65年後の未来へ
081
着いた旅館は明らかに高級そうな旅館で、
僕の想像をはるかに越えていた。
本当に穴場スポットなのか?
普通に温泉雑誌で紹介されているような雰囲気だぞ。
「桐原くん。何をボーっとしているの?行きましょ」
「ああ。今行くよ」
ユキ親子の先導で僕は旅館の中に入る。
「予約していた真白です」
とユキはフロントに言った。
「ま、真白あの真白様ですね。お待ちしておりました」
この日本真白の名前を知らない者なんていないんではないだろうか。
それぐらいユキの父親、光牙さんの知名度は半端ない。
受付の人に部屋に案内される。
本当にお義父さんとは違う部屋のようだった。
「食事と風呂の時だけ合流しよう、あとは二人きりでのんびりしたまえ」
とお義父さんとは別の階で別れた。
お義父さんは最上階の一番高い部屋らしい。
さすがVIP。僕とは住む世界が違う。
ユキが予約していた部屋も、
カップル二人では広すぎる位の部屋で、
僕は連戦での疲れ、(まぁ厳密にいうと肉体的な疲労は無い)
を癒すつもりだ。
「桐原くん。おつかれさま。連戦はしんどかったでしょ?」
「ありがとう。ユキ。少しのんびりできそうだ」
「そう。じゃあ」
いきなりユキが服を脱ぎ始めた。
部屋に来ていきなりですか?
まぁ普通に浴衣に着替えただけだった。
「期待していた?残念~、まぁあとでその期待には応えるつもりだから♡」
「・・・・・・期待しているよ」
ユキの目は本気だったので、のちには期待通りの展開が待っているのであろう。
「桐原くんが本当の意味で自由になれるのってあと何回戦えばいいの?」
突然ユキが質問してきた。
僕はしばらく沈黙した。
残りの執行者は3人。
誰もがアザゼルさん、メタトロンを越える猛者らしい。
そして神を説得しなくては、もしかするとベルフェゴール様もか、
「桐原くん!!聞いてるの?」
「最低あと4回だね」
「4回ね~。本当に長かったよね」
「ユキと付き合う前はもっと地獄だったよ。僕がどうしてこんなことに巻き込まれなくてはいけないのかなって毎日考えていた。まぁユキと付き合えただけでも、十分おつりが帰ってくるって、今はそう感じているけどね」
僕の本心だ。
「私もそんな数奇な運命の男と付き合えて嬉しく思っているわ。」
「本当?しんどくない?」
「彼氏に嘘ついてどうするのよ」
いやキミけっこう僕に嘘つくよね・・・・・・
「そうだ。この近くの滝に行かない?」
ユキからいきなりの提案があった。
「滝、どうして?」
滝行でも二人でするのかなと僕は想像する。
「なんでも願いが叶うって有名のスポットよ。
私が来たかった本当の理由はそこなんだけどね」
「へ~いいね。行こうか」
ユキがいきなり浴衣を脱ぎ始めた。
「浴衣じゃ山道、登りずらいでしょ」
キミは何故浴衣に着替えたんだい?
僕に裸を見せたいだけじゃないのかい?
「桐原くんに私のナイスバディを見せつけかっただけよ」
想像通りでした。
旅館の外の山道を登る。
鶯も鳴いており、
空気がうまい。
ユキと腕を組んで山道を登った。
歩いて5分くらいのところに、ユキが行きたがっていた、
目的地。
「成就の滝」があった。
名前そのまますぎるだろ。
というツッコミは控えていただきたい。
「ここの滝壺に願いを込めて、お賽銭を投げいれると願いが叶うらしいのよ」
とユキは準備していたであろう。
5円玉をポケットから取り出し滝壺に向かって投げ入れ、
目をつぶってお祈りをした。
僕もやろうと思って財布を覗いてみたが、
1万円札3枚しか入っていなかった。
3万円を滝壺に投げるか?と思ったが、僕には神の腕がある。
大量の5円玉を具現化して(100枚くらい)
滝壺に投げ入れた。
「・・・・・・うわ。卑怯」
とユキに言われた。
少しショックを受けた。
「これくらいやらないと僕の願いは叶わないと思ってね」
「ふ~ん。どんな願いごとを祈ったの?」
「願いごとってのは、人に言うと叶わなくなるって話だよ」
「じゃあ。私も言わなーい」
ユキの願いごとはかなり気になったがまぁ願掛けだからね。
二人共々内緒にすることにした。
二人の願いごと叶うといいな~
僕の願いごとは絶対叶わせなきゃ、いけないことだけど。
やっぱり3万円投げるか?
