memento mori
049
真白をお姫様だっこの体勢で、僕は試してみたかったのだ。
跳躍力のレベルアップを。
「真白いくぞ!!」
と僕達は空中に跳んだ!!
雲に近いところまで僕達は跳んだ!!ここまで飛べるとは。
夢の中で試してみたかったゴッドアームレベル2のパワーアップ具合を。
今はゴッドギプスをしているけど。外していたらどこまで跳べたんだろ?
「こりゃいいや!!」
とそのまま映画館の裏に着地した。
無論、衝撃を抑えるように着地にはかなりの気をつかったが。極限までソフトに降りた。
「ねぇ桐原くん」
「何だい?真白」
「誰か人が見ていたら引くよね。ニュースになるよね。
人間が2人空を跳んでいたんだから」
「見えないようにしてたのわからなかった?」
「え?」
「ゴッドアームレベル2の特殊能力『透明化』。僕達の姿は今まで消えていたんだよ。たぶんできると思ってやってみたんだ。直感でできるとわかったんだけどね」
「私も含めて実験してみたわけ?桐原くんってけっこう向こう見ずなところがあるわよね。そういう子供っぽいところもあなたの好きなところの一つなんだけど」
「ありがとう。周りに人はいないね。透明化を解くよ?」
「どうぞ」
僕は透明化を解いた。
いきなりお姫様だっこ中のカップルが出現したら、
それこそニュースになると思ったから
僕は着地先を映画館の裏を選んだのだけど。
目的地に着いたのに真白は降りてくれなかった。
何から?お姫様だっこからだ。
「いきなり私をビックリさせた罰。このまま映画館の中まで運んで」
「マジすか?」
「マジすよ!」
僕達はお姫だっこの状態で入り口まで周り、
周囲の好奇の目線や笑い声を気にしつつ映画館の中に入った。
「ああ興奮した♡」
と真白は自ら降りてそう言った。
「僕は普通に恥ずかしかったよ」
「じゃあ今後、公共の空をいきなり跳ばないで頂戴」
「・・・・・・はい」
当たり前のことで怒られてしまった。
「カップルシートを予約していた真白です」
真白は受付で身分証明書を出し、料金は全て真白が払った。
彼女に金を全て払わせるのは彼氏として情けなかったので、
僕はフードコーナーでLサイズのジュース2個とポップコーンを買って真白と合流した。
「あら。ジュースはひとつで良かったのに」
「何で?」
「間接キスで飲めるでしょ?」
「・・・・・・」
ノーコメントだ。
予約してあったカップルシートに僕達は座り、
僕達はお互いの顔を見つめ合った。
「僕は今後真白との未来の為に執行者だろうが誰が邪魔しようが全員ぶっ飛ばすよ」
「私は今後何があってもあなたを支え愛し続けるわ」
と手を握り合った。がっちりと優しさと愛を込めて。
まぁ真白がやりたいと言っていたからだとは黙っておこう。
照明が落とされ辺りは暗くなり、何本かの予告の後、映画の本編が始まった。
『木枯らしIwantyou』
なんていうタイトルだ。
映画の中身はなんというか僕と真逆の主人公の話だ。
元から学力や武力が凄まじい高校生が何もない地味な少女に恋をする。
という本当に僕と真逆のストーリー。
真白は僕とこれを見たかったのか。
自分とは真逆の話を。
真白はがっつくように画面に集中し見ていた。
ふぁーあと僕はあくびをした。
僕は急な睡魔に襲われ意識を失った。
「起きろぉ!!人間!!!」
050
「目を覚ましたか」
聞いたことのない声で僕は目を覚ました。
「ふん。自分の命がかかっているのに呑気に映画鑑賞か。舐めているなぁ」
僕は真っ白な椅子に座っていた。
目の前に人影が見えたので立とうとしたが動けなかった。
「動けないのはこちらも一緒だ。話会いで解決しようや」
目の前の椅子には青い長い髪の男がいた。
「ここは僕の夢の世界ですか?」
「そうだ。ルシフェルと同じ道具を使った。旧式のだけどな。お前の夢の中に介入させてもらった。なぁにさっきも話したようにお互い何もできやしねぇ。話会いをしよう」
