執行者再現
073
「あれ?・・・・・・ここは私は一体」
パトカーの運転手さんは困惑していた。
「ちゃんと前後の記憶は消してあるからね」
助手席で透明になっているルシフェロさんが言ってきた。
「刑事さん。道間違えたんですよ」
「そうだったのか。あとで藤原さんに怒られるな」
と運転手さんは苦笑いをした。
ルシフェロさんがパトカーと襲撃と激突の記憶を
僕は運転手さんの傷を治したのだ。
「刑事さん僕達はここでいいです」
と真白と透明になっているルシフェロさんとともに、
僕の家の前で下ろしてもらった。
「じゃあ気をつけてね」
そういって運転手さんは警察署に戻った。
「桐原くんの部屋でさっきの現象教えてくれるのよね?」
「ああもちろん」
ルシフェロさんは即答した。
玄関を開けると葵が迎えに来た。
「お兄ちゃん、おかえり、ユキ姉ちゃん、いらっしゃい」
「ユキ姉ちゃんって、どんだけ仲良くなっているんだよお前ら」
「もう家族じゃない私達」
「いやそうだけど馴染みすぎ」
「ユキ姉ちゃん。ご飯食べていきなよ」
「ええ葵ちゃん。ご一緒させてもらうわ」
「優斗くん。僕はキミの部屋で待っているよ」
ルシフェロさんは階段を上がって行った。
今日の晩御飯は家族+真白の5人で食べることになった。
学校生活の話や真白の家に泊まっていた時のこと、
何気ない日常のことを家族で話した。
葵がテレビを付ける。
「今日のニュースです。龍入市で刃物を持った男が暴れるという事件がありました。犯人の特徴は紫色の髪で白い着物。長い槍を持っているそうです。
見かけましたら警察にご連絡を」
メタトロンの襲撃はニュースになっていた。
「槍男、怖いね~」
と葵が言う。
確かにアイツは怖い。何を考えているのかわからない怖さがある。
そしてどの執行者より容赦がなかった。
食事を終え僕と真白は2階へと上がった。
僕の部屋に向かって。
僕がドアをあける。
「ヒッヒヒ。久しぶりだなガキー」
「げ!?レミエル?」
僕の部屋にあのレミエルがいた。
「やぁ優斗くんビックリした?レミエル戻ってくれるかな」
「俺様の出番はこれだけかよ」
「まぁまぁ、そのうちまた出番が来るかもよ」
レミエルは光となり、ルシフェロさんの手の中に入った。
「桐原くん、さっきの執行者私知らないんだけど」
「さっきのレミエルは僕が最初に倒した執行者で両拳銃の使い手だよ」
「ふーん。駄天使、さっきの結局何なのよ」
真白が詰め寄る。
「優斗くんJOJO好きだよね」
「はい。僕の愛読書の一つですからね」
「それに出てくるスタンドみたいなものだよ」
とルシフェロさんはまた手を光らせた。
「ヒャッハー!!!」
大嫌いなラファエルが現れた。
「ルシフェル!!久しぶりに暴れさせろよ」
「駄目駄目、ここは優斗くんの家だからね。またその内機会をあげるよ」
「テンション下がるわ~、馬鹿なのかいや馬鹿だな」
ラファエルもルシフェロさんの手の中に戻った。
「俺の命令には絶対服従の執行者達。俺は執行者再現って呼んでいるよ。アルマロス以外は全員出現させることができるのさ」
「それが執行者達を取り込んでいる真の意味だったんですね」
「ま、そんなところだね。まぁ俺の近くでしか出現させることはできないとか、
デメリットも多くあるんだけど、キミのサポートにはなるよ」
執行者再現か、あれで僕を救ってくれたんだ。
ルシフェロさんは僕のサポートを本当によくやってくれるな。ありがたい。
「ちょっと駄天使」
「何でしょう。真白のお嬢様」
「あのハープを持った執行者出せる?」
「え?何故でしょう」
「この私の首筋の礼。万叩きしたいからよ」
「・・・・・・」
真白さん怖すぎるよ。
074
午後8:00
もう辺りは暗くなり、真白を家に送る時間になった。
「ねぇ真白さっきから何をそんなにキョロキョロしているの?」
「・・・・・・」
また彼女に無視された。
彼女は僕の部屋で何を探しているのであろうか。
あ!!