082
その日の晩。
僕は今まで食べたことのないような夕食を目の前にする。
(食べたことのないと言えば魔界の料理が一番該当するが)
美しい。これが伝統の美か。
さすがVIP住む世界が違うな、と僕は痛感した。
料理はまず目で楽しむものだったのか・・・・・・
「どうした優斗くん?箸が動いていないぞ?遠慮せず食べなさい」
「そうだよ。桐原くん。早く家族一緒に食べましょ?」
「ではいただきます」
桐原優斗、人生初の高級料亭料理を食べるの巻。
不味いはずがないよね~。
どの料理も職人の技が仕込まれており、(知ったかぶり)
その味は僕の舌をとろけさせた。
旨い。この一言につきるよね。
執行者達との闘いを忘れ、僕は絶品料理を楽しんだ。
「ごちそうさまでした」
「ふぅ私もお腹いっぱいだよ。料理は80点くらいだったけどね」
「そうね。パパ。80点くらいね」
「・・・・・・80点くらいですね」
やはりこの親子と僕は住む世界が違う。
僕は100点満点ですと言いたかったけど、
ここは二人に合わせることにした。
一般市民とVIP階級の世界の差は中々埋まらないな~。
「料理も終わったし、優斗くん。風呂に行こうか」
「お風呂。いいですね~。お背中洗いますよ」
「ハハハ。すっかり親子みたいになってきたね」
「パパ。あんまり、のぼせさせないようにしてね」
「どうした。ユキ」
「桐原くんをのぼせさせるのは私の仕事だから♡」
「ハハハ。そうか今日も熱い夜になりそうだね~」
僕は思わず赤面した。
父親の前で言うセリフではないだろそれは。
お風呂パート。
※男と男同士なので一切のエロ要素はありません。
「桐原くん。すごい身体をしているね」
服を脱ぎ裸になった僕に、お義父さんはいきなり言って来た。
「普段から鍛えていますからね」
「それはユキにも毎日のように聞かされているよ。ユキを守るために毎日鍛えているって話だろ?いい婚約者をもつ父親として誇り高いよ」
ユキはそうやって毎日自慢話をしているのか。
まぁ恋人としては嬉しい話ではあるが。
お義父さんのお背中をまず洗い、
そして僕も背中を洗ってくれることになった。
天下のピュアホワイトファイナンスの社長にだ。
不釣り合いな話だろ。
僕は最初断っていたが、お義父さんが中々折れないので、
背中を洗ってもらうことにした。
その後二人で露天風呂に浸かった。
「優斗くん。キミには本当に感謝している」
突然の言葉に僕は少したじろいだ。
「いきなり何故ですか?お義父さん」
「ユキは母親がいないからね。ユキを産んだあとすぐ、妻は事故で亡くなった」
「初耳です」
「ユキには寂しい思いをさせてしまったと思っている。私も昔はピュアホワイトを発展させることばかり考えていてね。ユキにはあまり愛情を注いでやれなかった。
金で全てを与えているつもりだった」
「・・・・・・」
「ユキは高校に入るまでは本当に大人しいというか、周りに壁を作っていたんだ。
でもキミと同じクラスになってからかな。明るさを取り戻したのは」
「そうなんですか」
「ユキ曰く、キミはユキにとっての『太陽』らしいんだよ」
「僕が太陽ですか?」
「最初はただの少し気になる存在って言っていたんだけど、強盗事件の時に、
ユキを救ってくれたろ?その時からユキはキミを愛し続けている。初恋さ」
「・・・・・・初恋か、僕もなんですけどね」
僕はお義父さんにある秘密を打ち明けた。
