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第十六話 取引に感謝を  ▼R15

無理矢理な描写が含まれます。苦手な方はブラウザバックしてください。







 マコトは上手く身体を動かせないが、慣れてくれば手を伸ばしたり、曲げることはできた。ただ、身体がとても重くて、持ち上がらない。どうして、何故という目でルネを見る。



「最初は効果が強すぎるかもしれませんが、すぐに慣れます。中毒性もありません。これはとても一般的なものなんです」



そんなわけあるか、と言いたかった。

ところが、ああうう、という喃語しか出てこない。おまけに涎も出そうになる。

ドラッグ? マコトは日本での記憶を総動員した。薄い紙のような、口に含むタイプを思い出す。クラブや店の裏口で簡単に取引されてしまう、簡単に落ちる蟻地獄のような薬。違法なセックスドラッグは、マコトの仕事の周囲ではよく聞いた話だった。



「本当ですよ、危険ではありません。これは成人の儀ですから」


だから、なんだよそれ。

マコトはルネを睨んでいる、つもりだ。表情を動かせているかはわからない。



「大公様が、直々に私を指名してくださったんです。その褒美も約束してくださいました」



 赤みがかった紫の瞳、それを縁取る金色の睫毛がランプの光の中に浮かび上がる。

ルネは手元のガラス瓶を取る。

中身はショッキングピンク、いや蛍光ピンクの液体に見えた。



「こういうことは専門家に任せようと、大公様が私を呼ばれたんです。ね、大公様がお決めになったことですから、神子様も、息を吸って、身体を和らげてください」


ルネが、マコトの身体を仰向けにする。抵抗できない。

何がどうなっているのかわからなかった。

ただ、急に身体の自由がなくなった。それがとても恐ろしい。

 リオネルが言った? 成人の儀? どういうことだ。



「ねえ神子様」


その呼び方はやめてほしかった。ルネは微笑んでいる。

とても華奢で、マコトより一回り細い彼が、マコトを支配しているようだ。懸命に脚をばたつかせると、多少動いた。シーツの音がする。


 ルネはもう一つ、蜜飴をつまんで、マコトの身体に乗り上げるように密着した。金の髪がマコトの頬や肩にかかる。

赤紫の瞳が、マコトの目の前に並んで怪しげに光った。そして口へ、マコトの口の中へ蜜飴を落とす。



「怖がらないで、大丈夫。私たちは成人すると皆こうやって、後ろをほぐす準備をするんですよ」


ルネの細長い手が、マコトの寝間着に手をかける。脱がそうとしているのがわかった。



「ああ!っううん」


なんとか声を出す。どうして、なんで脱がすんだ。待て、後ろをほぐすって言わなかったか。



「綺麗ですね、あなた」


唐突に、ルネが言った。頬に彼の手が触れている。彼の声は、頭の中を蛇が這っていくようだ。


「私より綺麗な男は初めて見ました」



 ルネが瓶を引き寄せて、中身を取り出す。

どろりとした液体が、マコトの胸に飛び散る。ルネはそのまま、腹の上に中身を全て出した。


「……今、とてもお綺麗です。身体はどうですか? 多少痺れも感じるかもしれませんが、毒ではありません。少し麻痺していた方が、痛みが少ないのです」



これが、成人の儀なのか。


マコトは下履きごと寝間着を脱がされて、ルネの思うままにされていた。少し暑い気がする。酒のように、頭に血が上っているのか。

わからない、でも待ってほしい。どういうことかわからないんだ、本当だ。


ルネはマコトの片足を大きく開いた。

マコトのうっすら筋肉のついた腹の上の、どろっとした液体の中に何か塊がある。それをルネは片手で取った。


「神子様、これが先ほどのイロアロエの樹液を吸った、オカサンゴという植物です。成人の儀では、これで後ろを慣らしていくんですよ。大丈夫です、私は慣れてますから」



何も大丈夫じゃない!

ルネが手に取っているのは、うねうねとした蛍光ピンクの細長い物体だ。それが、後ろを慣らすっていえば、おれの中に入るってことか?


「まえ、まええ、まっえ!」


待って、そう言いたかった。



「成人の儀を済ませなければ、つらいのは神子様ですよ? 伯爵に抱かれるのでしょう?」



小ぶりの唇は渇きもせず、魅惑的に見える。でも、今なんて言ったんだ。おれが、伯爵ってアスクード? アスクードに抱かれるって?



「褒美にね、私は大公様の臥所に呼んでもらえるんです。良かった。バートン子爵が妬かないようにするのも大変ですけど、そうじゃなければここまで来た意味がありませんから」


 ルネの唇の形が、やけに目についた。

そうしてオカサンゴとかいう蛍光ピンクの物体を、マコトの尻に近づけていく。


マコトの開かれた瞳から、涙が一筋流れた。








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