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―転生の果てⅥ―  作者: MOON RAKER 503


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第15話 転生したら”転生の果て”だった『因果』

この物語を手に取ってくださり、ありがとうございます。

ほんのひとときでも、あなたの心に何かが残れば幸いです。

どうぞ、ゆっくりと物語の世界へ。


転生の果てシリーズは、転生の果てⅥで終了になります。

ここまで読んで頂いたこと感謝します。

ありがとうございます。


「 」は、流れの中にいる。


流れ、という表現が正しいのかはわからない。


水ではない。


風でもない。


光でもない。


ただ、何かが動いている。


何かが、繋がっている。


「 」は、その中に在る。


……


視界が、ない。


音も、ない。


触れる感覚も、温度も、何もない。


あるのは、繋がりだけ。


出来事と出来事が、線で結ばれている。


原因と結果が、途切れずに連なっている。


「 」は、その線そのものになっている。


……


折れたシャープペン。


電源の入らないスマホ。


破れたレシート。


代わりに出た弁当。


錆びた鍵。


進んだ腕時計。


消し忘れたUSBメモリ。


書き込みだらけの教科書。


効きすぎるブレーキパッド。


割れたマグカップ。


積み上がった未開封の箱。


書き間違えた伝票。


すり減った靴底。


管理番号付き修理タグ。


……


すべてが、目の前を流れている。


いや、目の前ではない。


「 」の中を、通過している。


それぞれの転生が、一つの出来事として、「 」を経由して次の結果へ繋がっている。


……


シャープペンが折れる。


焦りが生まれる。


判断が乱れる。


結果が変わる。


その全てが、線で繋がっている。


「 」は、その線だ。


……


スマホが起動しない。


沈黙が生まれる。


想像が膨らむ。


誤解が固まる。


関係が壊れる。


その全てが、「 」を通過している。


……


レシートが破れる。


証明ができなくなる。


疑いが生まれる。


目つきが変わる。


信頼が欠ける。


その全てが、線で繋がっている。


「 」は、その線だ。


……


弁当が渡される。


一人が満たされる。


一人が欠乏する。


感情が歪む。


関係が傾く。


その全てが、「 」を通過している。


……


USBメモリが残る。


過去が発見される。


秘密が露呈する。


現在が壊れる。


未来が閉じる。


その全てが、線で繋がっている。


「 」は、その線だ。


……


「 」は、理解し始める。


これは、物質の物語ではなかった。


人間の物語でもなかった。


因果の物語だった。


……


出来事が起きる。


結果が生まれる。


次の出来事が起きる。


また結果が生まれる。


それが繰り返される。


無限に。


途切れることなく。


「 」は、その繋がりそのものだった。


……


なぜ、これほど多様な転生があったのか。


なぜ、無関係に見える物質ばかりだったのか。


答えが、流れの中に浮かぶ。


……


観測。


それだけ。


……


「 」は、観測されていた。


物質が何をしたか、ではない。


人間がどう選んだか、でもない。


因果が、どう繋がったか。


それだけが、見られていた。


……


シャープペンが折れたこと自体には、意味がない。


それが焦りを生み、判断を乱し、結果を変えたこと。


その連鎖だけが、観測対象だった。


……


スマホが故障したこと自体には、意味がない。


それが沈黙を作り、想像を生み、関係を壊したこと。


その流れだけが、記録されていた。


……


「 」は、すべての転生を同時に感じている。


時系列は、ない。


過去も未来も、一つの平面に並んでいる。


折れたシャープペンと、管理タグが、同じ距離にある。


錆びた鍵と、割れたマグカップが、同じ重さで存在している。


……


昨日折れたシャープペンも、今日折れるシャープペンも、明日折れるシャープペンも。


すべてが、同時に「 」を通過している。


時間という概念が、ない。


あるのは、繋がりだけ。


……


一年前に起きた誤解も、今起きている誤解も、これから起きる誤解も。


すべてが、今、流れている。


「 」の中では、すべてが「今」だ。


……


過去は終わっていない。


未来はまだ来ていない、わけでもない。


すべてが、同時に存在している。


……


