エピローグ
白い部屋の片隅でひっそりと楕円形の箱が開いた。まるでパンドラの箱のようだった。中からは冷気が溢れ出たが、その世界に元からあったかのように、すぐに馴染んだ。
そして中には男が入っていた。60代位の男だった。その男は、まるで死んでいるかのようだったが、数分後に目覚めた。
すると、タイミングを見計らったかのように、地面から机が押し出された。いや、もう少し正確に言うと、飛び出たかもしれない。
そしてその机に、平然のように座った。するとまた、タイミングを見計らったように、機械の人形が入ってきた。機械と言われなくては、わからないほど、上手く出来ていた。
男は驚きながらも、人形が運んで来た食事をたいらげた。そして男は口を拭きながら、
「今は何年でどうなってる?」
と人形に強めに言った。すると、
「2150年1月1日 あなたが眠りについてから約70年後です。去年の犯罪率は0%そして、国の政策により弱い者は切り捨てられたため平均寿命は60歳にまで落ちました。」
男は眉をピクリとも動かさずに続けて言った、
「そうか潜入捜査はどうだ、どう使われている?」
今度は少し弱めに言った、
「用途は様々ですが主に知られていて使われているのは、記憶の復元、記憶でのやったことの確認、のみです。」
すると男の顔が初めて緩んだ。
「それでは、身分証明書、部屋の鍵、銀行の暗証番号などを置いておきます。どうぞご自由にお使い下さい。それとあなたの名前は、賀川 国枡です。くれぐれも間違えないようにして下さい。最後に役目を忘れるな、との事です。それでは、さようなら。」
そして男は立ち上がり去って行った