表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

宴の後で(2)(Side;菜緒)

 その後、セイさんが誘ってくれて、打ち上げに参加することになった。


 正直、私が行ってもよかったのかわからなくて不安もあった。けれど、不思議と居心地は悪くなかった。セイさんが上手に場を盛り上げてくれて、周りの皆さんも優しくて、気がつけば私もお酒の力を借りて笑顔になっていた。



「今日はすっごく楽しかったです~! 皆さん、それぞれ違う魅力があって—— 」


 酔ってくると、語尾が伸びてくる自分が少し恥ずかしかったけど、なんだかそんな自分も面白くて、ずっと笑っていられた。


 ぐっちさんの娘さん、みのりちゃんも可愛かったな。

 テーブルの向こうだったので詳しいことはわからなかったけど、小学生の女の子が「A連打よ!」ってプロの実況者にアドバイスしてるの、面白すぎる……。



 Renさんこと、齊藤さんとも話をした。ステージに立っていた時も思ったけど、とてもきれいな人だった。

 整った顔立ちと落ち着いた雰囲気、まるで雑誌の中の人みたい。今日のイベントでその一挙一動に黄色い歓声が上がっていたのも納得だ。


 彼から「日辻さんとの出会いは病院か」と聞かれて、答えながらも、ふと思い出していた。患者家族と医療従事者という関係になる前に、彼に守られたあの電車での出来事を。

 そんなに日数は経ってないはずなのに、なんだか、ずいぶんと前のことのように感じられた。


 日辻さんの方に視線を向けると、彼はテーブルの向こう側から、こちらを見ていた。

 その目はどこか寂しそうで、けれど優しくて。


 その表情に、なぜか胸の奥が痛くなった。



 結局、日辻さんとはほとんど言葉を交わせないまま、打ち上げは終わった。

 彼は「送りますよ」と言ってくれた。けれど、タクシー呼んでるんで、とやんわりと断ってしまった。どうしてだろう。嬉しかったはずなのに。


 “実は羊さんの大ファンでした”——そんなことを告げたら、あの電車での出来事も、水族館での再会も、一緒に動物園で過ごしたことも、今までの日々が、関係が、全て壊れてしまいそうな気がした。

 彼からただのファンの1人としてしか見られなくなるのが、すごく怖かった。


***


 翌日。仕事の昼休み中、齊藤さんから丁寧なメッセージと共に、打ち上げの集合写真が送られてきた。マメな人なんだなぁ、と笑みがこぼれる。


《集合写真、ありがとうございます。昨日は本当に楽しかったです》


 そうお礼の返事を送った後、もう一通届いた。


《GG4ファンの意見を聞きたいんだけど、時間を作ってもらっても、いいかな?》


 私の意見なんかでいいのかしら……?

 でも、昨日はとってもお世話になったし、感謝もある。私はシフトを確認して、来週、会う約束をした。

読んでいただき、ありがとうございました。

もしよろしければ、評価、感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