真白が僕の机の設置棚の扉を開ける。
「やっぱりここだった。みーつけた」
真白は自分の鞄からいつも持ち歩いているのか、ビニール袋を出し、
僕の隠してあった、お宝。
エロ本を全て袋に回収してしまった。
「真白~そんな殺生な」
「前言ったじゃない。今度桐原くんの家に遊びに行ったらエッチな本は、
全部回収するって。それに」
「それに?」
「私がいるからエッチな本なんていらないじゃない」
「うんいやまぁそうだけど」
「大丈夫よ。これらの本であなたの性癖も全部覚えてあげるから♡」
「・・・・・・」
そっちが本音か。
このドエロ。
すっかり暗くなった道を二人で歩く。
「真白、何か危険を感じたらすぐ連絡してくるんだ。わかったな」
「いつでも助けに来てくれるんでしょ、あなたは私の王子様だから」
「そりゃもちろん」
「ふふふ。安心安心」
真白のマンションの前についた。
「送ってくれてありがとう。じゃあまた明日」
「ああまた明日」
軽くキスをして別れた。
サリエルの例もあるから、真白が人質に取られる可能性もあったけど、
真白が大丈夫と頑なに言っていたので、真白の家には泊まらなかった。
僕も早く家に戻ろう。
少し早足で家に帰った。
僕は自分の部屋に戻った。
ルシフェロさんが椅子で漫画雑誌を読んでいた。
「やぁおかえり。真白のお嬢様の家には泊まらなかったんだね」
「正直不安でしたけど、真白がいいって言ってましたからね」
「そうだ。久しぶりに執行者メタトロンの詳しい話をしようか」
「お!本当に久しぶりですね」
「単刀直入に言おう」
「はい」
「俺はメタトロンのことはよくわからない」
「は?」
「メタトロンはしゃべらないし、心の声も聞こえない。心を閉ざしているんだ。
わかっている情報だけを話そう。」
「それだけでもありがたいです」
ルシフェロさんの執行者解説コーナー。
「メタトロンはキミも知っているように、槍の使い手だ。
槍の名前は神槍・グングニル。操る能力は雷だ」
「槍の名前以外は知っていました」
「そうだね体験しているもんね。槍はアイツのかわりに話してくれる道具でもある。これも知っているよね。メタトロンは天界にいた時から情報が少なすぎるんだ。
一緒に任務に就いた時もあるけど、一言もしゃべらなかった。
でもまぁ任務にはかなり忠実な奴だったよ」
「情報が少ないとさらに恐ろしい敵になりますね」
「うん。そこがアイツの怖いところさ何をしてくるかわからないからね。
俺が今日みたいに直接介入できれば、
決闘ということに持ち込めるかもしれないけど、難しいだろうね」
「何故ですか?」
「アイツは人の話を聞かない。さっきも言ったろ心を閉ざしているんだ。
任務以外は本当に無感情な奴なんだよ」
「う~ん。本当に情報が少ないですね」
「まぁ今度来た時はギプスを外して全力で闘ったほうがいい、アイツはアザゼルさんよりも強い執行者だからね。今日はまぁ寝なよ」
「真白から連絡が来たら起こして下さいよ」
「わかっているよ。おやすみ」
僕は少し不安なまま寝間着に着替え寝ることにした。
翌日。
「お兄ちゃーん!って、起きてるし」
「よぉ葵。あんまり寝れなくてさ」
「なんか嫌なことでもあった?でも朝は元気に行かないとね」
「そうだな」
僕はシャワーを浴びて、朝食を食べて、制服に着替えた。
いつも通りの朝だ。
僕はいつもより少し早く学校に向かった。
今日は早く家を出た為か真白は、いなかった。
少々不安だったので真白に電話をかける。
ツー。ツー。ツー。
繋がらなかった。
僕は不安を感じ、真白のマンションに向かった。
ピンポーン。
真白の部屋のインターホンを押す。
無反応だ。
再度押したが真白は出てこなかった。
真白の部屋は鍵がかかっており、窓ガラスも割れていなかったため、
メタトロンの襲撃はなかったようだ。
僕はとりあえず学校に向かうことにした。
学校に着き僕は上履きに履き替える。
「ワッ!!」
「うぉっ!!!」
真白が靴箱の影からいきなり現れた。
「アハハ。びっくりした?桐原くんがどんだけ心配してるか試したくて♡」
「真白~悪い冗談はよせよ」
「ゴメンね。じゃあ教室に行こっか」
「ああ」
二人腕を組んで教室に向かった。
今日は平穏そうだ。




