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0.旦那様の裏の顔

 血に塗れた夫の姿を見た時、ヴィルエ・ニーベルジュは自らの死期を悟った。

 これまで夫であるアクシオ・ニーベルジュとの関係は希薄であった。婚姻を結んだものの、妻だからとヴィルエに触れることはなく、会話一つない日がほとんどである。夫婦とは名ばかりの、同じ屋敷に住むだけの者。

 そのアクシオが、ヴィルエの前にいる。その召し物に赤い血を滴らせて。


(まさか、旦那様が……)


 ただならぬ予感に、ヴィルエは息を呑む。

 夜の暗い部屋だが、割れた窓から外の明かりが差し込む。その明かりに照らされるのはこちらを睨み付けるアクシオだ。その眼光は鋭く、呼吸さえできなくなりそうな威圧感を纏っている。

 彼の足元には、先ほど彼の手から落としたばかりの仮面がある。顔の上半分を隠し、目元のみが切り抜かれた仮面には、紅の三日月と梟の模様が描かれている。

 紅の月と梟――それは、この国を影から操るとされている暗殺者『()(きよう)』の記号と言われている。主に貴族を狙う暗殺者であり、その正体は不明。ボディーガードをいくら雇ったとしても夜梟の腕には敵わないのだという。

 夜梟の仮面を落とした者。そして血まみれの服。

 その状況から、ヴィルエは速やかに判断した。


(旦那様が……暗殺者だ)


 婚姻してから今日まで、夫婦らしいことは何一つなかった。

 会話はもちろん、目を合わせることさえしなかった。

 『お前に興味はない』と宣言した通り、彼はヴィルエの行動を気にも留めなかった。

 そんな夫が、有名な暗殺者『夜梟』だ。


 アクシオが動く。彼が手にした刀は、ヴィルエに向いていた。

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