最強魔法少女は戦わない。
俺の親戚の女の子は、魔法少女だ。
でも、彼女はもう戦わない、
理由は簡単、彼女は……
数百年にわたる、魔法少女と魔族との戦いは、人知れず続いていた。
だけど、数年前に魔族側の四天王の内、最強と言われる者が戦死した事で、一先ずの落ち着きを見せた。
戦いは続いているが、魔族は以前のように一度に多数を地上に送れなくなり、世界は完全ではないものの、平和になった。
そして現在。
「ねぇ、お兄ちゃん。今日は土曜日なんだからデートしよ、デート」
「じゃぁ、そこらへん散歩でもするか」
「散歩じゃなくって、デートね、デート」
彼女、桜塚エリスは俺、篠宮 恵一の親戚だ。
現在高校一年生の十五歳。
フランス人ハーフの金髪碧眼の超美少女だ。
腰まで伸びる長髪はキラキラして、まるで美少女人形だ。
実際、モデルとかにスカウトされた事も一度や二度じゃない。
そして、アパートの同室住まいだったりする。
元々住んでいた所と学校が遠いため、一緒に住むことになったのだ。
それだけでも問題だが、困った事に現在俺が担任をしているクラスの生徒だったりする。
そう、俺は教師なのだ。
なのに、エリスは一緒に住んでいる事を隠す気すらないらしく、友人には普通に同棲していると言ったりするので、困っている。
そんな彼女には秘密がある。
実は、彼女は魔法少女なのだ。
それも、かつて四天王の一人を一対一で倒した歴代最強と言われる魔法少女。
倒したのは彼女が小学六年生の時で、中学生になってからはほとんど変身していない。
で、なんで俺がそれを知っているのかと言うと、当時俺も一緒に戦っていたのだ。
とはいっても、文字通り戦っていたわけではない。
俺は魔導士という役割だ。
魔法少女と魔導士、この二つは性別以外にも違いがある。
女性である魔法少女は、魔法を使って戦う事が出来る。
テレビとかでよく見る、魔法少女と同じだ。
でも、問題が一つある。
それは、魔法少女である女性は全員魔力が弱いのだ。
魔力が弱いと、強い魔法を使えないし、長い時間戦えない。
つまり、戦えるが戦闘力が低いのだ。
一方で、男性である魔導士。
魔導士である男性は、全員魔力が強い。
だが、問題として魔導士は戦う事が出来ない。
魔導士は魔力を使う事が出来ないのだ。
つまり、戦えないが戦闘力は高い。
戦えるけど力がない魔法少女と、力があるけど戦えない魔導士。
だから、二人は魔法の契約で結ばれる。
魔法少女は戦い、魔導士は電池のように補佐をする。
二人で協力し合って戦うのだ。
離れると駄目なので、魔導士も魔法少女の傍で戦う。
と言うより応援に近いが。
ちなみに、魔導士は魔法少女が選ぶ。
一緒に戦う関係なので、魔法少女が信頼できる男性が選ばれる。
で、エリスが選んだ男性が僕だったりする。
エリスは僕にとって大切な人だ。
恋愛感情は分からないが、小さい時から一緒に遊んだり勉強したりしている、大切な人だ。
だから、魔導士になった事は今でも後悔していない。
ちなみに、俺の魔導士としての能力は並みよりちょっと上レベル。
で、俺達は協力して四天王の一人を倒し、戦いは落ち着いた。
魔族はエリスを恐れているので、襲って来る事は無くなったのだ。
そうして俺達は平穏を手に入れた。
そして月日が流れ、現在。
「お兄ちゃん。いい天気だね。絶好のデート日和だね♡」
「そうだね」
エリスは俺の手に抱き着いている。
彼女は超絶美少女なので、周囲の男の視線が痛い。
そうして二人で公園を歩いていると……
「「!!」」
世界が制止した。
魔空間が広まったのだ。
この魔空間は、魔族が現れた証。
この空間内では人間は動かないし、傷つかない。
さらに、建物が戦闘で壊れても魔空間が閉じれば元通りという便利空間なのだ。
で、この空間では魔法少女と魔導士は動けるので、魔族が俺達を発見するのには都合がいいのだ。
もちろん、俺達にとっても正体がばれないし人や建物を気にしなくていいから都合がいい。
ちなみに、この魔空間は魔族だけじゃなく魔法少女も展開させる事が出来る。
「見つけたぞ!光の魔法少女!」
そう言って俺達の前に現れたのは、翼の生えた魔族。
「貴様を倒し、俺の名を売る!そう、俺の名は」
「変身!」
エリスはそう言って変身すると、パチンッと指を鳴らした
「ギャァァァー!!!」
魔族は悲鳴を上げて消滅した。
「相変わらず早いなー」
魔族登場→エリス変身→エリスの攻撃→魔族消滅
ここまで約一秒。
魔族弱すぎと言いたいのだが、エリスが強すぎるのだ。
実際現役時代でも、まともに戦ったのは四天王との戦いだけ。
「私とお兄ちゃんのデートは、何人たりとも邪魔させない」
エリスはそう呟いた。
そう、彼女は俺との日々を邪魔されたくないから魔法少女を始めたのだ。
だから、エリスは四天王を倒した後、魔族がびびって俺達を襲わなくなったので、戦うのを止めてしまったのだ。
……実際今でも時々他の魔法少女から戦わないのかと聞かれるらしいのだが、断っているらしい。
俺達の日々はこんな感じで続いている。
一応長編にしようと思っていたのですが、
上手く続けられないと思ったので、短編で終わりにしました。
何の盛り上がりもないため、没にしようかとも思ったのですが、
せっかくだしと思いアップしました。