第9番階級執行者レミエル戦その2
021
「クソガキがよくもよくもよくも俺様の腕を・・・」
レミエル『天使』にもダメージはあったらしい。
本体の所に戻った両腕のうち、左腕は完全にプラーンと折れていた。
「お互い様だ!!僕は左腕を無くしたんだからな」
とレミエルに言ってやった。
これで奴の銃撃は半分で済む。
少し勝機が見えて来た。
「イメージしてみろ!!左腕が生えるイメージだ!!」
と立ち合い人であるルシフェロさんが言った。
「おい!!だまれルシフェル!!助言を与えるんじゃねぇ、てめぇから殺すぞ」
「おいおい、優斗くんは戦いの素人だよ?。レミエル!キミは執行者を何年やってきたと思っているんだ?少しくらいおしゃべりしてもいいじゃないか?」
「ちっサポートと同じじゃねのかよ」
とレミエルは黙った。
ルシフェロさんに言われた通りに僕はイメージをした。
左腕が元通りに再生するイメージだ。
当然イメージに集中させてくれるわけもなく。
レミエルはリボルバーをホルスターにしまったあと
『リロード』の合図ともに銃撃してきた。
ドパン!!ドパン!!
銃撃の最大数が12発から6発に変わっただけで、こうも違うとは。
レミエルの左腕を折って正解だった。
僕はその銃撃を躱して、再生のイメージをしながらレミエルに殴りかかった。
だが拳は空を切った。
が僕の左腕はあっという間に元通りになっていた。
我ながら恐ろしいほどの再生力である。
吹き飛んでいった元の左腕は再生と同時に消滅していた。
「ゴッドギプスで抑制されていた。ゴッドアームの本当の力だよ」
とルシフェロさんは教えてくれた。
「黙れルシフェル!!」
レミエルは少し焦っているようだった。
まだゴッドアームの本当の力を僕は使いこなせていなかったのか。
僕はルシフェロさんを睨んだ。
「おいおい睨むなよ説明を忘れていただけなのにさ」
とルシフェロさんはにやけながら言った。
僕はクラウチングスタートの体勢をとった。
そしてレミエルに向かってまっすぐ走った。
ドパン!!ドパン!!ドパン!!
3発の銃撃を僕の額めがけてレミエルは射撃してきた。
僕はその銃撃を右腕で弾き、レミエルに接近した。
もちろんレミエルはテレポートしたが、僕はその位置を予測して走った。
これもゴッドアームの力の一つらしい。『予測力』
「何!?」
異次元空間の中から現れたレミエルは目の前にいた、僕の姿に驚いていた。
ゴッドアームの真の力、予測力を使ってレミエルを追い詰めたのだ。
レミエルは咄嗟にリボルバーを構えたが、
それよりも早く僕はレミエルを、タックルで押し倒した。
マウントポジション、馬乗りの体勢だ。
「ま、待て!!」
とレミエルは焦りの言葉を吐いたが、僕は無視して、
レミエルを両腕で殴り始めた。
グチャ、グチャ、と肉が潰れる音がする。
レミエルの顔面は瞬く間に血に染まり変形していく。
動画で見たが、マウントポジションから逃げる方法はほぼ皆無である。
僕はレミエルを殴り続けた。執拗に怒りを込めて。
レミエルは最後のあがきか、
最後の1発が入っている、リボルバーを僕に向けて来たが、
動画で見たように逆に奪い取り、レミエルの額に向けて構えた。
「ギ、ギブアップだー!!!撃たないでくれぇ俺の負けだー」
僕は殴るのも撃つのも止めた。
「そこまで!!優斗くんの勝ちだ」
とルシフェロさんは言った。
決闘は終わった。
022
「適応能力がここまで高いなんてお前本当に人間か?」
大の字に倒れているレミエルは僕に聞いてきた。
「人間ですよ。命を懸けて闘ったただの人間です」
「け、お前の能力は確実に化け物だぜ」
とレミエルに言われ僕はこの決闘を振り返る。
頭を撃たれても痛みだけで済み。
腹を貫通されても死なず。
腕を吹き飛ばされても再生し。
僕は本当に化け物になってしまったのかもしれない・・・。
パチパチパチ。
拍手をしながらルシフェロさんがやってきた。
「いやーいい闘いっぷりだったよ優斗くん。レミエルを圧倒してしまうとは、やはり俺が目をつけた男だよ本当に」
「必死でしたからね。こんなに体も服もボロボロですし」
「でも肉体的疲労はないだろ?」
そういえばあれだけ動いて、あれだけ撃たれたはずなのに、
僕の体は疲労もなく痛みもなかった。
ルシフェロさんは倒れているレミエルに近づきこう言った。
「レミエル。最後に言い残す言葉はあるかな?」
「お前ら、他の執行者に殺されやがれ」
とレミエルの言葉を聞いたあとルシフェロさんはレミエルに手をかざした。
「殺すんですか!?」
「殺すんですか?キミも甘いね~。こいつはさっきまでキミを殺そうとしていた男だよそれを庇うっていうのかい?」
「それは・・・」
僕はそれ以上何も言えなかった。
「まぁ見てなよ」
とルシフェロさんの手は光り輝き、レミエルの体もそれに呼応するかのように光始めた。
10秒もかからなかっただろうか。
レミエルはルシフェロさんの手の中に光となって消えてしまった。
神銃・ケルベロスとホルスターを残して。
「レミエルを吸収したのさ、俺の体にね。前に言わなかったっけ?。俺は堕天した時に肉体を失ったんだよ、その分を他の執行者の体で補おうって話」
「・・・」
「ん?どうしたんだい?そんなにレミエルが消えたのがショックだったのかい?」
「・・・」
レミエルが残したものをルシフェロさんは拾い、アタッシュケースの中にしまった。
「さぁ帰ろうか」
「仲間だったんですよね?」
「ん?」
「容赦なく、元の仲間を消せますね。感傷はないんですか?」
「元だしね、あんまりそんな気持ちはないかな?」
「そうですか・・・」
僕は公園の入り口に向かった。今日は疲れた。
「優斗くん!!」
ルシフェロさんの声で僕は足を止めた。
「その血まみれでボロボロの服じゃ帰れないだろ?」
「あ」
確かに右腕の袖が無く、腹に穴が開き、血まみれ・砂まみれの服では職務質問確実だった。
「キミの服の時間だけ元に戻してあげるよ」
とルシフェロさんは僕の服を触り、腕時計のスイッチを押した。
すると僕の服はみるみるうちに決闘前の状態に戻った。
「さぁ帰ろうか」
「はい」
僕達は天子公園を後にした。
家に帰るまでというより寝る前まで会話は無かった。
家に戻り、鍵を開け、階段を上り、自分の部屋へ入る。
僕はベッドに倒れこんだ。
「今日はご苦労様。でも今日はもっと忙しいんじゃないかな?」
「今日?」
そういえばもう日付は変わっていたのだった。
「そうですね。今日もいそがしいや」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
僕は眠りについた。