第14話 転生したら 管理番号付き修理タグだった
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ほんのひとときでも、あなたの心に何かが残れば幸いです。
どうぞ、ゆっくりと物語の世界へ。
転生の果てシリーズは、転生の果てⅥで終了になります。
ここまで読んで頂いたこと感謝します。
ありがとうございます。
――回収センター、午前十時。
「 」は、物に付けられる。
白いタグ。
プラスチック製。
表面に、印字されている。
「#0483-7291-A」
管理番号。
裏面には――
QRコード。
バーコード。
分類記号。
「 」は、紐で結ばれる。
物の、一部に。
今日、回収された物。
折れたシャープペン。
電源が入らないスマホ。
破れたレシート。
空になった弁当箱。
錆びた鍵。
それぞれに、タグが付けられる。
全てに、番号が振られる。
分類される。
ベルトコンベアに、乗せられる。
動き出す。
次の工程へ。
運ばれていく。
「 」は、その全てを見ている。
物が、流れていく様子を。
システマティックに、処理されていく過程を。
最初の関門。
スキャナーが、待っている。
物が通過する。
「 」のバーコードが、読み取られる。
ピッ。
音が、鳴る。
画面に、情報が表示される。
```
ID: #0483-7291-A
種別: 文具
状態: 破損
原因: 芯折れ
影響: 試験結果変化
判定: 修復不可
処理: 廃棄
```
表示は、一瞬。
すぐに、次の物。
次々と、スキャンされる。
分類される。
右へ――修復可能。
左へ――廃棄対象。
機械的に。
淡々と。
「 」は、左へ流れる。
廃棄ライン。
そこには――
他の、廃棄対象が並んでいる。
電源が入らなかったスマホ。
破れたレシート。
割れたマグカップ。
全てに、タグが付いている。
全てに、番号が振られている。
次の工程。
大きなコンテナ。
物が、落とされる。
ガシャン。
音が、響く。
「 」も、落ちる。
付いていた物と、一緒に。
コンテナの中。
他の物と、混ざり合う。
タグだけが――
整然と、記録を保っている。
天井に、カメラ。
全てを、監視している。
記録している。
データベースに、送信している。
どの物が、いつ、どこで、どのように処理されたか。
全て、記録される。
偶然は、ない。
全ては、管理されている。
コンテナが、満杯になる。
運ばれる。
次の施設へ。
処理工場。
そこでは――
分解が、行われる。
物が、バラバラにされる。
素材ごとに、分けられる。
金属。
プラスチック。
紙。
ガラス。
それぞれ、リサイクルされる。
「 」は、その過程も見ている。
物が、原料に戻っていく様子を。
形を失い、素材になる過程を。
だが――
タグは、残る。
分解されても。
素材に戻されても。
記録は、消えない。
データベースに、保存される。
永遠に。
別の施設。
新しい物が、作られている。
リサイクルされた素材から。
新しいシャープペン。
新しいスマホ。
新しいレシート。
全て、作られる。
そして――
また、タグが付けられる。
新しい、管理番号。
「#0484-0001-A」
次の、サイクル。
出荷される。
使われる。
壊れる。
回収される。
また、タグが付けられる。
繰り返し。
「 」は、理解している。
全てが、偶然ではなかったことを。
因果は、管理されていたことを。
物質の運命は――
最初から、決まっていた。
どこで生まれ。
どう使われ。
どう壊れ。
どう処理されるか。
全て――
システムの中。
データベースの中。
管理されている。
別の部屋。
大きな、モニター。
無数の、データが流れている。
管理番号。
種別。
状態。
処理結果。
リアルタイムで、更新される。
誰が見ているのか――
分からない。
画面だけが、光っている。
データだけが、流れている。
音は、ない。
声も、ない。
ただ――
通知が、表示される。
```
処理完了: #0483-7291-A
次工程: 素材化
再利用: 予定あり
```
淡々と。
機械的に。
感情は、ない。
意味づけも、ない。
ただ――
次の工程へ。
「 」は、素材化される。
プラスチックが、溶かされる。
紐が、分解される。
印字が、消える。
だが――
データは、残る。
「#0483-7291-A」
その記録は、永遠に。
新しい物が、作られる。
リサイクルされた、プラスチック。
それは――
また、タグになる。
新しい、管理番号を持つ。
新しい、物に付けられる。
また、流れる。
ベルトコンベアに。
システムに。
運命に。
「 」は、理解する。
自分は、個ではなかった。
システムの、一部だった。
因果を記録する、装置だった。
物質たちは――
全て、処理対象。
生まれ、使われ、壊れ、戻る。
それが、役割。
それが、運命。
逃れることは、できない。
選ぶことも、できない。
ただ――
流れに、従う。
システムに、従う。
そして――
次へ。
モニターに、新しい通知。
```
本日の処理: 14,892件
修復: 3,201件
廃棄: 11,691件
効率: 98.7%
次回処理: 明日 10:00
```
数字だけが、示される。
意味は、ない。
評価も、ない。
ただ――
淡々と。
回収センターの、夜。
静まり返った、施設。
ベルトコンベアが、止まっている。
物は、ない。
全て、処理された。
明日、また。
新しい物が、来る。
新しいタグが、付けられる。
新しい番号が、振られる。
繰り返し。
永遠に。
「 」は――
もう、存在しない。
素材に、戻った。
だが――
記録は、残っている。
データベースの中に。
「#0483-7291-A」
その番号と、共に。
いつか――
また、同じような物が生まれる。
同じような因果が、起きる。
同じような結果が、出る。
それも――
管理される。
記録される。
処理される。
システムは――
止まらない。
感情を持たない。
意味を与えない。
ただ――
回収し。
分類し。
処理し。
記録する。
それだけ。
永遠に。
モニターの光が――
消える。
施設が、暗闇に包まれる。
だが――
システムは、動いている。
見えないところで。
データベースは、稼働している。
記録を、蓄積している。
明日も。
明後日も。
ずっと。
「 」が理解した、真実。
全ては――
管理されていた。
因果は――
偶然ではなかった。
神は――
喋らない。
システムとして、在る。
通知として、示す。
番号として、記録する。
それが――
この世界の、仕組み。
物質因果は――
全て、処理対象。
感情的救済は――
ない。
ただ――
次の工程へ。
淡々と。
静かに。
(了)




