第14.5話 転生失敗したら 仕分け用ベルトコンベアだった
この物語を手に取ってくださり、ありがとうございます。
ほんのひとときでも、あなたの心に何かが残れば幸いです。
どうぞ、ゆっくりと物語の世界へ。
転生の果てシリーズは、転生の果てⅥで終了になります。
ここまで読んで頂いたこと感謝します。
ありがとうございます。
低い音が、続いている。
機械音。
回転する何かの、途切れない振動。
「 」は、動き続けている。
止まらない。
止まれない。
ただ、流している。
……
何かが、載る。
一定の間隔で。
規則的に。
タグが外される音がする。
カチリ、と。
金属の留め具が開く音。
小さく、短く。
管理番号の記された紙片が、宙を舞う。
落ちていく。
ベルトには載らない。
……
載るのは、形を失ったものだけ。
因果。
それだけが、ベルトの上を流れていく。
重さも、色も、温度もない。
ただ、存在だけが載っている。
「 」は、それを運ぶ。
速度は一定。
傾きもない。
ただ、前へ。
……
空間に、境界はない。
壁も、天井も、床も。
灰色と、鈍い白が、溶け合っている。
光源は見えない。
影もない。
ただ、淡く、均一に、満ちている。
音は、低い機械音だけ。
ベルトが回る音だけ。
他には、何もない。
……
因果が、また載る。
カチリ。
タグが外れる。
紙片が落ちる。
ベルトが進む。
流れていく。
……
前方に、分岐がある。
三つ。
自然に、ベルトが分かれている。
左。
中央。
右。
どれも同じ幅。
同じ速度。
同じ高さ。
違いは、ない。
「 」は、因果を三方向へ分ける。
選んでいない。
判断していない。
ただ、構造に従って、分かれていくだけ。
……
因果が、左へ流れる。
次の因果が、中央へ。
また次が、右へ。
規則性は、ない。
ランダムでも、ない。
ただ、流れるままに。
……
行き先は、示されない。
左の先に、何があるのか。
中央の先に、何があるのか。
右の先に、何があるのか。
「 」は、知らない。
知る必要も、ない。
ただ、流すだけ。
……
因果が、消えていく。
分岐の先へ。
見えなくなっていく。
音も、振動も、残さない。
ただ、静かに、流れていく。
……
「 」は、理解する。
ここでは、誰も選ばれていない。
選別されていない。
評価されていない。
ただ、流れているだけ。
工程。
それだけ。
……
失敗ではない。
成功でもない。
物語になる前に、通過する場所。
ただ、それだけ。
……
低い機械音が、続いている。
ベルトは、回り続けている。
因果は、また載る。
タグが外れる。
流れていく。
分かれていく。
消えていく。
……
「 」は、動き続ける。
止まらない。
止まれない。
ただ、流している。
……
……
……
暗転。
(了)
物語は14.5話で分岐します。
「転生の果てⅥ」は次の15話で完結します。
ただし15話は3パターン準備しています。
順番などは特にないので好きなものから読んでください。




