平穏な日常!?~真白さん家の秘密
027
「パパ。私の運命の人を連れてきましたわ」
と真白は僕の腕に抱き付いてきた。
最上階の広間の奥に、
ダンディズムが漂うような男性が立っていた。
「おおユキ連れて来てくれたか、早くこっちに来なさい」
「パパ今行きますわ」
と真白はグイグイと僕を引っ張って行く。
見るからに高そうなソファーが向かい会うようにして並んでいた。
「かけなさい」
僕達はそこのソファーに座らされた。
向かい会う形で真白のお父様もソファーに座った。
「初めまして桐原優斗くん。ユキの父の真白光牙といいます」
と名刺を渡された。
ピュアホワイトファイナンス‐会長 真白光牙
「ど、どうもは初めまして桐原優斗です」
謎の圧倒的プレッシャーに気押される僕。
「桐原くん。君の話はよくユキから聞いていたよ。ユキはここ最近君の話しかしてくれなくてね、一度会っておきたかったんだよ」
「そ、そうですね」
「もう『誓いの口づけ』はすましたそうだしね」
「は、はいキキスさせていただきまました」
噛み噛みである。
「パパ。話していた通り恰好いい男でしょ?」
「そうだね。パパの想像以上だったよ。ユキ」
「そそうでですかありがとうごございます」
「桐原くん緊張しすぎですわよ~」
なんだその学校とは違うお嬢様口調は、
いや真白は正真正銘のお嬢様だったんだけれども。
「私達もう将来を誓い会った仲ですもんね~桐原くん♡」
「えーと真白・・うぐっ」
真白に脇腹をひじ打ちされた。
(ユキって呼んで)と真白に耳うちされた。
「ん?」
「ユキさんとは真剣にお付き合いをさせてもらっているつもりであります。」
口調がめちゃくちゃだ。
「パパ。強盗団の話覚えてる?」
「ああそうだったね。桐原くん。ありがとうユキを守ってくれて。君は本当に強いんだね~。
いや強くて勇敢だ。」
「あありがとうございますこ光栄ですます」
「一つ私と手合せしてみないかい?」
「はい?」
真白のお父様は僕を連れて、ソファーから少し離れた場所へ連れて来た。
「では行くよ、これでも私は空手三段だからね」
といきなり真白のお父様は正拳突きを僕の顔面めがけて放ってきた。
あれ?スローモーションに見える?
レミエルの弾丸を見ていたからか、お父様の突きはかなり遅く見えた。
その突きを掴み僕は一本背負いでお父様を床へ投げつけた。
いや投げつけてしまった。反射ってやつだ。
ドシン!!。
「大丈夫ですか?お父様」
「ハハハハハ本当に強いな君は」
僕の手を掴み、起き上がるお父様。
「うむ。『真白婚礼の儀』終了」
「え?」
「正式にユキの婚約者として認めるという意味だよ。桐原くん」
「あのえーと?」
いつの間にか僕の横に来ていた真白が僕の腕に抱き付いてきた。
「じゃあパパOKだよね?」
「うん。桐原くん。君にはピュアホワイトファイナンスを将来継いでもらうよ」
「はい?」
「謙遜するなよ桐原くん。もう君は義理の息子なんだからね」
いつの間にか話はとんでもない方向へぶっ飛んでしまっていた。
全てはこの 真白ユキ の策略だったわけだが。
028
「いつでも困ったことがあったら連絡してきなさい。そのうち私からも挨拶にいくからね」
と真白のお父様はそう言って見送ってくれた。
かなりの時間3人で雑談していたのだけれども。帰れないかなと思ったくらいだ。
また長いエレベーターに乗って下に降りる。
「なぁ話がすんごい方向に行ってしまったんだけど」
「ゴメンね。パパがどうしても会いたいってしょうがなくってさ」
「いやそうじゃなくてさ、僕達はもう恋人は通りこして婚約者になってしまったわけだよね。高校2年生にしては早すぎやしないかい?」
「まぁ逆玉の輿と思ってくれれば」
と笑顔で返された。