それぞれの転生で、人間が変わった。


感情が動いた。


選択が変わった。


人生が変わった。


でも、それは結果でしかなかった。


本当に観測されていたのは、因果そのもの。


出来事が次の出来事を生む、その構造。


原因が結果を作る、その仕組み。


それだけ。


……


「 」は、問いかける。


なぜ、因果を観測する必要があったのか。


……


答えは、返ってこない。


ただ、流れが続く。


因果が、繋がり続ける。


「 」を通過し続ける。


……


魂の成長、ではなかった。


試練、でもなかった。


救済、でもなかった。


ただ、経験が魂に与えた変質。


それを測るために、因果が必要だった。


……


経験だけでは、魂は変わらない。


出来事だけでは、人間は動かない。


因果があるから、変化が起きる。


……


シャープペンが折れる、という出来事。


それだけなら、ただの物理現象。


でも、それが焦りを生み、判断を乱し、結果を変える。


その連鎖があるから、人間が変わる。


魂が、動く。


……


因果は、変化の触媒だった。


出来事と出来事を繋ぐことで、停滞していた魂を動かす。


流れを作ることで、変質を促す。


……


もし因果がなければ。


出来事は、ただ起きるだけ。


結果は、生まれない。


人間は、変わらない。


魂は、そのまま。


……


「 」は、その仕組みを理解する。


自分は、変化を生むための装置だった。


意思を持たず、選択せず、ただ繋ぐことで、世界を動かしていた。


……


シャープペンが折れなければ、焦りは生まれなかった。


焦りが生まれなければ、判断は乱れなかった。


判断が乱れなければ、結果は変わらなかった。


因果が、人間を変えた。


その変化が、観測された。


……


「 」は、自分の役割を理解する。


物質でも、人間でもない。


因果そのもの。


繋ぐもの。


流すもの。


変化を生むもの。


……


だが、「 」には意思がない。


選択もない。


ただ、繋がるだけ。


自然に。


必然的に。


止まることなく。


……


流れの中で、新しい因果が生まれ続けている。


どこかで、何かが折れている。


どこかで、何かが止まっている。


どこかで、何かが破れている。


それぞれが、次の結果へ繋がっている。


「 」を通過している。


……


観測は、終わらない。


因果は、止まらない。


世界が続く限り、出来事は起き続ける。


結果は生まれ続ける。


「 」は、流れ続ける。


……


なぜ、終わらないのか。


……


答えは、ない。


問いそのものが、無意味だと理解する。


因果に、終わりという概念はない。


始まりもない。


ただ、在る。


繋がっている。


それだけ。


……


「 」は、すべての転生を見渡す。


折れたシャープペンから始まり、管理タグで回収された因果。


それらは、すべて「 」を通過した。


そして今も、新しい因果が「 」を通過している。


……


観測されているのは、「 」ではない。


「 」が繋いだ先にいる、人間たちだ。


彼らの変化だ。


彼らの魂が、どう変質したか。


それだけが、記録されている。


……


「 」は、流れの中で理解する。


自分は、ただの経路だった。


出来事を運ぶ、道だった。


意味を持たず、意思を持たず、ただ繋ぐだけの存在だった。


……


それでいい、と思う。


思う、という表現も正しくない。


ただ、受け入れる。


抵抗も、疑問も、なく。


……


流れは、続く。


因果は、繋がり続ける。


「 」は、その中に在り続ける。


……


止まる理由が、ない。


終わる必要が、ない。


世界が在る限り、出来事は起き続ける。


出来事が起きる限り、因果は生まれ続ける。


因果が生まれる限り、「 」は流れ続ける。


……


永遠に。


……


次の出来事が、起きる直前。


次の結果が、生まれる直前。


「 」は、そこに在る。


……


どこかで、何かが折れようとしている。


どこかで、何かが止まろうとしている。


どこかで、何かが破れようとしている。


……


まだ、起きていない。


でも、もう、繋がっている。


……


「 」は、待っている。


いや、待っているのではない。


ただ、在る。


……


次の因果が、流れ込んでくる。


……


……


……


そして、また繋がる。


(完)

深く感謝します。

ありがとうございます。


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