半年後。
中国 上海 12000フィート上空
天界城「スカイラグーン」
「オールキャストですね」
僕とユキとルシフェロさんと水島『アルマロス』
そして魔界の王ベルフェゴール様
対するは
1番階級 光速の執行者 ミカエル
2番階級 猛る焔の執行者 ウリエル
3番階級 愛の執行者 ガブリエル
そして神。
全世界中が見守る中、人類の未来が決まる闘いが始まる。
「久しぶりだな友よ」
「2000年ぶりですね。ベルフェさ~ん」
ベルフェゴール様と神が睨みあう。
ベルフェゴール様と神。
どちらが勝っても人類の希望は失われる。
神が勝てば 地上はリセットされ。
ベルフェゴール様が勝てば、魔界の侵略が始まる。
今は味方のベルフェゴール様だけど、
どちらにせよ僕には、話し合い、いや死闘は避けられないであろう。
「じゃあ始めましょうか」
ルシフェロさんの合図で両陣営は走り出した。
半年も待った聖戦だ。
魔界777コロシアムで手に入れた魔界刀、ベルセルカーを持つユキ。
ぶつかるのは ガブリエル。手にはピンクのステッキが握られている。
神杖・ブレイハート。
ルシフェロさんと記憶と力を取り戻したアルマロス
対するのは 執行者随一の熱い天使 ウリエル
神拳・イフリートが周りを炎の壁に包み込む。
「消し炭にしてやるぜ!!!」
そして僕は最強の執行者 ミカエルとぶつかる。
「小僧。断罪の時間だ」
「僕は人類の最後の希望です」
ミカエルは手のひらから、神剣・エンジュリオンを取り出した。
いきなりの展開であるが、
作者の限界である。
主治医からのドクターストップだ。
一日2話掲載のノルマが身体と心にダメージを与えた。
まぁ積み込みすぎた感もあるしね。
ユキが魔界の武器を使える理由。手に入れた経緯。
そもそもなぜ僕と肩を並べて闘っているのか?
僕はお義父さんに何を話したのか?
水島がアルマロスに戻った経緯。
ベルフェゴール様からの手紙。
様々な伏線を残したまま。
この物語は終わる。
終わりに向かって僕は両腕のギブスを外す。
ミカエルを倒し、神とベルフェゴール様を倒し説得させる。
それが僕に託された人類の唯一の希望。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
僕は叫んだ。
最後の咆哮だ。
「この闘いには、絶対に勝つ!!」
ミカエルの剣と僕の拳が交差する。
この聖戦は65年後も語り継がれた伝説となった。
2015年 2月16日 午後8:00
持病の病気が悪化したため
不本意ですが、ここにて劇終です。
次回作のタイトルと設定はもう決まっています。
KILL BLOOD「キル・ブラッド」 R15作品です。
今度は週間ペース(理想)でゆっくり書こうかと思います。
色々な小説を読み、勉強し 治療し もっと面白い話を描きます。
相変わらず異世界ネタ、転生ネタはなんか嫌なので、
邪道をつっ走ります。
今まで応援してくれた皆様ありがとうございました。
始めての小説にしては結構かけたかなと思います。
アクセス数も約1ヶ月ちょいでしたが想像以上に伸びましたから。
では近い未来で(?)また会いましょう。
神んぐスーン。
追加報告 KILL BLOOD 4月17日 午前0:00時より
001話 連載開始
000話 プロローグは掲載済みです。
一応続編でもあります。
ユート・ロビンソン




