緒に登校するなんて生まれて初めての経験だ。
しかも憧れの真白さんと。
「どうしたの?顔真っ赤だよ?」
「熱でもあるのかな?風邪じゃないから大丈夫だよ」
と昨日キスをしたことを思い出したのだけど。テキトーに誤魔化した。
真白さんもそのことは忘れたんだろうか。
「そういえば桐原くん」
「何?」
「昨日ニュースになってたねあの事件」
「ああ僕も見たよなんか脚色されてなかった?」
「いやいや、ほんとに凄かったよ。桐原くんの動き」
「まぐれだけどね」
本当に神の力が無ければ、僕はあの時何も出来なかっただろう。
真白さんともこうして登校できるのもなかったわけだし
「あの学生証の写真出したのって絶対 堂島さん だよね」
「堂島さん?」
「知らないの?堂島環新聞部のエース。2-A組。『ニュースあるところに彼女あり』が彼女のキャッチコピーな位のニュース好きな子だよ」
「僕はそういうこと疎いからね知らなかったよ」
堂島環さん。実際彼女のことは少し知っていた。よく運動部の取材とかやっている姿を見たことがあるからだ。
そんな風に真白さんと、堂島さんの話ながら学校に向かうと、
校門の前に野次馬ができていた。
「あ!!あの少年です。強盗事件を解決した神童、桐原優斗くんです」
とたちまち僕の周りは報道陣に囲まれた。
「昨日の事件を解決したことについて何か一言」
「普段なんの武道をやっているんですか」
など質問攻めだ。
「まぐれですまぐれ」
と僕達は報道陣を突っ切り校舎に入った。
「やっぱり今話題の人物になっていたね」
「だからニュースは嫌いなんだよ」
と靴を履き替えながら真白さんと話した。
流石に報道陣も学校の中には入って来れなかったようだ。
そのへんのモラルはちゃんとしているようで。
「あのね桐原くん。放課後時間ある?」
「え?」
と急な誘いを真白さんのほうから振って来たが、その誘いを打ち消すように彼女は来た。
「新たな学園のスター。桐原優斗くん。早速取材させていただきます!!」
014
堂島環。彼女の取材魂を体験することになってしまった。
「桐原優斗くん。一日にして学校のスターになった裏にはなにがあるのか、気になってしょうがないわ。是非昨日の話を聞かせてもらいます!!」
嵐のような怒涛の質問攻めがこの後も続く。
それを感じてか、真白さんは
「じゃあまたあとでね」
と行ってしまった。
「桐原くん、まだ授業も始まってない時間だから新聞部に来て頂戴」
と堂島さんに手を引っ張られて無理やり新聞部の部室に入れられてしまった。
「えーとあのー」
「何?昨日の事件の話?聞かせて聞かせて。私、遠巻きにしか見れなかったから、是非あの強盗団を撃退した方法について詳しく聞かせてほしいところだわ」
学校の中にも取材陣はいたのか。
「銃を持った男を相手にしてまず気をつけたことって何かしら」
「気合ですね」
僕はテキトーに答えた。
「気合ほう。ふむふむ気合で強盗団を粉砕したのね。なんか格闘技とかはやっているの」
「youtubeで対武器の動画を研究していました」
嘘である。
「ふむふむ。それでそれで?」
「格闘技は空手を習っています」
これも嘘だ。
「じゃあ得意の空手で撃退したのね。じゃあなんか動きとか見せてくれない?」
僕はテキトーに正拳突きの動きを見せた。
堂島さんはすぐさまカメラを手に、僕の写真を撮った。
その後も質問に質問を重ねるように嵐のようなラッシュは続いた。
キーンコーンカーンコーン
1時間目の予鈴だ。
「もう、聞きたいことはまだまだあるのに、じゃあこれあなたに」
堂島さんから一枚の紙を渡された。
そこには堂島さんの電話番号とメールアドレスが記載されていた。
「電話がいやだったらメールで送って頂戴。必ずよ。まぁ電話の方がいいけど」
そう言って彼女は新聞部のドアを開けた。
「また後で取材に行くから必ずよ」
と僕を先に部屋から追い出し、しばらくしてから彼女も出て来た。
「今日の放課後、時間あるかしら?」
本日二人目の女の子のほうからの誘いだ。
「いや今日は用事があるので、電話は必ずしますからね」
と僕は丁寧に断った。
女の子に電話するのも生まれて初めてだよ。
「電話必ずよ!!」
と念を押し彼女は自分のクラスへ向かった。
僕は堂島さんからの名刺(?)を財布のポケットにしまい、僕も自分のクラスへ向かった。
2-B組のドアを開けるとそこに待っていたのは、
「ニューヒーローのご登校だぜー」
とはじゃく男子たちの群れだった。
「桐原昨日ニュース見たぜ。お前凄いやつだったんだな」
話したこともない男子から声をかけられる。
なんか少し嫌な気分だ。
昨日まで僕のことは眼中になかったくせに。
色々な男子から質問攻めを受ける。僕は無言でこらえた。
「おーす。授業を始めるぞーみんな席につけー」
担任の小林先生が教室に入って来た。
みんな自分の席につく。
「桐原くんあなたはこの町のスターね」
小林先生あなたもか・・・。
これまであまり注目されていなかった僕はこういう雰囲気は正直苦手だ。
一番後ろの窓側の自分の席に僕も座る。
「桐原くん一日でスターだね」
とボソボソと隣の席の真白さんが言ってきた。
「そのうち静まるさ」
と僕は返した。
ピロリピロリ
僕のメールの着信音だ。マナーモードに変えてなかったのだ。
僕はすぐさま携帯をマナーモードにしてメールを読んだ
「生まれ変わった学校生活はどうだい?満喫している?ところで練習その3だ。
ゴットピービングを使って見たまえ、簡単だよ。自分のことを知りたい相手をゴッドアームに力をこめて見てみるんだ。面白いことが起きるよ。じゃあまた」
ルシフェロさんからだ。
ゴッドピービングなんだそれは?。
まぁ試しで悪いけど、真白さん相手に練習してみることにした。
右腕に力を込めて真白さんを見る。
「うん?どうしたの?」
と真白さんが聞いてきた。
「いや何でもないよ」
ゴッドピービングはこんな風に発現するのか。
真白さんの頭の上にハートマークが5個、点滅していた。
他の生徒『女子』何人かでもゴッドピービングを試してみた。
ハートマークが1個半とか、2個、2個半と点滅して見えた。
見透かしたようにまたルシフェロさんからメールが来た。
「どう?使って見た?ハートマークは自分への好感度を表しているんだよ。満点は5個。
嫌いとか興味ない相手ほどハートマークは少ないんだ。誰か自分を好いている女の子はいたかな?帰ったら教えてよ」
という内容だった。
ハートマークが5個で満点ね・・・。
ってことは、真白さんあなたは!?。僕のことを・・・。
僕はおもわず赤面してしまった。