本当に天使の笑顔とはこの子に相応しい言葉だな。いや小悪魔かな。
「どこか2人きりになれる場所にいかない?」
と真白のほうから提案があった。
「もうこうなればどこまでも付き合うよ」
と僕は答える。
チーン。
とエレベーターは1階に付き、また執事&メイド軍団の見送りがあった。
「おめでとうございます。お嬢様。桐原様」
僕の名前も覚えられていたんだ・・・。
総勢60名位の真白軍団の号令に少したじろいでしまった。
「ありがとう。ちょっと二階堂」
「は!!」
「車を1台手配して頂戴」
「かしこまりました。お嬢様」
赤髪の執事は携帯を出しどこかへ連絡をとった。
すぐさままたあの高級車がビルの扉越しに止まるのが見えた。
「さ。行きましょ」
と真白と腕を組んで僕は真白家(?)を後にした。
またこの車に乗って次はどこに行くのであろうか。
「この場所まで」
と運転手に携帯の地図アプリを見せる真白。
「かしこまりました」
と運転手は車を発進させる。
「ねぇ今度はどこに行く予定だい?」
「・・・・・・」
無視された。
車は高級住宅街を出て僕達の住む町に戻って来た。
で、とある喫茶店に車は止まった。
「ありがとう。迎えはいらないわ」
「わかりました。お嬢様」
僕達は車を降りた。
「へぇ~なかなか雰囲気のある場所じゃないか。お嬢様らしくないね」
「そうね。入りましょ」
と僕達は店の中に入る。
「いらっしゃいませ~」
とスタッフが言った。
「2名です。どこか静かなところがいいわ」
「かしこまりました。こちらへ」
と案内された席へ僕達は向かい会って座った。
「はぁ~あ疲れた~」
いきなりの発言と伸びのポーズに僕は驚愕した。
「え?」
「こっちが素の私よ桐原くん。お嬢様を演じるのも大変なんだから」
「演じているんだ・・・・・・」
「パパの監視の元だもの。そりゃ気を張りますよ私も」
「苦労しているんだね」
「お嬢様。お嬢様って大変でね。真白の家に生まれたものだもの、大事なところはちゃんとしなきゃね。パパの面子ってものもあるんだし」
やっぱり高貴な生まれだと大変なんだな~と僕は思った。
「桐原くんここでは素の状態で話しましょ」
「そうだね」
「大事なことを聞くわ。桐原くん私のことどれだけ好き?」
「え~とね」
「うん」
「1年生の時から好きだったよ。」
「え?私のこと一途に好きだったってこと?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけどね」
「嬉しい。バスケの時は勢いでキスしてくれたのかと思っていたから無理やりパパのところに連れていってしまったかなと少し罪悪感があったのよ」
「無理やりだったのは認めているんだね」
「はい。そこはごめんなさい」
と真白は謝ってくれた。
「ちなみに私はね」
「うん」
「・・・・・・実は私も桐原くんのこと、1年生の時から少し気になっていたのよ」
「少しか」
「そう気にしないで昔のことじゃない、でも気になっていたことは確かよ」
「地味で根暗な僕のどこが気になっていたの?」
「そういうところよ」
「そういうところ?」
「なんかほっとけないな~って感じ。友達も作らないし寡黙でカワイイ顔をしているところが気になっていたのね。私はね」
「ちょっと僕情けなくないかい?」
「ううん。母性本能がくすぐられたっていうか、まぁそんな感じね」
「それは同情って言うんだぜ?」
「でも私が本格的に好きになったのは今年の春ね」
「強盗退治の時?」
「横の席に座れた時かな。桐原くんとはたぶん運命的なものがあるって感じたの。もちろん強盗の時にライクがラヴに変わったのは確かね」
「そっか、ヒーローになるってのはいいものだね」
「フフフ。あなたは私のヒーローよ」
僕は久しぶりに神の力を手に入れてよかったと本当に思った。