「話し合い?」
「質問が多いな人間。馬鹿なのかいや馬鹿だな。何度も同じセリフを吐かせるなよ俺に。せっかく準備ができてお前の夢の中に介入できたというのによぉ。なら黙って俺の話を聞け。いいな?」
「ああ」
「素直な奴だな。話は簡単だ。ゴッドアームを返せ。」
「ゴッドアームは僕と一心同体です。外す方法=僕の死ですからね」
「お前はルシフェルに騙されているんだよ。ゴッドアームは死なないと外れないだぁ?お前、真に受けてるのか?馬鹿なのかいや馬鹿だな。ゴッドアームは外れる。ある言葉を言えばなぁ」
「外れるのか?その言葉は?」
「だから黙って聞けよ。俺が温厚なうちが華だぜ?いいか?一回しか言わねぇぞ」
「はい」
男がキレそうだったので僕は素直に聞くことにした。
「mementomoriこの言葉だけでお前はもう自由だ」
「mementomori?」
「そうだぁその言葉を祈るように叫べ!!さすればお前の中のゴッドアームは外れる、つまり俺達執行者達とも争わなくて済むんだぜ。お前は平穏な日常に戻ることを心のどこかに抱いている。ゴッドアームは万能だ。人間の人生を狂わせる魔性の道具だ。まぁ神さまの腕だからな~。それぐらい万能性があってもいいものだろう?そしてまぁお前は欲しいものを手に入れた違うか?女・金・地位もう十分じゃねぇのか?どうだ?」
「・・・・・・それは」
「図星だろ?もうお前はそんな物騒な物一人でしょいこまなくていいんだぜ?裁かれるのはルシフェルただ一人だ。お前に罪はねぇ」
「・・・・・・」
僕のこのゴッドアームが外れる?僕の本来臨んだことじゃないか?
闘いのない平穏な生活が待っている。それが僕の本当の夢じゃないのか?
「猶予をやる3日間だ。その間に俺は地上に降りる、あの公園にな。その時にお前はその腕ゴッドアームを返せ。いいな。目が覚めたら唱えてみるといい。決してお前が死ぬ呪文なんかじゃない保障する。腕がなくなるわけでもねぇ。騙されたと思って試しにやってみろよ」
「・・・・・・」
「わかったか?じゃあ目を覚まさせてやるよ。無理に眠らせて悪かったな。これでお前はお前の臨む普通の人間に戻れるんだ。じゃあな」
「・・・・・・」
「いいな。最後の通告だ。くれぐれも馬鹿な行動はとるんじゃねぇぞ?」
僕は目を覚ました。
映画はさきほどの続きであり。
僕は夢の内容をハッキリと覚えていた。
『mementomori』この言葉で僕は自由に。
この映画を見終わったら3人で話そう。
僕と真白とそして、
僕にこの腕を授けたルシフェロさんと。
僕は映画が終わった後、真白を連れて自分の家に戻った。
真白には事前に話はしてある。
僕は自分の部屋に行き、そこで待っていたルシフェロさんにこの言葉をぶつけた
「mementomori」
僕の右腕は光を放ち。ゴッドアームは僕の右腕から外れて床に落ちた。
「な、何故その言葉を知っている?」
ルシフェロさんは困惑していた。
「ルシフェロさん正直に話して下さい。今まで僕をずっとだましていたんですか?」
「優斗くんそれは・・・・・・」
「とぼけるなルシフェル!!」
と僕は声を荒げた。
「あんたは言ったよな僕が死ぬまでこの腕は外れないと。見てみろよ外れたじゃねぇか。あんたは僕を利用していたんだ。自分の駒に使えるようにな」
「・・・・・・」
「どうした?おい!答えろよ!!」
僕はルシフェルのスーツの胸倉を掴んだ。
「僕は確かに浮かれていた。絶対的な力を手にして全てを手にする力を手にして、神の力を手にしたならばどうだ!!この有様だ!!闘って闘って何度も何度も死にかけて何度も何度も再生し化け物じゃねぇかよ!!あぁ執行者を全員倒せば僕は解放されると信じていた。それはあんたが僕を騙す為についた嘘じゃねぇのか?」
「話そう」
「何だって?」
「真実を話そう」




