かき氷
7月、祇園祭。
駅前通りに提灯が灯り、山車のお囃子が響く。
かき氷の屋台に、兵児帯の子どもたちが並んでいる。まっくろに日焼けした子、頬のあかい子、額に前髪がはりつき、どの子もきらきらした瞳だ。
「どれにしましょ」
屋台のおじいさんが尋ねると、
「……いちご」
その子は、ちょっと迷うそぶりを見せてから、頬をゆるませてこたえた。
「はいよ、いちごね」
かき氷機は、大きくぶこつで、上部に直方体の氷をがっちり挟んでいる。氷の表面が、でこぼこにあせをかいて、なめらかにひかっていた。
おじいさんが、かき氷機の横のハンドルを回すと、シャリジャリと薄い氷のかたまりがふってくる。おじいさんは、白いカップでそれを受けとめる。その場で円を描くようにカップを傾けると、きれいな氷の山ができた。
屋台の台の上には、シロップの大きな瓶が並んでいた。
とぷん。おじいさんが、瓶の口に掛けてあったひしゃくを手に取り、まっしろいかき氷にシロップをかける。
「おまちどおさま」
透明なまま、ほんのりあかく、しっかり染まった、いちごのかき氷だ。
「ありがとう!」
その子は、小さな歯を見せて、大きく笑った。